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「ただの会計に詳しい人」で終われない。波を見極め飛び込んだ会計士のヘルスケアスタートアップでの挑戦

「働きがいのある人間らしい仕事」という意味のディーセントワーク。最近よく耳にしませんか。
ディーセントワーク実現に欠かせないもの、それは働く人々の健康。

企業の健康課題をシステム×専門家の力で解決する健康管理システム『Carelyケアリィ』を開発・運営する株式会社iCAREアイケアの小松和明さんにお話をうかがいます。

「もしも友人からスタートアップに行きたいと相談されたら?」という問いかけに、
「まず、止めますね」と答える小松さん。

そう言いながらもスタートアップに居続けるのは、いったいなぜなのか?
ぽつりぽつりと語られるiCAREの魅力と、キャリアについて思うこと。

どストレートに、語っていただきました。

担当はJAPAN FASの俵家と大沢です。


キャリアの先輩をご紹介

株式会社iCARE
経営企画部
Manager

小松 和明 氏

公認会計士
2012年 株式会社伊予銀行 入行
2014年 有限責任あずさ監査法人 入所
2019年 株式会社iCARE 入社

※所属・役職は取材当時のもの


それでも僕が、スタートアップにいる理由

――今回とても衝撃的だったことが、前もってお送りした「知人がベンチャーに行きたいと言ったらどうしますか」という質問に対しての「めますね」という小松さんからのコメント。‥‥止めますか?


まず止めますね(笑)。もちろん行きたいなら行けばいいですけど‥‥。
もし悩んでいる段階なら、無し寄りになりますかね。

スタートアップってキラキラして見られがちだし自由は自由ですけど、あえてスタートアップに飛びこむ必要ってほんとにあるんだっけ?
って、よく考えたほうがいいと思っています。

――とはいえ現職で4年目ということなので、小松さんがスタートアップに居続ける理由がなにかあるはずですよね。


‥‥「スタートアップのいいところ」という本があったら、そこの1ページ目に載っていそうな典型的なところがいいのかも。

裁量の“与えられやすさ”、意思決定がすみやかで、マネジメント層との距離も近くて、部署間のしがらみをあまり気にしなくていいところ。

ちなみに監査法人に入るときは、スタートアップに入るなんてまったく考えていなかったです。

アツい代表と集合写真


――まったく考えていなかったスタートアップに入った経緯、気になります。


VC(ベンチャーキャピタル)の方から何社かご紹介いただいたのが、最初のきっかけです。でもほんと、最終的な決め手は“雰囲気”ですね。

ありがちな「大手? スタートアップ?」で検討をしてみて、過去の経験から大企業には向いていないかなと。

しがらみが好きではないし、「どこで働くか」は人事部に決められるんじゃなくて自分で決めたいと思ったし。
必然的にスタートアップかなと思いました。

――スタートアップと一口に言っても、規模やフェーズがさまざまですよね。


スタートアップの選び方ってめっちゃ難しかったです。
行くなら当然、伸びそうな会社に行きたい。だけどどこが伸びるかなんて、説明を少し聞いたくらいではわからないんですよ。

社会的意義がある会社に行きたいと思ったので、僕が思う「社会的意義のある領域」のヘルスケアなどいくつかの業種で絞りをかけて、
知名度のあるVCから投資を受けている会社なら多分ちゃんとしているんだろうなとか、話してみてちゃんとしているな、とか。
そういう方法で、絞って絞って。

それでもまだいろんな会社があるな、となったときにすごく大事だなって思っているのが、会社の集合写真です。

SNSに載っていたiCAREの集合写真を見たときに、第六感じゃないですけど「ここ、なんかわからないけど馴染めそう」「ぜったいイイ人たち」と感じるなにかがあったんです。
雰囲気、フィーリング、ですね。

――iCARE代表の山田氏と初めて会ったときの印象はいかがでした?


代表の山田とは、最終面接で会ったのが最初で、印象としてはアツい、パッションがあふれてる人だなと思いました。

これは想像ですけど、大企業の最終面接で役員が自社への想いをアツく語ってきたりふつうに雑談したりって、あんまりなさそうですよね。そのあたりがスタートアップっぽいなって感じたんだと思います。

いまいっしょに働いていて、そのときの印象と変わらないですね。ずっとアツい人です。

――入社後のご感想と、当時のことで印象に残っていることをお聞かせください。


いろいろと楽しいです、ほんとに。
入社と同時期に、僕ともう1名でコーポレート部を立ち上げるという経験をしましたし、法務として株主総会・取締役会まわりの業務や契約書のリーガルチェックを担当していたときもありました。

印象に残っていることとして、自社サービスである『Carely』の利用約款を顧問弁護士と相談しながら作成したり、商標登録に関わったり、ということがあります。

日々状況やいろんなことがどんどん変わって飽きがこなかったのが、飽きっぽい性格の僕にとっては多分よかったんだと思います。
さまざまな業務をスピード感を持ってやりとりする、そんな経験ができて楽しかったです。

――会計士が法務とは、ものすごくスタートアップっぽいです。経理財務として資金調達も経験されていますよね?


