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NDA(秘密保持契約)の勘所 for スタートアップ、小規模事業①

こんにちは。
本記事で#6となります。本記事もどうぞよろしくお願いします。

さて、早速。
今回はNDA(秘密保持契約)についてです。
いよいよ起業して、外部と具体的に話をする段階までくると、契約事が最初の仕事となるケースがよくあります。VCと具体来な話(事業計画などの開示など)を進めるにあたっても、最初がNDA締結になります。
しかも、「契約」。聞いただけで、これまで触れてこなかった方は不安に覚えたりするかもしれません。そんな方もきっと多いはず。
そんな時に、創業間もなく資源も豊かでないときに、あせって「絶対ここから顧問弁護士が要る!」といって、いきなり高い出費をしないようにしましょう。

顧問弁護士はいずれかは必要ですが、
・NDAであれば、勘所をおさえれば、十分に自社内でコントロール可
・どうしても必要であっても、チェックレベルであれば低費用で済む
と思います。

というわけで、スタートアップ側からの視点の勘所をnoteにまとめていくので、是非参考にしてください。そして、あなたの会社や事業にとって、強靭なNDAひな形や契約対応ができるように、微力ながらサポートできればと考えております。
私は法務のプロではないのですが、前職の大企業時代にスタートアップといくつものNDA取り交わしや共同開発契約の取り交わし、そして、現職のスタートアップでは大企業といくつものNDAや共同開発契約等を取り交わしていますので、多少なり、実経験を通じての目線でサポートができればと。
なお、まとめようと頭の中で整理はじめたのですが、勘所を数点に絞っても量がなかなかになりそうですし、私も本職の隙間時間にnoteを書いていますので、何編になるかわかりませんがシリーズ化しますw今回がその①です。

仮定をおきます


具体的に仮定を作った方が説明しやすいので、以下に仮定となる条件や前置きを箇条書きします。(仮定は今ふっとまわりを見渡して決めましたw)
スタートアップA社と大企業B社と契約。
・スタートアップA社は、木材に技術開発したスペシャルな表面処理加工を施すことで、低コストで、表面質感も色も自由で、環境にやさしく、木材を長期に保護できる、スペシャルな木工製品を扱うスタートアップとします。
・大企業Bは大手建築メーカーとして、ハウジング事業にスタートアップA社の技術を使って、魅力的な家具もセットにした家を売る新規事業を検討しているとします。
・大企業B社はスタートアップA社に、共同開発ないしは、入口のPoCをできないかと持ち掛けている状況とします。しかし、具体的な協議に進むためには、スタートアップA社はある程度の技術情報を出さないといけませんし、大企業Bも自社が考えている事業戦略について情報を出さないといけません。そこで、NDAを締結する運びとなった状況とします。
・スタートアップA社は、スペシャルな木材表面処理加工について、知財権を持っているものとします。

全体構成

勿論ビジネスや状況によって内容や順番は変わりますが、仮定条件に従い、以下の構成とします。
補足ですが、最初のNDA案(ひな形、フォーマット的)は、大企業から受領してもよいですし、スタートアップ側から準備してもどちらでも構いません。大企業からの提案としても、勘所をおさえて(文章体裁は先方にならいつつも)、追記や修正案を返せばよいだけです。

・前文
・第1条:本件業務(目的)範囲
・第2条:秘密情報の定義、開示方法
・第3条:秘密保持
・第4条:秘密保持の管理(リバースエンジニアリング禁止を含む)
・第5条:秘密情報の返還
・第6条:秘密情報の権利(、成果物の扱い)
・第7条:損害賠償
・第8条:有効期間
・第9条:裁判管轄
・第10条:協議事項
・署名

とまあ、企業性格や場合によって、他にも追加されたりしますが、勘所としておさえておくべくとすると、この構成でよいと思います。

全体感としておさえるべきこと

第1条からの具体的な説明に入るまえに、先ずもって全体感として、NDAを締結するにあたって、何を(技術を持つスタートアップ側で)守るべきか、おさえるべきかを下記します。
一、契約条項としてのバランスがおかしくないかをみること
二、スタートアップ側としてのビジネス展開としてメリット・デメリット(リスクとリターン)のバランスを考えて、守るべきところを守ること。
三、最後は契約にサインする管轄で契約内容は合意できるため、相手方契約者や担当者の紳士性、真摯性が重要。しかし、担当者がいかに良い人であっても知財・法務の人間は非情だと承知するべき。

一、については、大企業やVCから初期案を受けるときに、たまに(まあまあの頻度で?)で、明らかに両社にとってバランスの悪い、つまり大企業やVCの方が有利な書き方になっていることがあります。「大企業やVCサイドでは目的外でもスタートアップ側の許諾えることなく関係会社に情報開示できる」、という、目(と人)を疑いたくなるような初期案もあったりします。

