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双極記録

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記事一覧

【双極記録04】 +60地点(下ることを祈る)

【双極記録04】 +60地点(下ることを祈る)

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 ごく数人のお世話になった知人と身内だけのささやかな葬儀は、滞りなく終わった。スイッチが入ってすぐに増やした、躁を抑える薬がよく効いているのだろう、人様に不審がられるほど私のテンションも(恐らく)高くはなく、ここ数年の父の思わしくなかった健康状態を知る神主とは軽く冗談を交わしながらの、和やかな時間だった。
 脳に生まれつき重い疾患を抱えながら奇跡的に麻痺もなく、飄々と好き

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【双極記録03】 −80地点まで転がり落ち、−40地点に浮上するまで

【双極記録03】 −80地点まで転がり落ち、−40地点に浮上するまで

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 6月初旬に次の記事、+60地点(下り)の下書きを書き始めていたのに、なぜ今こんなことになっているのか分からない。下書きにはこう書いている。

 そうだ。身体が疲れてきているなと確かに感じていたのだった。朝起きた時の倦怠感、机の上に散らばった膨大なメモを見遣って無意識に吐くため息。今日はお昼寝をしよう、と思う。そうすればきっと滑らかにニュートラル地点に着地できる。
 まだま

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【双極記録02】 +80地点(下り)

【双極記録02】 +80地点(下り)

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 躁のスイッチが入った直後の不眠が続いて身体の疲れが溜まってくると、精神状態がどうであれ、22時ごろ眠りについたあとは朝方まで続けて眠れるようになる。今回の躁(2024.04)は睡眠時間2〜3時間という命の危険を感じる不眠状態が10日も続き、主治医が薬の処方を一気に増やしたため、現在は疲れが溜まってというよりは薬によって強制的に眠らされている。
 そもそも私はロングスリー

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【双極記録01】+100地点と−100地点

【双極記録01】+100地点と−100地点

 いま現在、これを書いている時点は+80地点あたりだろうか。躁状態のピーク、もしくは鬱の沼底にいるときは原稿を書くことができない。脳内でアイデアがあれやこれやと浮かび、腰を据えて文章を構成することができなかったり、絶望の只中にいてペンを持つことさえできなかったりするからだ。
 それゆえ+100と−100の精神状態を正確には描写できないかもしれないし、何かが抜け落ちているかもしれない。それでもいくつ

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【双極記録00】 マンホールの蓋

*この記事には自死についての記述があります。ご自身の体調をまず第一に。読み進められそうな方はどうぞお読みください。

 人が自ら死を選ぶという過程は、抑うつ状態に陥り徐々に徐々に死へと向かって落ちていくものではなく、ある日ある瞬間、足元にあるマンホールの蓋が外れ、その穴にすとんと真っ逆さまに落ちてしまうものだと私は思っている。
 これは私が実際に目撃した光景であり、双極性障害を患う自分自身が、もが

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