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「学問は社会に対して責任を負わねばならないか」リベラルアーツ読書会

こんにちは。
日本リベラルアーツ協会では「続・大人になるためのリベラルアーツ」に準拠した
読書会の第10回を11月18日(木)に実施しました。
今回のテーマは「学問は社会に対して責任を負わねばならないか」です。
本に基づき3つの論点について対話しました。話題提供のスライドはこちらです💁‍♀️

1問目
フォージのいう「標準的見解」と「広い見方」にたいしてどう思いますか。※

※「標準的見解」とは、結果に対して研究者が責任を負うのは,研究者がその結果を意図していた場合に限る、
「広い見方」とは、研究者がその結果を意図していなくても、十分予見されるに足る証拠がある場合には責任が生じる、とする研究者に対する責任についての考え方。

 ・広い見方で責任を問うのは不可能である。
  →現在普通に学校教育で行われている理科や社会の授業が後にどう用いられるか、何十年、何世代かの変化まで追えない。
  →そもそもどんな研究者も初等・中等教育を受けて研究者になるのであり、
そう考えると学校教育は全国民が後に悪用しないという前提がないと、「広い見方」で責任を負うことは不可能である。
 ・技術にゼロリスクは困難である。
 →よって、「広い見方」に関しては免責しないと誰も研究しない
 ・交通事故とは違い、「広い見方」では直ちに結果が見えない。
 →加害者と被害者が追えない 証明もできないので「広い見方」での責任の負いようがない。
 ・予算をどこが出すか、によっては「広い見方」で責任を負うこともあるのでは
 ・研究するからには、何か問題が起きたときに関わった責任、説明責任はある。
 →一定程度ないと無責任になる。
 ・そもそもいずれの場合も「責任」をどう負うのか。刑事責任か、民事責任か、ただ謝罪するのか。
 →刑事・民事はごく限られた範囲で規定され、法に基づき行われる。
それ以外は、そもそも、「責任」の語が”responsibility”の訳であり”response “=返答(レスポンス)を語源とする。
つまり、納得いくまで説明する「説明責任」である。

2問目
最先端科学の科学者の社会的責任にたいし、人文社会科学にはなにができると思いますか。あるいは人文学の語源”humanity”は、これまでの科学者の社会的責任論にたいし、
どのような新しい地平を開きうると考えますか。

・技術をつくるのが「自然科学」、社会の変化が起きた際に、どのような技術が必要か、
判断材料を提供するのが「人文科学」
 ・ドイツでは心理学がその名の通り理学、日本では人文科学に分類される事が多い。
 →そもそも日本におけるいわゆる「文系」は「人文科学」と「社会科学」の両方を含み、
いわゆる「リベラルアーツ」の「アーツ」の部分が無くなる。
 →相当恣意的な訳なのでは。
 ・精神科学において実証的かどうか、が重視される。そしてドイツではこれは「医学」の中に入る。
 →一方で目の前の人間の感覚など実証的でないケーススタディもあり、これは「人文科学」である。
 →定量的に判断できない部分、定性的な部分は主観を排除するのが難しく、一方で人間社会に新たな地平を開く。
 →精神医学のケースでは精神科医と臨床心理士・公認心理士(派閥はあるが)の違いでは。

3問目
RRI※の発想と日本の責任論の発想の違いにたいしてどう思いますか。


※「責任ある研究・イノベーション」(Responsible Research & Innovation: RRI)
→持続可能性、社会的望ましさ、熟議的、十分に予見する、自己反省する、第三者評価や社会からの評価を求めるなどその中身は多くの議論がある。

 ・そもそも責任とは、罪とは異なる。
 ・システムが責任を負う、という考え方もできる。
複雑な技術や社会制度ほど個人には限界がある。時間的にも、結果が出た際に当時のリーダーが存命とは限らない。
 →例えば教育課程(ゆとり教育、脱ゆとり教育など)の責任は誰が負うのか。当時の役人か、それとも当時の政治家を選んだ国民か。
 →そこで、会社などシステムとしての責任、特に国家というシステムが出てくる。
 ・ドイツの事例
 →ナチス時代、東ドイツ時代に関し、「罪はないが責任はある」とし、
「納得するまで説明し、ドイツ国民はできる限り知るべき」という意識がある。
→実践的に前へ進む方法。

最後に(アンケートより)

 ・責任、罪、システム。科学などの用語的定義が日英独でなかなか違い、翻訳時に誤謬が生まれるのではないか、これが議論をときにややこしくしかねないと感じた。
 ・マクロな人文学を知ることができて良かったです。
 ・責任をその語源の”responsibility”に求める発言がありとても興味深かった。教育、工学、心理学といった観点からの幅広いお話が聞け、参加してよかった。
 ・学問をこれから修めようとする自分にとって考えるべき話題について、一人だとすぐに詰まってしまうけれどさまざまな方の意見を聞きながら考えられて良かったし、これからもふとした時に考えるようにしたい。
 ・(興味深かった点)様々な時代や国籍の価値観を知れたこと。
 ・(今後考えたいこと)学際的研究の方法論についてのお話が印象的だったので調べてみます。

今回のダイジェストになります(^^)


今回の「責任」の話は、日常生活のコミュニケーションでも役立つような話題となり、しかしなかなか気づけない深い視点や、日本にはない前へ進む方法をご教示頂け、大変暖かい場となりました。

 今回も、工学、法学、教育学、コミュニケーション、キリスト教や、ドイツで研究をされている方など
多様な専門を持つ方々にお集まり頂き、各々の専門や経験、立場を基に活発な対話が出来ました。
今回ご参加下さった皆様、ありがとうございます!!


次回は11/25(木曜)21:00(日本時間)よりオンライン(zoom)で「自由と公共性は両立するか」
というテーマで開催します!
 多くの人にご参加いただけること、楽しみにしています!

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