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薄井秀夫
2020年6月6日 11:18
死というものは、とても不幸な出来事である。それは、死にゆく本人にとっても、遺された私たちにとっても同様である。 自分が死んでいくことに冷静でいられる人はいない。自分自身が存在しなくなるという恐怖、死に至るプロセスの中での肉体的精神的な苦痛、もう大切な人たちと一緒にいられなくなるという孤独、この世に置いて行く家族の行く末の心配。こうした事柄がいっぺんに押し寄せてくるのが死なのだ。 遺
2020年5月29日 16:19
あの世から故人の霊が戻ってくる、それがお盆である。そして葬式仏教の宗教世界は、霊と私たちの交流、あの世とこの世の交流でなりたっている。 ここでは霊という言葉を使ったが、霊にあたる事柄には、いくつもの呼び名がある。霊魂、魂、御霊、精霊、死霊、亡霊、幽霊、魂魄が代表的なものであろう。学問的にはそれぞれ微妙に定義が異なるが、ここでは特にそれを区別しない。おおざっぱに言えば、〈亡くなってからも存在す
2020年4月29日 13:48
山田太郎は、ごく普通の会社員である。 一年前、静岡の実家に住んでいた母親が亡くなって葬式を行った。父親は十年前に亡くなっていたので、喪主は太郎だった。 そして今回、一周忌を行うことになった。やはり施主は太郎である。場所は、お墓のある静岡のお寺、お経はそこの住職さんに読んでもらうことになった。 その日の朝、新幹線で東京から静岡に向かう。太郎と太郎の妻、大学生の娘の三人である。子どもは他