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発展が許されない国

2023/08/04より南アジアのネパールに滞在しています。

これまでは国内外の農業を中心とした記事が多かったのですが、これからはネパールでの仕事や生活、農業を中心に書いていきます。


人口25億強の中印に挟まれた小国ネパール

ネパールは北を中国、南をインドに挟まれている小国です。
ヒマラヤの国というイメージのとおり、8,000m級の山をいくつも抱えています。

大体の国境線

人口約3000万人、面積は日本の1/3ほどです。
山が多い地形のため、農業従事者が人口の6割以上を占めるにも関わらず、農業に適した場所は全体の2割ほどと言われており、その大部分はインド国境近くの標高が低い南のエリア(タライ)に位置しています。

南アジアということで一年中暑いかと思いきや、首都カトマンズの標高は1400mもあるため、真夏は日本より涼しいのですが、日光が強いため日傘を使う人もいます。
逆に冬は日光の影響で昼間は暖かくなりますが朝晩は冷えるため寒暖差が大きいです。

首都中心部は排ガスや埃で空気が汚いのがマイナスポイントですが、近年は電気や水道、道路などのインフラもかなり整備され、元々治安がいいこともあってかなり住みやすくなっていると言えます。(それでも停電は起きます)

後発開発途上国の共通点

そんなネパールですが、都市部と山間部の格差は激しく、この格差のおかげでアジア最貧国とも言われています。
南アジアというのは地域全体としても東南アジアや他の国より発展が遅れているとされており、人口世界一となった隣国インドが今後どのような動きをしていくのかがネパールのみならず近隣の国へ大きく影響を与えます。

地方への道中。橋が壊れ、川を渡るのが規定ルートになっているが増水の影響で川も渡れず2時間近く足止めを食らった

ネパールは開発途上国の中でもさらに遅れている後発開発途上国の一つとされています。
後発開発途上国には以下のような幾つかの共通点・傾向があるとされています。

【後発開発途上国の共通点・傾向】
◾︎人口が少ない
◾︎面積が小さい
◾︎内陸
◾︎自然災害が多い

人口こそ、そこまで少なくないのですが、面積の小ささ、内陸であること、自然災害の多さはネパールにも当てはまる部分です。

面積が少ないことは何かを生産する時のリソースが限られることを意味します(しかも居住や産業開発に向かない山間部が大半)。
内陸であることは輸出や輸入に大きなハードルを生じさせます。
自然災害が多いことがデメリットなのは言うまでもありません(大きな地震意外にも雨季は土砂崩れや洪水が首都を含め各地で起きていますし、逆に乾季は水不足や旱魃も起きます)。

また、そこそこいる人口も、出稼ぎで海外へ出てしまっている人が多く、若者の半分以上は海外へ行っているとも言われています(日本にも14万人のネパール人がおり、国別在日外国人人口としてはトップの伸び率となっています)。
また近年では出生率も低下しているため、高齢化も懸念されています(農村部ではすでに起きています)。

典型的な農村部の家の中

発展が許されない

上記のような状況の小国ネパールですが、意外にも他国からの侵略を受けたことは一度もありません。

19世紀にイギリスの保護国となったことはありますが、植民地化されたわけではなく、逆にその頃、グルカ兵と言われるネパールの傭兵たちの活躍が高く評価されたことで、グルカ兵は今でもイギリス軍に属しており、その他の国でも活躍しているネパールの傭兵は産業として重要な外貨獲得手段の一つとなっています。

他国からの侵略を受けたことがないネパールですが、大国に挟まれているが故に緩衝地帯となっているという見方ができるのも事実です。
「インドがくしゃみをすればネパールが風邪をひく」と言われるほどインドの影響を強く受けていますし、中国からすれば、8,000m級の山を超えてまでわざわざ侵略する価値がないのかもしれません。

とはいえ、経済的には両国との結びつきを強くせざるを得なく、ネパールのインフラ開発は中国により担われている部分もありますし、中国製品もたくさん入ってきます。

インドはインドで農作物の輸出制限や原油価格のコントロールを行うことでネパールの物価高騰の原因を作っています。
最近ではレギュラーガソリンが205円/Lほどになっており、電車もなく、月収2万円ほどで生活するネパール人庶民にとってはかなりの大打撃です。(私にとっても大打撃。。)

世界有数の大国の影響を受けざるを得ないネパールは発展が許されない国であり、自国の産業の育ちにくさや送金頼みの経済状況を解消するのはかなりハードルが高いことなのです。

そんなネパールより、これからは発信をしていくのでよろしくお願いします。

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