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今、注目を集める 新しい旅のカタチ アドベンチャートラベル【後編】

前編では、2023年9月11日~14日に北海道で開催された
「アドベンチャートラベル・ワールドサミット北海道・日本ATWS2023)」を機に、日本でこれから盛り上がっていくであろうアドベンチャートラベルとはどんなものなのか、その定義や地域にとってのメリットをご紹介しました。

アドベンチャートラベルで重要なのは
歴史や文化などのコンテンツで
「一貫したテーマ」を持って「その地域の『ストーリー』」を作ること
でした。

後編では
アドベンチャートラベルの課題や事例をご紹介します。

ついに、
大事な「地域のストーリー」を作るのに、最も重要な存在が登場します・・・

と同時に、
高い壁にもブチ当たります。

アドベンチャートラベルに取り組んできた日本の先人たちねぇ
アバラ折れてますよ…。



アドベンチャートラベルの課題 の前に・・・

とても大切な「アドベンチャートラベルの課題」の前に・・・
妄想:軽く考えても、できはしない のコーナーです。

あなたの地域に
アドベンチャートラベルはもうあるかもしれません・・・(罠)

■~妄想~
「アクティビティ・自然・文化体験の3要素のうち、
 2つ以上で構成される旅行」
って言われちゃうと
アクティビティって横文字があるから難しく感じるんであって、
「体を使った体験」って日本語に訳したら、もうなんでも当てはまりそう。
で、自然、文化体験の2つなら、日本の野山・田舎に行きゃあるよって話。
3つの要素、はいクリア。
あとは
「ユニークな体験・自己変革・健康・挑戦・ローインパクト
 の5つの体験価値」でしょ。それなら・・・

『信州で そば打ち体験 一人3000円』
いいよねー。
私も今度、家族で行きますよ。
子供こういうの好きなんです。そばも好きだし。

じゃ、それに
畑を歩いて、そばの実を収穫して、
挽いて、打って、食べて、泊まって、話して、・・・
って蕎麦とそれにかかわる地域の方々のストーリーを加えれば
価格にゼロ2つ増やせるのでは?ってことじゃない。
30万円の商品。はい、ATできた。

・・・

な~んて軽口たたいて妄想しましたが・・・
それではアドベンチャートラベルができた とはいえません。
それどころか、まったくできていないと言っていいでしょう。

アドベンチャートラベルの定義に当てはめればいいってもんじゃない。
このあとの課題をすべてクリアしないと
真のアドベンチャートラベルにはたどり着けないのです。

本当に難しいのは次です。
ここからの壁、高いですよ。  リング上ね、40℃超えてますね。

アドベンチャートラベルの課題(本番)

わが町のアドベンチャートラベルっぽいのを見つけて
それを発信しただけで、世界から人が集まってくるわけではありません。
もっと重要な、やらなければならないことがあるのです。

▶そもそも知られていない
日本ではアドベンチャートラベル自体の認知度が低く、
作成したツアーもターゲットが絞られるため、あまり広まっていません。
情報発信を続け、文化として根付かせる必要があります。

海外では、以前はツアーの数が少なく、日本にアドベンチャートラベルがあることを旅行者から認識されにくい状況でした。
ですが、今回のATWS2023でその状況は一変するかもしれません。

▶エリアを越えたツアー
例えば、東北地方とか長野県とか、
それぞれでアドベンチャートラベルの取り組みを進めているとします。
でも海外からの旅行者は山形県~新潟県~長野県~富山県と地域を
またがるツアーを希望しているかもしれません。

特に日本は欧米に比べて国土が狭いなかにも、
多様な自然環境・文化があることが、
世界の中の「アドベンチャートラベルの旅行先」の中で
優位に立てるポイントとなっています。
外国の旅行者から日本を選んでもらえる一つの強みとして、
いわゆる広域連携のような公共の取り組みの必要もでてきます。

