【創作長編小説】謎姫、世界を救うっ! 第19話
第19話 あじさい
記憶を辿る。もう何度も何度も、繰り返してきた。
追い求めれば追い求めるほど、「真実」の周りをもやが覆い、遠のいていく――、そう九郎は感じていた。
あの日の前日――。
九郎の心は、ふたたび「あの日の前日」に戻っていた。
あの日とは、飛蟲姫の復活の日。
そして、「あの日の前日」とは、静月と最後に会話を交わした日。
「静月――」
伊崎賢哉の家の庭、楓の木を瞳に映しながら、九郎は友の名を呟いていた。
「出発は、三日後ではなかったのか?」