『キル・チーム』

アレクサンダー・スカルスガルドと辛うじて主演のナット・ウルフ以外はスタッフ・キャスト共に無名で、惹きが弱い『キル・チーム』。が、見てみると、いわゆる戦場で起きたヤバいことを軸にし、見終わった後ズシリとくるクライム・サスペンスだった。

 

 

前半は2006年に公開されたジェイク・ギレンホール主演映画『ジャー・ヘッド』のような戦闘がほとんどない退屈な兵士たちの日常を映して若干地味だが、途中からクライム・サスペンスの要素が入り面白くなる。この点では2008年に公開されたトミー・リー・ジョーンズ主演映画『告発のとき』や2012年に公開されたケン・ローチ監督作品『ルート・アイリッシュ』のような戦場におけるクライム・サスペンスだが、『キル・チーム』は当事者の目線で展開するので、2008年に公開されたブライアン・デ・パルマ監督作品『リダクテッド 真実の価値』が前半の部分も含めて一番近い。

 

地味とは書きはしたが、この前半は中盤以降起こるヤバいことの雰囲気・下地となることなので、後から考えると脚本としては良くできている。「上官の指示は絶対」という上官と部下の厳しい関係や、アンドリュー以外の兵士が隠れて大麻を吸う素行不良な隊内の雰囲気などリアリティがある。加えて、ディークス軍曹の厳しさを見せながらも休日には部下たちにステーキを振る舞ったり、自室に部下を呼んで一緒にゲームをやったり、部下たちの大麻吸引を見つけても見逃したり、絶妙なアメとムチを見せる。

 

 

主人公ナットの揺れ動く気持ちもいい感じで描かれているので、終わってみれば、近いタイプの『リダクテッド 真実の価値』よりもアクセントがあり、良質のクライム・サスペンスで、スタッフ・キャストがほとんど無名なこともあって掘り出し物を見た気分になる。後味がズシリとくるクライム・サスペンスが好きならオススメである。

 

 

評価:★★★★

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