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不登校問題×インクルーシブ教育


はじめに:障害児教育×インクルーシブ教育

近年、文部科学省は「インクルーシブ教育」を推進している。
当記事では、「インクルーシブ教育」と「不登校問題」との関係についての私の考えを述べるのだが、読者は『インクルーシブ教育』や『インクルージョン』の言葉を聞くと、何をイメージするだろう。
多くの人は、「通常学級で障害のない児童生徒が障害のある児童生徒が共に生活や学習を行う教育」と答えるだろう。
しかし、英語のInclusiveやInclusionは「障害」を含む意味を持つ語ではない。単に「包括的」「包括」という意味である。教育においては「共生」と訳すことが多いように感じる。
それでは、「誰をインクルードする(含む)べきのか?」という問いに対して、「障害のある児童生徒」と答えるのは正しいのだろうか。
障害のある人と障害のない人とが関わる機会は非常に重要であると筆者は考えており、当然ながら障害のある児童生徒を視野に入れたインクルージョンを否定するつもりはない。
しかし、「インクルーシブ教育=障害のある児童生徒を包括する」と考える人に、「障害のある人だけがインクルードされていないのか?」ということを問いたい。

インクルードされていない人

文部科学省によると、令和4年度の小中学校の不登校件数が約29万9千件となり、過去最多であるという。
また、文部科学省による不登校児童生徒の実態調査は、不登校の児童生徒が学校に生きづらいと感じた理由を明らかにした。
その理由は大きく以下の2つに分けることができるだろう。
・学校に関係する理由
・学校に関係しない理由
後者も何らかの心理的などの問題があり学校に行けなくなったケースであると推察しながら、学校と保護者が適切な支援機関と相談・協力してその児童生徒が学校に行けるように環境を整えてあげる必要性があると考えているが、当記事では前者の理由に注目することにしたい。
学校に関係する理由で学校に行けないケースについては、学校や学級がその児童生徒をインクルードできていないと考えられる。
それを根拠として、「入学、進級、転校して学校や学級に合わなかった」と答えた児童生徒が文部科学省による実態調査の回答者のうち10.0%いる。
他には、「勉強が分からない」27.6%、「なぜ学校に行かなくてはならないのかが理解できず、行かなくてもいいと思った」14.6%、「学校のきまりなどの問題」7.8%などがある。
いずれの理由でも学校が関係する理由なのであれば、学校によって解決することができないのだろうか。

みんなをインクルード

全ての人に合う環境を作るのは難しいかもしれない。それなら、学校内で心理的な安全を確保しながら学べる他の環境を学校が用意することはできないのだろうか。教室に居られれば最も良いが、そうでなくてもせめて学校の中には入れるような環境があればいいと思う。
例えば勉強が分からない児童生徒には別に指導する機会を設けるなど、それぞれの児童生徒にあった支援策を柔軟に考えるべきである。
「学校や学級に合わなかった」と答える児童生徒には、何故合わなかったのかを具体的に明らかにする必要がある。
近年、不登校児の支援を行う公的な教育支援センターや民間のフリースクールなどは増えているとよく耳にするが、本来は「学校に行きたくない」に対して、学校に対する拒否感を軽減しストレスがなく登校できるようになるための支援を行うべきである。厳しい指導ではなく、適切な支援を。
例えば、”学校教育法施行規則第140 条”で通級指導教室を利用できるのは障害を持つ児童生徒に限定されているが、それを障害の有無に関わらずに必要性のある児童生徒すべてが利用できるようにしたり、不登校児に対して個別に支援を行う教室を作ったりして支援を行うこともできるだろう。

おわりに:真のインクルージョン

昨今、解決が求められている不登校の問題の理由は不登校の児童生徒本人たちにあるものでも、その問題を解決する責任は教員や保護者などの周囲の人にあるのだと考えている。
不登校問題の解消には、一人一人の個性を受容できる学校の体制の構築が求められ、日本の学校の制度からはみ出す児童生徒がはみ出したままであるこの現状を変える必要がある。
教育の現状は、漢字練習帳の枠からはみ出した漢字のようだ。はみ出した部分もはみ出していない部分も含め、とても不恰好である。怒ってそのはみ出した部分を消したら、枠の中に収まっている漢字はもっと不恰好になる。どうしてもその枠に入らないのであれば、大きい枠のノートに変えてあげよう。さっきより綺麗な字を書くことができる。学校を大きな枠の漢字練習帳にしたい。
たまには教室から離れて休める環境も必要かもしれないけれど、学校が辛くて逃げ出したくなる場所ではないように…
”障害のある児童生徒のためのインクルーシブ教育”の促進と同時に、学校に行けない”不登校の児童生徒のためのインクルーシブ教育”を推進していきたい。
誰がインクルードされるべきなのかを考える前に、誰がインクルードされていないかについて考えたい。
すべての児童生徒が学校や学級でインクルードされる権利を持つのだから、すべての児童生徒が通える公教育であるべきだ。

参照

(文部科学省「令和4年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果及びこれを踏まえた緊急対策について(通知)」https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1422178_00004.htm )
(文部科学省「令和2年度不登校児童生徒の実態調査 結果の概要」https://www.mext.go.jp/content/20211006-mxt_jidou02-000018318-2.pdf )


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