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私のぼこぼこの鍵
空に手を伸ばして、星を掴んでみようとする。そらぁ星は売店で売っている金平糖のように、手を伸ばしても手に入る事はない。もう大人だから理解に容易い。
小さい頃透明に近い風船に入れた水が綺麗で、「なんとかこのまま固まらんかな?」とぶにぶに握りながら考えた事がある。
冷凍庫で固めると氷になるけど、溶けるやろう。そのまま保存なんてもんはできない訳で。
散々ああだこうだつべこべと言ってみたけれど、この例えは全部私のこれまでの上手くいかなかった恋愛を、なんとか美しく綺麗にどうにか表現できやんかと、考えてみた例えである。
「手に入らん星」「固まっても溶ける氷」羅列にするとなんとも物悲しい。
この文章だけで世の中の人の半分は、私を哀れんでむせび泣くんとちゃうか。大丈夫ですか、ハンカチは持ってますか。
ただ本人はいたっていつも淡々としているのである。
私は恋愛が続かない。
チャラ男やヤリ○ンもこぞって言うであろう。
「俺ってば、熱しやすく、冷めやすいんだってばよ!」のセリフは他人だとは思えない。
違う違う!悪気はないんだ!きっと脳の仕業なんだ!
もう記憶としては気持ち的には数億年前、そう、あれはまだ恐竜がいた頃のような話である。
かつて唯一長く続いた彼氏がいた事がある。
当時は「これが安定です!」「この人が安心感の塊です!」っていう脳内のサイレンが全く聞こえてなかったし、
全くわかっていなかった程には、真面目で、優しくて、安定感のある男の人だった。
ただただ、私は、途中からきっと飽きたんだと思う。退屈だった。
「この人が安心感のある男です!」「安定感もあり、仕事もがんばり、真面目で、結婚には向いている相手です!」
脳内サイレンは耳を塞いだ私に言い続ける。
「ゆりあちゃん!私の声!聞こえてますか!?」
「この人が!!結婚に!!!向いてる!!!男性です!!!」
……いいいいいいいや!!!聞こえとる!!ほんまは聞こえとったわ!!ああ、なにさ!聞こえとったし!!はじめて安心できる人を自分で選んだ節すらある!!!
節ってなんやろうな?字面的に竹から来てる気がする。知らんけど。
その節を選んだ頃の自分に言いたい。
あんたがそれだけ長く恋愛関係が続いたのは、その男が安定感があって、優しかったから以外のなにものでもない。
決して戻りたい訳ではない。むしろ幸せになってて欲しい。私より数万倍も優しい人を捕まえて、結婚して幸せになっていたら嬉しいなと、心の底から思ってる。
人ってほんまに自分に優しくしてくれた人の事やったら、その人の幸せを心から願えるんやろうな。
自分が優しくしてたらきっと皆も、私の幸せを願ってくれるに違いない。
そんな事にも気づけるぐらいには人として成長させてもらったと、感謝の念すら今でもふつふつと湧いてくる。
これまでに私と付き合ってくれた男性にはむしろ全員に思っているかもしれない。
「アリーナの皆ァ!!聞こえてるぅ?!成長させてくれてぇ〜あ!り!が!と!う!!!ねぇ〜〜!!」心の中のあゆが叫ぶ。
これまでの恋愛はきっと形が合わない鍵を鍵穴にぶっさして無理にガチャガチャ、ドンドンと叩いて、
扉を開けようとしていたようなもんである。
恋愛がうまく言っている人は揃ってこう言う。
「あまりにもとんとん拍子で」
「気づけば隣りにいて」
鍵と鍵穴は、ぴったりと合わんと開かんのである。
無理にガチャガチャしたら鍵が折れるか、鍵穴が潰れる。
恋愛って鍵と鍵穴みたいなもんやねんやろうな。
無理にこじあけても意味がないし、合う時には、気が抜けるほどあっさりカチッと扉が開くんだろう。
鍵が合うかどうかは、いざ刺してみないと回してみないとわからんのである。
よく海外ドラマで見る、警察官の腰に刑務所の牢屋の鍵が何本もジャラジャラついたやつ。そうあいつ。
あれを、これも合わん、これも違うな、穴にすら入らんわ、と一本ずつ試して行くしかない。
「この人しかいないの!!!」と、一度で良いから言ってみたい。
「これが今世一大の恋なんです!!」
「THIS IS MY LOVE!!!!」と声を大にして叫んでみたい。
生まれた時に神様から私が与えられた鍵は、多分なんかぼこぼことか凹みとかいっぱいついてて、
酔っ払って無くして家に入られへんくてなんとか鍵屋さん呼んで合鍵作ろうとしたら「三万円になりますぅ」とか言われてむせび泣いてた友達の家の鍵みたいに、大層複雑な形をしているんやろうな。
このレアな鍵も、素っ頓狂な私の人生の一部でもあると思うと、愛おしくなってくるからおもしろい。
今日もぼこぼこの鍵を強めに、ぎゅっと握りしめる。
カチッっと扉が開くその日まで。
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