見出し画像

紙メディアとウェブメディアの違いとは何か

何年か前からウェブメディアの仕事をすることが増えて、なんでウェブメディアってみんなこんなにクソつまらないんだろうって考えていた時期があった。

始めるときは高い志を持っていたはずのメディアでも、いつの間にかSEO対策とかで、「関東でファミリーにおすすめのキャンプ場10」とか、「犬が下痢をしたときの原因、対処法は?」とか、いやそれ誰が言ってんの?とか、そういうページ他にもいっぱいあるよね?みたいな記事ばかりになっていく。

私が関わった仕事でも、そういうことは何度もあった。

読まれなきゃ始まらないのはわかる。そのために検索上位にくるようにしなきゃっていうのもわかる。

でも、検索エンジンで上位にくるページの条件って日々変わってるらしいし、必要に駆られて検索してみたページって、よっぽど面白かったとか特徴がないと、それが何のウェブメディアだったかなんて覚えてない。

紙メディアとウェブメディアって、媒体が違うだけでやってることは同じはずなのに、何がそんなに違うんだろうと。

で、ここ数日、話題のclubhouseっていう音声SNSを試してたら、「メディアの皆さん、最近どう?」みたいなテーマのルームがあったから入って聞いてみた。

私が聞いたときそこで話していたメディアの人っていうのは、ジャーナリストとか記者とか編集者とかいうのじゃなくて。ウェブメディアを運営している会社の人で(20〜30代前半ぐらいの女性)、他企業のオウンドメディアもバンバン作って、SEO対策もやって、PVを延ばして稼いでいる、という話だった(ちなみに、私にはわからないカタカナやアルファベットの言葉がいっぱい出てきて、その人が一文しゃべるごとに検索するレベル)。

「ただ、もともとの志はウェブメディア界のナショジオを目指してたので、企業のオウンドメディアばっかり作っていても面白くないとは思ってて、そこは何かやらなきゃと思ってるんですけどね〜」とのこと(うろ覚え)。

それを聞いてて、ああ〜なるほどなと、妙に納得した。

紙媒体を作ってる人って、多かれ少なかれ、自分が作ってる雑誌なり書籍なり(新聞はわからないけど)、そういうものを“作品”と思っているところがある。もちろん自己満足だけで売れなかったらダメだけど、「売れないかもしれないけどやりたい」とか「社会のために必要だと思う」とかいうこともある。

バタバタ作って出来上がったものを見て「あーつまんないページ作っちゃったな」って反省したり、後から見返したら「意外と面白いじゃん」って思ったり、「よかったですよ」って感想もらって自分ではもうちょっとがんばれたと思ってたけど読者にちゃんと届いたんだって嬉しかったり。

でもね、ウェブメディアって作品っていう意識のある人はほんと少ないと思うんだよね。だって形に残らないし、すぐ直せるし、誰も隅々まで真剣に見ないし、読み返さないし、「手元に置いておきたい」とかないし。そして、いつの間にかなくなってるし。だから、けっきょくどれだけ稼げるかというところに行きついてしまう。

紙媒体出身の人がウェブメディアに原稿を書くと、文章の隅々まで詰めすぎてて、読む人は息苦しく感じると思う(私の原稿とかそう)。

でも、自分の文章は作品でありたいのだよ。こういうふうに書き殴るのもいいけど、私はもっと密度の濃い文章を書きたいし、読みたい。

そういうのは時代遅れなんかな。どうかな。今までスピードアップしすぎたから、もっとスローダウンしようっていう波がくることがあるのかな。わからないけど、私は自分が満足する表現を大事にしたいと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?