たった一言がきっかけで編集者になりかけた、25歳フリーランスの話。
物語は偶然の出来事のようであり、創られた必然なのである。
そんなことを言ったのは誰だったけか。
いや、自分が考えたことだったのかもしれない。
先日、親友といつものように夜の長電話をしていたら急に、
「ちょっとみて欲しいものがあるんだけど」
と文書ファイルを送信された。
これは何か。と問うたところ
どうやら音楽のジャンルについて語った1つの文章のようで。
それを小冊子として自費出版するということだった。
へぇ〜。そんなことになっているのか。
ていうか、自費出版する人なんて初めてみたな。
僕が個人の出版と聞くと、もっぱらKindle出版が身近で。
自分で印刷屋に頼んで出版するなんて、それこそ年に2回開催するコミックマーケット(通称コミケ)の世界だけだと思っていた。
断っておくが、その親友は作家でも小説家でもない。一エンジニアとして
会社で働くサラリーマン。趣味でDJをやっているという、ちょっと変わった人物である。
そんな彼が、小冊子とはいえ本の形式で出版するという貴重な瞬間に立ち会わせてもらえるだけでもありがたい。。と
冊子を読ませてもらいつつ、読者の感想的なことをつらつらと語っていると、彼の口から驚くべきことが飛び出してきた。
硬直。その2文字だった。
エンジニアとしての仕事がメインだった自分が編集者?
というか、監修なんかしたことないんだけど。。
彼曰く、僕が以前に彼のブログの立ち上げと運営を手伝ったことがあったのを思い出し、声をかけてくれたらしい。
その時はコーチ的な立ち位置だったし、Web記事なので実際の書籍を作るのとは、また違った関わりだったけれど。
それでもエンジニアとしてWebサイトを作ってきた経験から、文字のレイアウトやデザインについて多少のアドバイスをしていた。
なるほど、そういうことか。
それなら声をかけてくれたことにも筋が通っている。
「少し詳しく話を聞かせてくれないかな。」
僕の口からはその言葉が流れるように出てきた。
編集者、という形かどうかはわからないけれど、
何らかの形で力になりたい。それを自分の経験として血肉にもしたい。
素直にそう思ったからだ。
その日は文書ファイルの添削も含めて話にも熱が入り、
通話を終えた頃には、すでに深夜の3時を回っていた。
それは偶然のようで、必然かのような。
結論から言えば僕は、文章の内容面ではなくデザイン・レイアウト面の監修につくことになった。加えて、当日の運営スタッフとしても。
内容面については自分がそこまで詳しくなかったので、別の人に監修してもらう方がクオリティも上げられると思ったからだ。
とにかく、小規模とは言え商業出版に携わることになったのである。
最初に電話をした時は、まさかこんなことになるとは思いもよらなかった。
これが青天の霹靂、というやつか。
こんな表現も、小説かどこかでしか使わないと思っていたのにな。
人生はわからないものだ。
偶然訪れた商業出版のチャンスのようだけど、改めて振り返ってみると、必然にも思えてくる。
過去のさまざまな出来事が流れを作り、いくつかの要因で築かれた関係性という土台の上に、今回のチャンスが飛んできた。
たまたま飛んできたにしては、できすぎている。
そう感じるくらいピッタリなタイミングだった。
それこそ、まるで自分が小説の中の登場人物で、
作者の都合のいいように操られているみたいに。
偶然を必然に変えるものは。
偶然を必然のように感じさせた原因は何だったのか?
なぜ、チャンスが来た時に即答できたのか。
それはひとえに「チャンスを受け入れる準備ができていたから」
ではないだろうか。
今回で言ったら、僕と親友の間に強い関係性が築けていた。
先ほど関係性を「土台」と例えたけれど、土台がしっかりしていたからこそ、地に足をつけて立ち、チャンスが来た時にバットを振ることができたんだと思う。
もし土台がグラついていたら、それはバットを振るどころじゃない。
下手したら、チャンスが来たことにすら気づかないかもしれない。
チャンスが来ることを確信していたわけでも、
チャンスが来た時にそれを掴むためでもなく。
ただ純粋に関係性を築き、チャンスという偶然が来たときに、それを掴み取り必然に変える準備ができていた。
言葉にしてみれば、ただそれだけのことなのだと思う。
偶然を楽しんで受け入れられる。そんな関係を増やしたい。
チャンスというのは、基本的に未知で怖いものである。
自分が過去に経験したことや、慣れ親しんでいることに対しては「やろう!」の一言でできても、やったことがない、わからないことに対しては、誰しも恐怖や不安は持つものだ。
だから、チャンスが飛んできてもそれを掴み取るという選択は
誰もができるものではない。
だが、それは「土台に立っているのが一人だとしたら」の話だ。
関係性が築けている相手となら。「この人となら何とかなるな」という相手となら、未知のチャンスが来ても、遠慮なく掴みに行くことができる。
チャンスをむしろ楽しむことさえできる。
そんな風な関係性が持てていることが、僕は嬉しいし、
これからも事業を通じて、そしてフリーランスとしての活動を通してそういう強固な関係性を築いてきたい。
今回の出来事を通じて、強くそう思った。
偶然のような必然の物語を、これからも紡いでいきたい。
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