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「何をどう理解したか」伝えよう ~日経産業新聞 HRマネジメントを考える 第26回 (2022.10)

日経産業新聞「HRマネジメントを考える」の再録、続けますね。だいぶ近くなってきました。第26回目です。何をどう理解したか伝えるというのは、キャリアカウンセリングのクラスで散々教えさせていただいていることです。でも、これってコミュニケーション全般で大切だよなぁとつくづく思います。これを怠ったがためのすれ違い、曲解・誤解、行き違い、そんなことでたくさんのことを私たちはロスしているように感じます。
さて、一生懸命にリンクをぺたぺた貼って「HRマネジメントを考える」のまとめNOTEも作っています。ご興味をお持ちいただいた方は、コチラをご覧ください。

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日経産業新聞 HRマネジメントを考える (2022.03)
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「何をどう理解したか」伝えよう
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 ビジネスにおいて信頼関係はとても重要です。私は副業でキャリアカ ウンセラーを志望する人向けの講座を担当していますが、カウンセラーは信頼関係の構築を特に大切にする職業の1つです。  
 受講生の多くが信頼関係を構築するプロセスに苦労します。信頼とは一方的なものではなく、相互の信頼が大前提です。信頼を得るためには、まず自分が相手を信頼する必要 があります。  
 ギブアンドテイクという言葉がありますが、この順番に意味があります。テイクを得るためには、先にギ ブが必要なのです。信頼関係の構築も同じで、信頼を得たいと思ったら、まず相手を信頼しきることです。でも、これが難しいのです。  
 相手を信頼するとは何でしょうか。私のカウンセリングの師匠は、信頼するとは「自分のすべてもしく は一部を相手に委ね任せること」だといいます。私の姪が学生時代に部活でチアリーダーをやっていました。彼女は仲間の上に乗っている役割で、仲間にポンと虚空高く投げられ、引力によって落ちてくる地表近くで仲間に受け止められます。まさ に信頼関係が成り立っているからこそできることです。  
 カウンセリングの序盤では、カウ ンセラーは相談者が語ったことをし っかりと受け止め、カウンセラーが 理解したことをカウンセラーの言葉 で返すことに注力します。  
 相談者「上司の話があんまりだっ たので、早退してしまいました」。  カウンセラー「上司の一言がその あとの仕事が手につかなくなるほど 悔しく感じたのですね」。  
 相談者は自分の言葉がカウンセラ ーにどう理解されたかをカウンセラ ーの言葉の中に聞きます。カウンセ ラーは心の中で相手を理解しただけでは駄目で、理解したことを自分の 言葉で相談者に返すことが大切です。それを聞いて初めて、相談者は カウンセラーが理解してくれたとわ かるのです。  当たり前の話のように聞こえます が、日常のコミュニケーションで私 たちがおろそかにしているのが理解したことを相手に伝えるという行為です。これを怠るがために様々な誤解が生まれ、そのズレがいずれ致命的なレベルに積み重なることは人間関係の中でよくあります。  
 カウンセラーが常に相手を正しく理解できるわけではありません。時にカウンセラーが返す「理解した言葉」を相談者が訂正したり否定したりすることもあります。それでもいいのです。相手を信じ、訂正を繰り 返しながらもセッションは進み、少 しずつ信頼は構築されていきます。  
 学習を始めたばかりの人は間違いを恐れます。正しく理解しなければいけないと力が入り過ぎます。相手に信頼してもらいたいと思いながら、相手を信頼して自分の言葉を相 手に委ねることができないのです。相手を信頼して自分の一部である言 葉を相手に委ねる。相手に修正され ても、否定されてもいいので、理解したことを自分の言葉で伝える。相手を本気で理解しようとする真摯な態度に相談者は信頼を寄せるのです。  
 日々のコミュニケーションでも、「理解しました」では不十分なのです。何をどう理解したかを伝えるこ とが大切なのです。私たちの日常の コミュニケーションの失敗の相当部 分がここにあるように感じます。

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