高齢者白書からみる最期を迎えたい場所は?
万一治る見込みがない病気になった場合、最期を迎えたい場所はどこですか?
60歳以上の方1870人にに聞いたデータが、令和元年の高齢者白書(以下の図1-3-13)で見られます。
その結果、約半数(51.0%)の人が「自宅」と答えています。
次いで、「病院・介護療養型医療施設」が31.4%です。
(出典)内閣府令和元年高齢者白書
性別で見ると、「自宅」の回答は、男性59.2%に対し、女性43.8%とやや低くなっています。さらに年齢別に見ると、男性は年齢による差はあまりないのですが、女性は年齢が高くなるほど「自宅」とする割合が増える傾向にあります。
この理由は何でしょうか??
正確な理由はわからないのですが、
男性は、「自宅」で介護してもらいながら過ごしたいという願望があるのに対して、普段から家事を行うことが多い女性は、介護をする側として最期を想像するため、自宅で過ごすことにより不安を感じやすいのかも?と考えました。
また、女性も年齢が高くなるにつれて、「自宅」と回答する方の割合が多いのですが、この理由としては、年齢層による自宅で亡くなることに対するイメージの有無も影響しているのかもしれません。
死亡した場所別の死亡者数の推移
こちらは、死亡した場所の年ごとの推移です。
(出典)国土交通省
1950年代〜1960年代中頃までは、自宅で亡くなる方の方が圧倒的に多かったのですが、1976年を境に自宅と病院が逆転します。その後、1980年代以降は病院で亡くなる方が圧倒的に多くなり、2005年に病院での死亡者数がピークを迎えます。その後は老人ホームや施設での死亡者数の増加に伴い、病院での死亡者数は減少しますが、自宅で亡くなる方の数は10%代の前半で留まっています。
世代間での自宅での看取り経験について
この様な変化をふまえて、世代による自宅で人が亡くなる経験について考えてみます。
調査をした令和元年(2019年)に60歳だった方は1960年生まれで、病院と自宅での死亡者数が逆転する1976年の時点で、16歳です。自宅で人が亡くなるケースに立ち会う機会は、ほとんどない方が多いのではないでしょうか。
これに対して、令和元年に80歳だった方は1939年生まれで、1976年時点では37歳です。このため、自分の祖母や祖父、親戚の方などが自宅で亡くなるケースに立ち会う機会が多かったはずです。こんな理由で自宅で亡くなることに比較的、違和感を感じにくいのかもしれません。
「万一治る見込みがない病気になった場合、最期を迎えたい場所はどこですか?」
この設問だと、「ギリギリまで自宅で過ごしたいけれど、最期は不安なので病院がよい」みたいに考えている方が、どう回答しているかは分かりません。
このため、この調査からわかるのは、
「なるべく最期まで自宅で暮らしたい方は、最低でも半数の51.0%以上いる」ということだと思います。
これに対して、自宅で最期を迎える方は13.6%(2019年)です。
ここには、大きなギャップがあります。
このギャップをうめて、多くの方に「最期まで自宅で過ごすこと」を現実的な選択肢にするために、医療と住まいとマネーについて、早い時期から少しだけでも知っておくことが必要だと考えています。
在宅診療所では、末期がんでも、認知症でも、1人暮らしでも、経済的に厳しくても、最期まで自宅で過ごせたケースにたくさん接します。
すべてのケースで最期までを実現できるわけではありませんが、それでも可能な限り、自宅でお過ごしになられています。
自宅で過ごすという選択肢がふえるために、少しでも役立つことを発信していきたいと思います。
Let's be じぶんちing!
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