二、については、この説明をするうえで大変重要ですよね。スタートアップは、そもそも最初の資本、資源、ブランドが薄いので、大企業の力を使って飛躍したいですし、仮に近未来進めるプロジェクトがうまくいなくても市場への宣伝材料や、サンプルをつくるチャンスの到来です。一方で、大企業サイドには(現在は本当にオープンイノベーションとして線を引くケースが多くなってきましたが)、スタートアップA社の技術を契約上うまく取り込んでしまう気持ちがあるものだ、というつもりで万事のぞみましょう。スタートアップA社にとって、競争優位の源泉となるコア技術を守らなければなりません。つまり、ビジネスですので、両社が互いにうまくやってやろう、という前提に立っていることを忘れてはいけません。

三、については、要は契約を進めるにあたり、新規事業開発の担当者などと進めるわけですが、その方はいかにこちらの事情をくみとり、合理的な考えをもった方だとしても、大企業の知財・法務の人間は、同じ会社の人間か?といいたくなるほどドライな人だと承知しておきましょう。

前文、第1条:本件業務(目的)範囲

前文例:
「株式会社大企業B(以下「甲」という)と株式会社スタートアップA(以下「乙」という)は、第1条に定める本件業務を遂行するにあたり、当事者間で開示する情報の取扱いに関し、以下のとおり契約を締結する。」

第1条例:
「本契約は、甲と乙とがハウジング市場における両社の共同による新規ビジネスに向けた協力関係を構築するための互いの協議を実施する(以下「本件業務」という)に際し、当事者間で開示される情報について、その秘密保持に関する取扱いを定めることを目的とする。」

最初に申し上げます。あくまで個人の意見ですが、私はこの第1条が一番大事だと考えます。この業務=目的範囲を明確にすることが最大重要であり、フレキシ性が高く、第2条以降は、実は数通りのパターンで選択するぐらいだからです。

業務=目的とはつまり、秘密保持契約において、秘密情報は定義された目的の範囲でのみ使用等が 認められる、ということです。
スタートアップA社としては、大企業Bによる想定外の利用 を防ぐために、開示情報の利用用途(=「本目的」)を限定的に定める必要が あります。
一方で、大企業Bからすれば、秘密情報の利用の制約を少なくするために、この目的を広く定める傾向
にあります。また、大企業はNDA締結の社内手続きも煩雑で、一度のNDAで包括的にいろいろな話もできて、長い期間で使える便利なNDAにしよう、という考えも多々あります。というか、それが標準的だと最早考えておきましょう。

私の経験ですと、相手方担当者の信頼性を推し量れないときや、技術情報の開示を極力ひかえたいときや、確実に情報を出すレベルをステップアップ管理したいときなどは、「協力関係の構築是非を判断するための事前検討協議」といったように、さらに目的範囲を絞ります。実は、上記例に出した書き方ですと、「協力関係を構築するための互いの協議を実施する」ですと、PoC後の本格的な契約ごとに関するフェーズも入ってきてしまいそうですよね。
契約書は、本当に契約書として文面でみられる(裁かれる)ので、文面的に、こうとも捉えられるなと読めてしまうなら、相手がなんと言おうと、協議のための協議、という格好悪い文でも、確実に認識間違いしない文面にすることが重要です。

あとは、先ほど書きましたように、大企業サイドとしては、できるだけ包括的にしたいわけです。ですので、協議のためのNDAではなく、試作や評価やマーケティング(PoC)も実施することも対象にするような書き方を提案してきたりします。
どうしても、ここまで包括するとなってくると、試作をするのでサンプルの取り扱いや、評価するので結果も出てきますし、マーケティングまですると成果も出てきます(評価だけでも成果は出ます)。となってくると、かなり広範囲におさえるべきところが出てきます。一つ言っておくと、契約書は文面でしたよね、そして、大企業は法務・知財が専門部署として存在しており、めちゃくちゃ強いです。広範囲になればなるほど不利だと覚えておきましょう。
ですので、だからこそ、この業務=目的範囲を、スタートアップA社の視点からして、必要であり許容できる範囲で、設定すべきことが重要です。

なお、捕捉ですが、スタートアップサイドとしても、大企業と何か話を進めている、ということは、例えば投資を受ける際にVCに対して良いネタになりますよね。ですので、具体的な中身は開示できなくても、大企業Bとこういう話を進めているんだ、という協議の存在を示すほどの開示ができるようにしておく、ということも場合によって重要かと思います。

さてさて、①としてはこのあたりにしておきます。
続編で続きを説明していくことになりますが、上記参照しながら、また続編も参照しながら、「応用」をして、みなさんにとってのリスクとリターンのバランスをとって、契約書設計してもらえれば、と思います。

本日は以上。
次の投稿でまたお会いしましょう。
今回も最後まで読んでくださりありがとうございました。



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