FIREBUGの新サービス「MUSIQ」。音楽のトップクリエイター・本間昭光さんに学ぶ|ネットだけでは掴めない楽曲制作のセオリー
「世代間の分断が生じている音楽業界へ貢献したい」という思いがあった
──まず、「MUSIQ」にご参加いただいたのはどのような背景があったのか教えてください。
今回「MUSIQ」に参画させていただいたのは、「音楽業界へ貢献したい」という気持ちが強くなったから、というのが一番の理由です。
というのも、今の若手と僕と同世代くらいのクリエイターでは、世代間の分断が生じていると思っているからです。
音楽業界全体がシュリンクしており、スタジオの数が減少しているなか、今では数えるほどしか大きなスタジオは残っていません。
また、かつてのように大きなスタジオを借りられる予算を組めるほどのプロジェクトも、一握りのスタープレーヤーにほとんど限られてしまっている。
こうした状況に伴い、現在の若手クリエイターはスタジオワークをほとんどやらなくなっているんです。昔はアシスタントとして現場に入り、リアルに先輩やクライアントと接する機会があったので、一流の技を見て学んだり盗んだりできたのが、それさえも今はできなくなっています。
他方で、テクノロジーが発達したことで音楽を自宅で録音したりサンプリング素材を引っ張ってきたりとデータでの納品が主流になっています。これは限られた予算内で収めるための工夫として真っ当なやり方だと思う一方、どうしてもリアルな場でのコミュニケーションに欠けてしまうわけです。
これはコロナ禍でオンライン化の波が押し寄せたことで、さらに加速していると思っています。そんななか、20代のアーティストと話していると「音楽を作る現場に行きたい」という声が多く聞かれるようになっていて、これはもっと僕自身の経験や蓄積してきたノウハウを共有する機会を提供するべきなのでは。そう考えるようになったのが、MUSIQに参画したきっかけになっています。
現場でしか学べない「瞬時の判断」や「意思決定のプロセス」など”プロとしての一挙手一投足”を凝縮している
──ZoomやLINEなど、オンラインでのコミュニケーションが活発化していますが、やはり現場でしか身につかない“お作法”や“テクニック”はありますよね。
例えば、ミュージシャンやアーティストが演奏を終えてTalkBack(トークバック)ボタンを押すまでの数秒の間にサウンドエンジニアやディレクターと会話し、リクエストを出さないと演奏家は不安になってしまう。間を開けずに「ちょっと待ってくださいね」とミュージシャンやアーティストへ話しかけて不安を取り除く働きかけをするのが大事なんです。
また、「今のじゃなくて…」と否定から入るのではなく「今もいいけど、もっとこうしてもらうとよくなる」というように、どのような言葉をかければいいかなどの細かな話術も必要になってくる。さらに、レコーディングの際のマイクの立て方やアーティストの魅力が最大限に引き立つアレンジ技法、クライアントとの折衝など、現場をこなすことでしか得られない経験値があります。
サンプリング素材は充実しているし、ネットの動画教材も作曲やアレンジ関連の教本もあるけれども、それだけでは学べない“楽曲制作のリアル”こそ、音楽作りにおけるセオリーであり、基本として抑えておくべきポイントだと思っています。
応用だけ知っていても、基本が愚かになっていれば、いいクリエイティブは生まれにくい。
基本を理解しているからこそ“崩す”ことができ、人を魅了する音楽を見出せるわけです。
今回のプログラムでは、僕がこれまで実践してきた作業風景や打ち合わせの仕方、サウンドプロデュースで大切にしていることなどをただ紹介するのではなく、瞬時の判断や意思決定のプロセスといった「プロとしての一挙手一投足」をお見せできるように意識しています。
技術のことだけではない「人」と仕事する上で重要なことを伝えたい。ノウハウは企業秘密ではなく、惜しみなく提供する
──アレンジ技術だけではなく、クライアントであるアーティストとの打ち合わせやコミュニケーションのスタンスまで公開しています。これはどのような理由からなのでしょうか?
