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JBFな人たち #13 早川舞(グラース株式会社)

JAPAN BRAND FESTIVALにかかわる人たちは、一体どんな想いを持ってものづくりやビジネスをやっているのか? JBFに入って良かったことは何か? 当事者たちにインタビューしてきました。
今回お話を聞いたのは、アロマ・ハーブ関連商品の販売や、アロマトリートメント、スクールなど、アロマ関連の事業を旭川市で展開するグラース株式会社代表取締役の早川舞さん。なんと4年をかけて、北海道アロマ「はぐりら~Hug&Relax~」を開発されています。北海道アロマって、何?

香りで1時間動けなくなる

——アロマとは衝撃の出会いだったそうですね。

早川 そうなんです。結婚して、離婚して、イチから仕事を探さなきゃいけなくなったことがあって。そのとき、「自分には何もないな」ってすごく気持ちが落ち込んでたんですよね。幸い、就職が決まったんですけど、ちょっとホッとして何気なく立ち寄ったのがデパートのアロマコーナー。そこで、1時間動けなくなりました。

——え、どういうことですか?

早川 そこにあった香りを嗅いでいたら、霧が晴れるようにものすごく元気になれたんですよ。それで、あれこれ香りを試してたら、気づいたら1時間たっていました(笑)。

——それまでもアロマや香りには好きだったんですか?

早川 香水を買ったこともありましたけど、どちらかというと苦手意識がありましたね。香りってキツいものだと思っていたし。でも、そこで嗅いだアロマは全然違ったんです。優しく広がるみたいな。それで、すぐに本格的に学びたいと思って、東京のアロマのスクールに通いはじめました。

——先ほど「アロマで元気になれた」って言いましたけど、香りの効果は科学的にも証明されていることなんですか?

早川 されています! 香りって0.2秒で脳に到達するんです。それは、理性以前の、感情や記憶といった本能の部分にタッチする。たとえばラベンダーの香りを嗅ぐと、最初に「好き」か「嫌い」かという感情が来て、その後で「あ、ラベンダーの香りだな」と認識する。視覚は「ラベンダーだな」と認識してから、「好き」か「嫌い」なので、逆なんですよね。

たとえば金木犀の香りで子供の頃を思い出したりするのも、嗅覚が記憶に直結しているから。嗅覚は、もっとも原始的な感覚だとされています。

——勉強になります。ちなみに、そのときはどんなことを思い出したんですか?

早川 私、学生時代、バドミントンをしていたんですよ。中学のときは北海道で1位になって、高校、大学と、バドミントンで進学しました。

——北海道1位!すごいですね。

早川 それくらい打ち込んでいたんです。もちろんトレーニングなんかは大変だったけど、頑張っていたから楽しかった。

香りを嗅いだとき、そのときのことを思い出して元気になりました。それと同時に、気持ちが落ち込んでいるのはそういう「頑張っていること」が今の自分にないからだと気づいたんですよね。それで、アロマに打ち込むようになったんだと思います。

アロマの癒し効果を感じる瞬間

——今は香りにまつわることをたくさんされていますよね。アロマの専門ショップ、スクール、トリートメント、アロマケア……。

早川 スクールを卒業した後、旭川にはじめてのアロマショップができると知って、そこで5年間働かせてもらいました。
昔、一晩寝られなかっただけで顔中吹き出物だらけになってしまったことがあって。
何の病気だろうと急いで病院に行ったら、ストレスだって。たった一晩で、すごいですよね。それで、私の他にもストレスで困っている人がたくさんいるだろうな、そういう方を癒やしたいな、と思って、自分で店を持つことにしました。

グラース②

——産婦人科と提携して出産直後のお母さんにアロマケアをしているのも、そうした癒しの一環ですか。

早川 そうですね。出産した後って、「マタニティブルー」と言って、一時的にガタッとホルモンバランスが崩れてしまうことがあります。わけもなくふさぎ込んだり、涙が出たり。そういう時期のお母さんに、好きな香りを数種類ブレンドして、トリートメントをするんです。そうすると、アロマはもちろん、タッチングによって心がほぐれるみたいですね。なかには安心感からか涙するお母さんもいたりして。

——それは、ご自身もストレスで苦しんだことがある早川さんだから、気持ちがわかるんでしょうね。

早川 喜んでもらえると、こちらも「この仕事をしていてよかった」と思いますよ。コロナで今はできていないんですけど、早く再開したいです。香りもタッチングも、本能が喜ぶことですから。

香りで旭川を盛り上げる

——JBFにはどうして参加したんですか?

早川 2019年に、旭川市がユネスコのデザイン都市に認定されたんです。それを知って、「嗅覚は五感のひとつだし、香りをブレンドしてつくるのもデザインのひとつなんじゃないか」って。旭川市を香りで盛り上げるお手伝いができないかな、と思ってたときに旭川市の担当の方からのご紹介でJBFを知り、勉強のために参加しました。

——早川さんは、旭川市の素材を使った香りも開発されていますよね。

早川 「はぐりら」といって、旭川市のアカエゾマツの香りをベースにいろいろな植物を組み合わせた森のアロマです。

hagurira全体

——開発のきっかけは何だったんですか?

早川 「香りの街」と呼ばれるフランスのグラース地方に行ったとき、自然の豊かなところや雰囲気が北海道に似ているな、と感じたんです。それで、地元の自然を使って何かアロマを作ろうと思いたちました。

——社名も、「香りの街」から取っているんですね。それで、すぐに結果は出せた?

早川 いえ、そこからが大変で……。旭川は広葉樹を使った木工の町なので、最初は広葉樹でアロマを作るつもりだったんです。広葉樹のアロマは世の中にもないし、すごく意気込んだんですが、香りが出せなかったんですよ。それで、トドマツとアカエゾマツに絞ったんですが、たくさん精油がとれるトドマツが隣町の町おこしに使われていることがわかって(苦笑)。

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——隣町を盛り上げることになる(笑)。

早川 困りました。でも、アカエゾマツは「森の女神」って呼ばれているんです。私の店も女性ばかりの店ですし、これも何かのご縁だなと思って、他の植物と組み合わせてアロマを作ることにしました。それで着想から4年、ようやく完成して。いまは5種類の香りができました。

——「はぐりら」を多くの人に嗅いでもらって、癒し効果を感じてほしいですね!

早川 はい。グラースはどこからともなくいい香りがしてきて、アロマが日常の中に溶け込んでいました。旭川も、ぜひそんな町にしていきたい。それで、来るたびに人が癒やされていったら最高ですよね。

早川舞
グラース株式会社 代表取締役

ストレスでできた肌荒れがラベンダーを使用した手づくりコスメで改善したことや、香りで心が軽くなったことをきっかけにアロマテラピーに興味を持ち、東京・札幌のスクールなどで学び資格を取得。2012年にたくさんの人々にアロマテラピーを通じて喜びや幸せ、癒しを提供したいと思いグラース株式会社を設立。現在は3名のスタッフとサロンやスクール、ショップを運営。店名の「グラース」は南フランスの天然香水の都。実際に訪れた時、自然が豊かで北海道とよく似ていると感じ、地元の自然を生かして香りをつくりたいと思うようになり、「はぐりら〜Hug&Relax〜」を開発。森の女神といわれる北海道の針葉樹、アカエゾマツの枝葉から抽出した精油をベースに、さまざまな香りのブレンドを創出している。
https://grasse-aroma.com/

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