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「民主主義は投票によって実現できるか」リベラルアーツ読書会

こんにちは。
日本リベラルアーツ協会では「続・大人になるためのリベラルアーツ」に準拠した読書会の第6回を10月21日(木)に実施しました。


今回のテーマは「民主主義は投票によって実現できるか」です。
運営から前提知識をお伝えした上で、本に準拠し4つの問いについて、対話しました。話題提供はこちらです。


1問目 自分のこれまでの経験を振り返って、あなたは「多数決」がつねに正しい(あるいはもっとも適切な)答えを出してきたと思いますか?
もしそうでないと思われるケースがある場合は、なぜそのような結果になったのだと思いますか?


・皆で決めたという正統性を持たせるための儀礼的行事になっいてるのでは。
・機械的で当事者意識がない。
・身近な例では学級、町内会。
・専門家が決めた方が最適解かもしれない。

少なくとも「多数決」は「常には正しくない」という意見は全員同じでした。


2問目
2016年から 2017年にかけて世界で起こったさまざまな投票や選挙の結果について、
あなたはどのように思いますか。


・「自分ごと」として「当事者意識を持って」考えた結果ではあるだろう。
・「分断」であった。
→単なる人気取りになっていたが、なぜ選ばれたかを考えると根深い問題。
→中間層が薄くなり、エリート層以外の人が、疎外感を持っている。
→よって期待している政策がバラバラになってきた。
・資源分配の問題であったと思う。
→重要なものの重要性が、他者と比較できない複雑な社会になった。
→そのため、色々な物差しが必要な時代であるが、現実的な解として多数決をしているに過ぎない。
→そして、多くの人が望むからと言って最適解でない。
・「バラマキ政策」は「分配」「分断」解決への模索だろうか。
→福祉の「包括主義」*1
・誰しも自分の立場から抜け出せていない、全体を考えなければならないが、
自分の利益でしか判断できていない。
→色々な軸で、目先でなく長い時間軸で判断する必要がある。しかし、複雑な社会で
様々な目線で物事を判断するのは難しい
・一方でリーダーとて生身の人間で他人への視点を意識すると、自分自身を大切にできなくなり、
他人も大切に出来なくなるジレンマ。押し付けにもなる。
→利己主義と利他主義。
・このような議論をしていること自体、批判されうる時代になったと思う。
→店員に「環境に配慮した商品か」と聞くことが、「金銭的余裕のアピール」と捉えられることも。
→分断の中でコミュニケーションが足らない。


と、2016-17年に起こった選挙結果の変化について、代表制民主主義には限界が
露呈しやすい時代になったという認識を持っている人が多く、どうしたら良いか、活発な対話となりました。


3問目「少数派の正義」は存在すると思いますか。
もし存在するとした場合は、どのようにすればこれを実現できると思いますか。

・「多数派」も「少数派」も、正義とは限らない。
→また、同時にどちらも正義とも言える。
→正当な、合理的な理由があるか、という所に集約するのでは。
例:夫婦別姓…なんとなくなのでは、苗字を正確に説明してる人がいない。
→本質を捉えられていない。
・最終的に正義は歴史が証明する。
→決まってすぐには分からないから、本質的にならないのでは。
・そもそも正義とは何なのか。
・機会の平等をどうやって実現するか、という話に集約するのでは。
→アファーマティブアクション
・法律や制度などでなく、行政担当者への意見が重要な場合も。
→対応で変わる改善する場合が実例であり、制度運用の問題が大きい。
→要は配慮が重要
・一方、多数決において真の少数派は何ら影響を与えない。各時代の「正義だったもの」とも言える。


4問目 「民主主義」と「ポピュリズム」*2 の関係をどう考えますか、論点1-3 の議論を踏まえて論じてみてください.

・書籍『選挙制を疑う』*3 は新たな視点。
→選挙とは、世襲貴族の世界に貴族以外のエリートが参入する際に産み出された。
つまり、誰を貴族にするかという世界を前提とし、現代には合わない。
→ エリート支配が、今の選挙制に温存されているのでは。
→政治家を抽選制にしよう。
→裁判員やアメリカの陪審員制度は回っていて、突飛ではない。
・抽選の方が当事者意識が持てそう。
・半分専門家、半分抽選とか、もっと柔軟性を持った代表制民主主義が良い。
・ポピュリズムは、政治の超専門家である、政治家自身の利益実現の手段と
なり得てしまう。検察官だけの裁判のような。

後半の2問でも、現状の代表制民主主義の限界点と、どうしたら良いかを熱く対話できました。


おわりに

アンケートにて感想を頂きました。

 ・民主主義がますます分からなくなりました。
 ・民主主義について学びを深めることができました。

また、興味深かった点、考えた点として、

 ・分断の結果としてのポピュリズム、それに対する方策。
 ・「多数派とは、諸々の少数派の正義の共通する部分を取り出したもの。」
 ・選挙制は貴族制の変形だったという歴史的背景、正義はあくまで個人の事情を通すための大義名分だという点。
 ・少数の正義は成り立つか?
 ・正義とは何か

考えれば考えるほど単純はなくなり、難しい「民主主義」の問題。
どのような未来が待っているのでしょうか?

今回も、政治学を専門とする方のほかに、哲学、工学、教育学、社会学など多様な専門を持つ方々にお集まり頂き、各々の専門や経験、立場を基に活発な対話が出来ました。
今回参加して下さった皆様、ありがとうございます!!

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 次回は10/28(木曜)21:00(日本時間)よりオンライン(zoom)で「速く走れる人間を作っても良いか
というテーマで開催します!
多くの人にご参加いただけること、楽しみにしています!

文中脚注
*1 「包括主義」(福祉)…「普遍主義」とも。福祉サービスを受ける際、資産や所得等を要件とせず、
必要としているすべての人が利用できるようにするという考え方。
*2 ポピュリズム…一般大衆の支持のもとに、既存のエリートや知識人などに批判的な政治思想。
「大衆(迎合)主義」と訳され、必ずしも否定的な意味合いは持たないが、今回の読書会では
主に「衆愚政治」「扇動政治」と訳される否定的な意味合いで対話された。
なお、「衆愚政治」「扇動政治」と訳される際には、
「知識が少ない人が政治参加することで、短絡的な目先の利益を追求した政治となる。
また既存エリートを批判するかのような主張のエリートが登場し、知識の少なさを利用されたり、
そもそも『自分には関係ない』と、政治への関心が低下し、逆にエリートにとって有利な政治が加速すること」
といった意味を持つ。
*3 『選挙制を疑う』(サピエンティアシリーズ 58)、
ダーヴィッド・ヴァン・レイブルック (著)、岡﨑 晴輝 (翻訳)、 ディミトリ・ヴァンオーヴェルベーク (翻訳)
法政大学出版会、2019、ISBN:978-4588603587




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