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天風の剣

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右目が金色、左目が黒色という不思議な瞳を持つ青年キアランは、自身の出生の秘密と進むべき道を知るために旅に出た。幼かった自分と一緒に預けられたという「天風の剣」のみを携えて――。 …
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2024年5月の記事一覧

【創作長編小説】天風の剣 第123話

【創作長編小説】天風の剣 第123話

第九章 海の王
― 第123話 雷鳴と、涙と ―

 ギャアアアア……!

 四天王パールの絶叫が、響き渡る。
 パールの姿が、一瞬にして巨大な半身蛇の姿に変化した。まるで見上げる壁のように高く長く続く尾が、轟音と共に大地を打ち、土埃を上げる。

「あっぶね!」

 ライネが愛馬グローリーの手綱を引き、とっさに左方向に跳ね避ける。判断がわずかでも遅ければ、パールの尾の下敷きになるところだった。ダン

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【創作長編小説】天風の剣 第124話

【創作長編小説】天風の剣 第124話

第九章 海の王
― 第124話 携行食 ―

「花紺青っ!」

 鈍い音がした。
 パールの尾が、花紺青の操る板を直撃し、そこから続けざまに花紺青の後頭部にも激突していたようだった。
 板もろとも花紺青、キアランは落下する。

 花紺青――!

 垣間見えた花紺青の表情は、うつろで――、意識を失っているようだった。

 うっ!

 強い風と共に、なにかが迫る。それは鱗に覆われた、パールの尾。

 

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【創作長編小説】天風の剣 第125話

【創作長編小説】天風の剣 第125話

第九章 海の王
― 第125話 悲しみの向こうの光 ―

 吹き荒れた嵐が嘘のように、晴れ間が広がっていく。

 花紺青は――。

 パールの尾に弾かれ、意識を失ったまま落下してしまった花紺青。キアランは、彼が無事かどうか、一刻も早く知りたいと切に願った。カナフとシルガーに尋ねようと急いでキアランが口を開いた、まさにそのとき――。

「キアラン、無事でよかったー! 心配したよー」

 大きく手を振

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【創作長編小説】天風の剣 第126話

【創作長編小説】天風の剣 第126話

第九章 海の王
― 第126話 人形 ―

 魔導師オリヴィアや、アマリア、魔法を操る者たちは、圧倒されるようなエネルギーの爆発を感じていた。
 
 きっと、また高次の存在が……!

 激しい風雨に全身を打たれつつ、アマリアは愕然とした。
 またしても、四天王パールが高次の存在をその身に取り込み、変容が起きたのだと悟る。

 あ……! 緑の光が……?

 アマリアは、それと同時に、自分に起きた変化

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