旅行者のニーズをつかみつつ、
利害関係の異なる地域で協力し合いツアーを作成・運営
していかなければなりません。

▶中長期的な視野
複数の地域が複数年で同じビジョンで取り組み続けられるか。
舵をとる人はずっと同じ人がやってくれるのかどうかわかりません。
予算もずっとあるわけではないし。
補助なしで事業として続けていけるようにならないといけません。

そして・・・
アドベンチャートラベルに取り組むうえで最も大事なことは、
体制の構築もそうなんですが・・・

人材の育成です。

▶『ガイド』の育成 スキルの向上
アドベンチャーツーリズムを提供するための
ガイドの教育や訓練が不足していることがあります。
適切な安全対策や技術を習得するための講習や資格の整備が重要です。
※現地ガイドさんが英語しゃべれない問題がありますが、
 それについては下記のやまとごころ.jpさんの記事をお読みください。
 https://yamatogokoro.jp/report/47732/ 
 本当はガイドさんが自分で英語でしゃべって伝えた方がいいのですが、
 ガイドさんと通訳さんの2人で対応することも、現状では考えて
 いいのではないでしょうか。
(といった内容が含まれたお話が、
 後編の『人材不足は「質」を「量」でカバー』する考えもある
 というところにあるのですが、
 そこだけ切り取って理解すべきではないお話なので、
 前編から読むことをおすすめいたします。)

▶『コーディネーター』の不足 【ここが最も重要な課題です!】
海外の旅行会社からの依頼を受けて、
地域のガイドを束ねてツアーを運営する人材が不足しています。

コーディネーターは旅行者と地域をつなぐ役割を担うだけではなく、
地域の魅力・コンテンツを把握し、
一貫したテーマの中で
旅行者にあったストーリーを作成することもできなければなりません。

コーディネーターを担える事業者を選定するなど、
中長期的な育成プランを策定して人材確保を進めることが
必要になってきます。

※アドベンチャートラベルにおけるコーディネーターの存在については
 あまりにも大きすぎるため、別でまとめるかまたは放り投げます。

ざっと言うと
・地域に精通して
・ガイドとも仲がよくて
・エリア内の観光事業者と連携できて
・ツアーを組めて
・旅行者に沿ったストーリーを作り上げられて
・海外エージェントから
 「この人のところに頼んだら間違いないな」
 と思わせる信頼を勝ち取っている・・・
で、もちろん英語しゃべれるのがコーディネーター。

だってこんな人、なかなかいないでしょ。

国内ではまだまだ少ない
アドベンチャートラベルの事例

 ひがし北海道 極寒体験ツアー8 ⽇間
手つかずの自然が残る獄間の地で、遊びのプロガイドとともに、流氷の海に⾶び込んだり、森でスノーシューをしたり、川をカヌーで下ったりします。運が良ければ、タンチョウヅルやオオワシなど、⾮常に珍しい野⽣動物に出会えるかも。

 夏の八幡平 地産地消ランチサイクリングツアー
八幡平の自然の中でサイクリングを通して、自然の恵みと洗練された農業技術を学び、食を味わう。まずは地元の食材を使ったアイスを食べてから、ジオファームへ向かって、馬との暮らしやマッシュルーム作りについて学びます。最後にファビオで八幡平の豊かな自然の恵みをふんだんに使用した地産地消のランチをいただく。サイクリングルートで八幡平の豊かな自然と食・資源の調和とストーリーを感じられる1dayプラン。

 熊本県南小国町 Satoyama Journey
 〜E-Bikeで行く!里山体験プライベートツアー〜

日本最大の活火山である阿蘇で大自然の景観を楽しみながら里山の文化と人々の暮らしを体験できるソフトアドベンチャーツアー。マウンテンバイクのギア調整をして標高900mの瀬の本をスタート。日本一の大草原や阿蘇五岳など美しい景観を楽しみながら、時折見える断層・地層を通して阿蘇カルデラの成り立ちを学びます。途中、里山農家で農業体験(野菜の収穫をして田舎料理をみんなで作ります)やランチをしながら異文化交流を3時間ほど楽しみます。

