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蕎麦焼酎を飲むと思い出すグレアム・グリーンの『第三の男』

夕食の片付けをしている時だった。蕎麦焼酎があるのを思い出した。長野県に住む友人が贈ってきたのだ。
私は湯を沸かし、蕎麦を茹でた。蕎麦焼酎は蕎麦湯で割って飲むのが一番だからだ。
問題は蕎麦の始末である。夕食は済ませたばかりで、お腹はいっぱい。蕎麦焼酎は飲みたいが、蕎麦は食べられない。しかし、蕎麦はできてしまった。さあ、どうするか。

グレアム・グリーンの小説『第三の男』の誕生譚は、この蕎麦焼酎の話に似ている。
映画プロデューサーのアレクサンダー・コルダがグレアム・グリーンに頼んだのは映画の脚本だった。
「ウィーンを舞台にした映画を撮る。監督は、あんたの友達のキャロル・リードだ。脚本はあんたにお願いしたい」

ところが、グリーンはウィーンを舞台にした小説を書き始めた。
「まず、物語を書いてからでないと、脚本は書けない」と言って。
こうして小説『第三の男』は生まれた。

映画『第三の男』は映画史上に残る名作と言われている。それに比べて、この映画の原作である小説『第三の男』の影が薄いのは、この小説が脚本のたたき台として書かれたもので、小説として、どこか中途半端なところがあるからだろう。

しかし、この小説を読むと、映画『第三の男』に対する理解はより深まる。映画では描き切れていないことが、この小説には描かれているからだ。

蕎麦湯の美味しさの秘密は、やはり、蕎麦を食べてみないとわからないのである。

詳しくは「名作映画の原作を読んでみた」をどうぞ。

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