まず、そもそもネットに落ちている教材を見たところ、違和感を覚えました。機材の扱い方や技術を体系化しての解説などはわかりやすいと思う反面、教材感があって現場ならではの緊張感は伝わりにくい、また一番大事なのは仕事を依頼されてから納品するまでの流れがわからないなと思いました。
もちろん、技術を磨くことができれば録音やアレンジ、ミックスなどの各パートはある程度こなせるようになるでしょう。でも、一番大事なのはアーティストの個性や理想とするものを、自分なりに解釈することが重要になります。
アーティストの生み出す創作物をいかに最大化させ、魅力的なものへと昇華させていくか。
個性や楽曲のイメージ、センスの引き出し方など、アーティストによって考察すべき事象が多岐に渡っています。
この点を蔑ろにしてしまっては、いくら各パートで創意工夫してもいい音楽は作れないでしょう。そのため、打ち合わせの仕方やアレンジャーたる振る舞いなど、プロの音楽人として必要なスタンスを公開し、技術のことだけではない「人」と仕事する上で重要なことを伝えています。
──具体的な作業風景やスタジオ現場でのやりとりは、“企業秘密”のようにも感じます。
実は全然ノウハウを隠すつもりはないんですよ。
人間は十人十色であり、声色や好み、音楽の発想方法なども人それぞれ異なります。
たとえノウハウを共有しても、人によってその使い方は全く変わってくるため、同じような作品にはならないわけです。
僕の先輩世代のアレンジャーは、当時まだPCのメモリがなかったので、すべて頭の中に入っていました。
時折、音の作り方を教えてくれたんですが、絶対同じ音は再現できないんですよ。こうした過去の経験もあって、自分のノウハウは企業秘密だと全く思っていません。
アーティストの気持ちを汲み取るための取捨選択の連続。楽曲制作における全体の流れに注目してほしい
──なるほどですね。そうなると、全てのプログラムが貴重だなと思っていますが、特に注目してもらいたいのはどのプログラムですか?
全体の“流れ”に注目してほしいですね。全てのシーンに、インターネットや本ではなかなか知ることのできない、瞬間の判断や経験値に裏打ちされたメソッドに基づく意思決定の様子を記録しています。例えば、アーティストとの打ち合わせにしても、ストーリー通りにいく場合とそうでないときがあります。理想に近づけるためにアーティストの技量や性別、目指す音楽性などを鑑みて、都度判断を繰り返していくわけですが、アーティストの気持ちを汲み取るための取捨選択の連続は、他の教材にはないオリジナルなものになっています。
今回はあくまで音楽の制作風景をお見せしていますが、これはどの業界にもヒントになりうると考えています。ビジネスの現場でも、クライアントと交渉する機会は多くあります。関係性を築きつつも、どう相手の懐に入り込むのか。
これは業界問わず、共通して必要になってくるスキルですし、身につけておいた方が必ず役に立つものです。
そういう意味では、音楽業界に携わる人はもちろん、ビジネスパーソンの方にも見てもらいたいと思っています。
発想を変えていく瞬間やクライアントと折衝しながら作品を熟成していく過程は、全ビジネスマンにも必要なスキル
──最後にMUSIQの購入を検討していただいている皆様にメッセージをお願いします
ただ流し見するのも良いですが、会話の行間を読んで「今の判断はこういう意図を持ってのことなのかな」と考察し、深読みしてもらいたいですね。何度も動画を見てもらい、自分の頭で反芻しながら考えていくと、現場で使える知識として身についてくると思います。もし、何度も何度も熟考し、それでも理解し難いようであれば、僕宛てにメールを送ってもらっても構いません。全ての質問にはお答えできませんが、悩みに悩んだ内容と判断できたものについては可能な限り返信します。
また、繰り返しにはなりますが、発想を変えていく瞬間やクライアントと折衝しながら作品を熟成していく過程は、音楽業界に関わる人のみならず、デザイナーやソフトウェアエンジニア、営業やコンサルなどのビジネスマンにも参考になるでしょう。
何かの成果やスキルアップは確約できるものではありませんが、新しいアイデアを生み出す一助にもなると思うので、ぜひ多くの人に見てもらえたら嬉しい限りです。
MUSIQについての詳細は下記よりご覧ください!
YouTubeにてダイジェスト公開中です!
https://youtu.be/HEyqdH8to5E
https://youtu.be/ookwdqbkvN8
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