いずれも、
アクティビティ・自然・文化体験の「3つの要素(のうち2つ以上)」と、
ユニークな体験・自己変革・健康・挑戦・ローインパクトの
「5つの体験価値」が含まれていますね。
一貫したテーマがあり、それを支えるガイドの存在も大きいです。

まとめ:アドベンチャートラベルやってみよう

「アドベンチャートラベル・ワールドサミット
 北海道・日本(ATWS2023)」をきっかけに
世界の目が日本市場に向けられます。
自然資源だけでなく、
アドベンチャートラベルを取り巻く環境を
いち早く整えた北海道が、
日本の中でも先を行く状況です。

地域のみなさまは、秘めた資源を持っているに違いありません。
まだまだ各地で手が付けられていないアドベンチャートラベル。

難しいからこそ、かもしれませんが、だからこそ
この機会に地域活性化の手段の一つとして
「アドベンチャートラベル」を検討してみるのもありですよ。
世界に魅力を発信するチャンスです。


 ■余談
個々のコンテンツを作るよりも
「一貫したテーマでストーリーを作る」こと、
そのストーリーを作るのに最も重要な
「コーディネーターの存在」が大事で難しい
というお話をした後でなんなんですが、
地域のコンテンツって何だろう?何がうけるんだろう?とお悩みの方。
ちょっとでもヒントになればと
ぼーっと読んで、または飛ばしていただければと思うことを
以下に書きます。

◆プライベートビーチ
私は割と都会生まれ都会育ちなので、旅行先にビル群は選びません。
同じように、私の義母は天草(下浦)生まれで海は散々みてきたから、
今行きたい旅行先に海が多いところは選びません。
わたしが今年の夏休みに家族で天草に行ったとき、義母におすすめの海水浴場をきいたところ、「あんまりきれいじゃないからほかのとこにしなよ」と言っていたビーチは控えめに言って最高でした。

夏休み8月2日「えびすビーチ」は私たち含め2組

外から見ると、また違うのかもしれません。
ないことが魅力に感じる。大きな街がない から 星がきれい とか。
逆のことが魅力に感じる。近所の見慣れた海 は 最高の貸切ビーチに
とか。

地元の人にとっては何でもないことでも、
よそから(特に海外から)来た人にとっては
宝物のような体験になるんです。

まかない飯っていいですよね。お店の人はたいしたもんじゃないと思っているかもしれないですが、飾らない感じがいいんですよね。旅のそんな感じ。
まかない旅 まかない体験 がしたいなあ。

天草で親戚が居酒屋やっているんです
メニューにはないですが、そのとき獲れたどんぶりいっぱいのワタリガニのみそ汁
そんなに文章とは関係がありません ただの自慢

◆これがあったらチャンスかも
・その場所を気に入って、住み始めた外国人がいる
・自分では当たり前だと思っている田舎のことを、友だちがうらやましがる
・地元の何でもないところがインスタグラムに上がっている
その人に聞いてみたらどうでしょう?
わたしたちの地元ってなにがいいの?と。

来て欲しい人と来る人のギャップを埋める。
それはコーディネーターさんだけのお仕事ではないと思います。

■いらないけど、余談のまとめ
「アドベンチャーなんちゃら」なんつー難しい言葉はわからねぇ、っていう
その地の文化を伝えられる年配(に限りません)の方は
たくさんいらっしゃるはず。
地域を盛り上げようとしている若い世代(に限りません)の方、出番です。
地元に眠る資源をそのままにするのはもったいない。
記事を読んでいただいて、
少しでもアドベンチャートラベルに可能性を感じたならアクション!

そして、ひとつの地域だけではとてもできることではないです。
たくさんの事業者が手に手を取り合って進めていかなければなりません。
まずは人と人がつながることではないでしょうか。


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