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シャンタル・アケルマン『ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地、ジャンヌ・ディエルマン』ジャンヌ・ディエルマンの生をめぐって
本作は、物語ること、共有することのアイデンティティの損失を軸に、蓄積する不安やストレスが惹き起こす閉塞性に囚われる女性の三日間を描く。 1 ジャンヌ・ディエルマン(以下ジャンヌ)は編み物をしようと、そのときの気分に応じるものとしてラジオをつけたのだが、流れだした『エリーゼのために』は、終始、ジャンヌのためのメロディであり、映画それ自体に活かされることはなかった。つまり『エリーゼのために』は機械に落とし込まれた多様性の一端に過ぎず、必要に応じ、そして与えられた時間にだけ機能