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甘くて苦い、オーストラリアでの恋愛に終止符を打った話

季節の変わり目。新しい年度。新しい季節。そんなタイミングに、私はお別れをした。自分の想いと過去に。

オーストラリアで出逢い、お付き合いをし、別れ、しばらくして、お互いに気持ちがあることを知り、関係をどうしていこうかという話をして数ヶ月経つ人がいた。信じられないくらいピュアで、まっすぐで、冗談が面白くて、でも、不器用でシャイな人。私がオーストラリアに残ると決めたときや、やりたいことを見つけたときに傍で応援してくれて、よくトレーニングや練習に付き合ってくれていた。

そんな彼とは、話し合いの末、別れることにした。彼の殺伐的な忙しさが落ち着く目途が立たないことと、私がワーキングホリデーという期限付きでいたこともあって、全く会えない、コミュニケーションが取れないことに不安と寂しさを感じ、「もうダメかもしれない」というところまできたときに、私から別れを切り出した。

その時の私は、彼のスケジュールに左右されすぎていて、自分を全く大切にできていなかった。久しぶりに会った日が別れの日になり、お互いの心の内を話した。話して分かったのは、離れている間も私を想ってくれていたこと、私の幸せを願い、手放すと決めたことだった。本当の優しさというのは、目に見えないことを知った。彼の目の前でたくさん涙を流して、その場を離れた。

それから間もなく、私は今の街へ引っ越して、これまでとは違う日常を送ることになった。彼とお別れしたことで「そういえば、海の見える温かい街で暮らしたいと思ってオーストラリアを選んだのに、住んでないじゃん!」と気づき、沖縄の島のような小さな街へ引っ越すことにした。

新生活を始めても、彼とは話し合い、納得し、お別れをしたので、気持ちがすぐに離れたわけではなかった。引っ越して以降も、ずっと彼の存在を感じていたし、お互いの近況や元気にしているかのやり取りを定期的にしていた。こんな感じだよ~と海の写真を送ることが密かな楽しみだった。

そのまま時が流れたある日、友達の家にお泊りをして、夜な夜なみんなで話し込んでいたときに、彼への気持ちや関係を話すと、「ななかはずっとタイミングを待っているけど、そんなタイミングは待ってても来ないんだよ」と喝を入れられた。「う~」と心に刺さって、みんなの前で泣いた。確かに待ってても何も始まらないし、何も動かないし、うん。その通りだな、と。これは伝えなきゃだめだ、と思ってそのままメッセージで気持ちを伝えることにした。

すると、翌日彼から返事が来て、「自分も大切に想っていて、前のような関係になれたら」と思っているとこのことだった。

友達に「ねえねえ、返事が来たよ!」と、嬉しそうに伝えたのを今でも覚えている。タイミングは待っててもこないんだ、というのをしみじみと感じた。でも、お互いに直接会わずして解決することに不安があったし、私も彼とお付き合いするなら、住まいを移さなければならないので、その前にちゃんとお互いの気持ちを確かめたくて、シドニーで会うことにした。

ドキドキしながら一年ぶり以上のシドニーを訪れ、会うまでプチ一人旅を楽しんでいた。そして、彼と会って話したのだが、実際には期待とは裏腹に苦さが伴う時間だった。私はワクワクした気持ちで、新生活や環境について話したけど、彼は私との空白の期間を頭で理解しようとしていて、心のずれを感じてた。私だけじゃなくて、彼も。

そのずれがあまりに大きくて、「ななかはこれまでの話を聞いて、これからどうしたい?」と言われたとき、「別々の道を歩もうか」という言葉がここまで出ていた。そのくらい、付き合うにはギャップが大きいことを感じていた。ただ、この一瞬で決めるには今の彼をあまりに知らなさすぎると思い、「もう少しお互いを知る時間がほしい」と答えた。

シドニーを離れ、数日経って改めて彼と電話で話をしようと思っていたタイミングで、彼の状況が一変し、仕事や身の回りでトラブルが起きて、とても二人の関係を考えられる余裕がなくなった。そのまま数ヶ月、連絡がまともにとれなくなり、彼の状況も心情も分からず、ただ信じて待つことしかできなかった。

思いきって、仕事終わりに電話するように伝えて、声を聞いたときには、今は自分のことをケアできる余裕すらないことが分かった。身体にも不調が出ていたし、よりを戻す、戻さないどころではないと。そのときに「関係はどうでもいいから、力になれるのなら」と、彼のところに行く意志があることを伝えたけれど、そこから返事がない。

そうこうしている間に、visaの有効期限が迫っていて、次どうするかを考えなければならなくなった。オーストラリアに留まるなら、visaをどうするのか。それとも日本に帰るのか、他の国へ行くのか。

私にとって彼は大切な人だから、ずっと想っていたし、傍にいることを望んでいたけれど、最近になって瞑想をしながら「自分、頑張ったなあ」という言葉と涙が出てきて、「ああ、ここで終わりにしよう」と思った。会えるか分からないいつかのために、自分の人生の選択肢を狭めることも、関係について、これ以上考えることも。

でも、彼を責めたい気持ちはない。彼は彼の人生のなかで必死に生きて、試練を乗り越えようとしているだけだから、そんな中で私と出逢ってくれて、ここまで過ごせた時間にありがとうという気持ちと、とにかく元気でどこかで笑っていてくれたら、という願いしかない。

重なった想いも、どんなに強く結ばれていると思った関係も、こうして別離やすれ違いをすることがある。どんなに大切に想っていても、どんなに近い距離にいても、相手を変えたり、コントロールすることはできない。でも、起きたことすべてが必然的で意味があって、学びを与えてくれるし、その学びが心を深く豊かにしてくれるものだということを知った。

本当に縁がある人とはまた結ばれるし、そうじゃなかったとしても「出会ってくれてありがとう」という言葉を置いて、次のチャプターへ進みたい。そう思えなくて、抵抗したくなるときもあるけど。抵抗を感じたときは、その度に心の奥にある感情に気づいて、感じて、受け止めて、愛を注いでいく。

甘くて苦い恋愛だったけれど、そのおかげで自分の弱さや本当に望んでる幸せを見つめることができてよかった。彼にたくさんのありがとう。次、会って話が出来たら、ゆっくりとコーヒーでも飲みに行こうね。

nanaka



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