ファイナンスまわりでは、エクイティファイナンスとデットファイナンスの資金調達をそれぞれ複数回経験しました。

おおまかな方針はCFOの加藤と話し合い、弁護士さん対応や契約書のレビューやスケジュール調整などはまかせてもらいました。毎回シチュエーションが違っておもしろかったです。

保守的な思想をいかに取っ払えるか


――現職で大変だったことはどんなことでしょうか。

前職まではどちらかというとクローズドな社風で過ごしてきたので、会社の成長やブランディングのためとはいえ、自分の仕事や考え方を実名で世の中に発信することに、最初はすごく抵抗がありましたね。

自分にとってもメリットがあるというのは頭ではわかりつつも、「がんばって、やらなきゃな……」みたいなところがありました。

SNSやブログで実際に発信してみると、頭の中が整理されるし、いろいろな方々とのつながりも増えるので、いまは「やってよかったな」と思えます。
これはまぁ、慣れの要素がある気もします。


また、外からアドバイザー的な立場で意見するのと自分で事業会社でやるのには、思っていた以上の違いがありました。

保守的な環境で過ごしていると保守的な思想になっていくんですよね。すぐ他社事例を持ってきたくなるんです。
そして、口ぐせになってしまうんです。「基本的には~」とか「一般論では~」とか。

それらをいかに取っ払えるかが、大事な気がします。

現職では、社外の方の意見を踏まえ、リスクや工数のバランスを見てビジネスジャッジすることを求められます。ですから、「~べき」「一般的には~」で結論付けることは避けるようにしています。

「うちの会社に合っていることを考えましょう」という考え方が大事ということで。
最初は慣れなかったですね。これもまぁ、慣れな気がします。

インチャージまでは絶対やろうと決めていた


――『デンタツ』第18回に出ていただいたSUPER STUDIOの阿部さんとは、監査法人時代の同期だとうかがいましたが。

はい、同期なんです。記事にも載っていたように阿部ちゃんはほんとに細かくて(笑)、僕は「そこまで考えなくてもいいんじゃない?」という楽観的な性格で、タイプは違うのですが仲良くさせてもらっています。

阿部ちゃんがスタートアップに行く前に、「転職しようかな」と相談されたような仲です。

僕はワンテンポ遅れて、阿部ちゃんが転職した半年後くらいにちゃんとキャリアを考え始めました。

30歳になるけど、これからどうしようかな、って。

――監査法人に入るときはスタートアップに行くとは思っていなかった、とおっしゃっていましたね。

居心地がよかったんです。チームメンバーもよくて、出張は多かったものの楽しくて、すごく快適に働いていました。

インチャージ(現場責任者)までは絶対にやろうと決めていたんです。

インチャージを2年やって、そこからさらに上を目指すのか、外に出るか、どうしようかなと。そのタイミングがひとつの区切りだと考えていました。

会計に詳しいだけじゃ、どうにもならない


――「インチャージまでは絶対」と思った理由はなんだったのでしょう?

お客さまの一番の担当になれるからです。ものすごく不謹慎な例かもしれないですが、もし不正会計があったときは最初に自分に連絡が来るんですよね。そういった部分も含めて入ってくる情報の量が多いことが魅力でしたし、重要なポジションを任せてもらえている気がして充実感がありました。

そしてそれによって何が身につくかというと、重要な情報を扱いながらお客様との落としどころを見つけるスキルとかコミュニケーション能力、あとはプロマネっぽい全体進捗管理する力です。

それらのスキルが、インチャージをひととおり経験してるかどうかによって大きく差が出ると思います。キャリアにおいてあきらかな違いが出る、と僕は思っています。

ただ会計に詳しい人、ただ監査調書をつくれる人、で終わっちゃうのはよくないなと思って心がけたことが今も活きているなと。

会計に詳しいだけでは、どうにもならないです。できてあたりまえのところに何をプラスしていくか、そこに尽きる気はします。

健康情報を扱う事業者として、より一層しっかりとした体制をつくりたい

――最後に、今後のキャリアについて思うことや挑戦したいことがありましたらお聞かせください。

個人としては、基本はバックオフィス系のキャリアを歩いて行くのだと思いますが、正直あまり先のことは考えていません。

銀行で2年、監査法人で5年、スタートアップでバックオフィス3年やってきたことで、キャリアが固まってきてしまったかな? どうなんだろう? というのは考えますね。

これまでは「やりたいこと」に向かってきましたが、これからは「できること」の比重が上がっていってしまうのかなって。狭間にいます。

事業側にも行けるものなら行きたいなという気持ちもありますが、ここからチェンジできるのかな? どうなんでしょう(笑)。


会社としては、まだ未熟な部分も多いiCAREの体制整備を、しっかりとやっていきたいと思っています。

個人情報のなかでもとくに規制がきびしい健康情報を扱う事業者だということもあり、より一層しっかりとした体制をつくっていくことが、やらなくてはいけないことです。

これまでも当然やっていましたけど、ガバナンスや情報管理、内部統制などの事業成長の基盤をより強化していくことが、目下の課題です。


――小松さん、ありがとうございました!


株式会社iCARE|https://www.icare.jpn.com/


現役の産業医が代表を務め、法人向けヘルスケアサービスを提供するスタートアップ。「働くひとの健康を世界中に創る」をパーパス(存在意義)に掲げ、企業に眠る健康データ(健康診断・ストレスチェック・産業医⾯談など)を⼀元管理することで働きがいのある組織創りを支援する健康管理システム『Carely』を開発・提供。

※写真はすべてiCAREオフィスにて撮影
※写真撮影時のみマスクを外していただきました


◇マガジン『デンタツ』バックナンバー

記事にも登場! 監査法人→D2C支援スタートアップ。阿部さん。

監査法人→人材ベンチャー→ウォンテッドリー。仁位さん。

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お読みいただき、ありがとうございました。


企画/JAPAN FAS株式会社
写真・文/Yui Osawa


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