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天風の剣

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右目が金色、左目が黒色という不思議な瞳を持つ青年キアランは、自身の出生の秘密と進むべき道を知るために旅に出た。幼かった自分と一緒に預けられたという「天風の剣」のみを携えて――。 …
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2024年3月の記事一覧

【創作長編小説】天風の剣 第114話

【創作長編小説】天風の剣 第114話

第九章 海の王
― 第114話 王都は、もう ―

 夜空は、黒い雲に覆われていた。
 暗闇の中、いくつもの金の光が飛び続けている。
 金の光に照らされ、ほの白く浮かぶ、白い肌。その下部に続く、白銀に輝く鱗。長い尾を城全体に張り巡らすように巻き付け、城壁を抱きしめるようにしてそれは眠っていた。
 体の線に沿って流れるような長い髪が妖しい美しさを放つ――、四天王パールだった。
 そして、パールの周り

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【創作長編小説】天風の剣 第115話

【創作長編小説】天風の剣 第115話

第九章 海の王
― 第115話 ぼろぼろの翼 ―

 まさか――。

 朝もやに包まれた森の中、キアランたちは時を見失う。
 シルガーは、呆然とする皆に構わず言葉を続ける。

「王都は壊滅状態だ。それより――」

 壊滅状態……! と、いうことは――!

 キアランは思わず、シルガーの言葉を遮るようにして尋ねていた。

「白の塔は……! 白の塔は、どうなって……!」

 シルガーは、首を左右に振っ

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【創作長編小説】天風の剣 第116話

【創作長編小説】天風の剣 第116話

第九章 海の王
― 第116話 守護軍 ―

「ルーイ! ソフィアさん! ニイロ! フレヤさん! ユリアナさん! テオドル……!」 

 キアランの皆を呼ぶ叫び声は、激しい吹雪にかき消される。
 そこにあったはずの守護軍の陣営は、すでになかった。この場所に張られていたはずの結界も、ない。
 闘いの痕跡は雪に隠されたのか、かすかに爪痕がうかがい知れるのみ。オニキスの攻撃を受け、四聖と守護軍は、ノース

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【創作長編小説】天風の剣 第117話

【創作長編小説】天風の剣 第117話

第九章 海の王
― 第117話 様々な立場 ―

「皆、無事で本当によかった――!」

 四聖の皆やソフィアとテオドルの変わらぬ笑顔に触れ、キアランは深い喜びに声を震わせた。

「キアランも花紺青も、無事で本当に嬉しいよ……!」

 ルーイも皆も、涙ぐむ。
 守護軍の陣営の中でも、皆がいるこの場所は洞窟になっていた。入り口は、人一人通るのがやっとで狭かったが、中は広い。
 洞窟内は、魔法の光で明る

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