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JBFな人たち #6 高山英一郎、高山香織(株式会社高山活版社)

JAPAN BRAND FESTIVALにかかわる人たちは、一体どんな想いを持ってものづくりやビジネスをやっているのか? JBFに入って良かったことは何か?当事者たちにインタビューしてきました。
第6回目は、大分でもっとも長い歴史を持つ印刷会社・株式会社高山活版社代表取締役社長の高山英一郎さん。そして、同社で商品開発を担う姉の香織さんのお二人。老舗印刷所を変えたキーワードは、「活版印刷」と「デザイン経営」……あと「サウナ」。

姉が雷に打たれた日

——「高山活版社」って、渋くてカッコいい名前ですねぇ。

高山英一郎(以下、英一郎) ありがとうございます。創業110年の、大分県でもっとも歴史ある印刷会社なんです。でも、働きはじめた頃は周りの印刷会社がカタカナの名前ばっかりで、うちだけ古臭くて嫌だなと思ってたんですよ。社長だった父に「社名を変えたい」と言ったこともあるくらいで。そうしたら「オレも若い頃は同じことを考えたけど、社名を変えるつもりはない。今にわかるから」って言われて。

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——それで、わかりましたか?

英一郎 5年前から、社名にもある「活版印刷」を復活させたんです。「活版印刷」は、鉛などでできた「活字」と呼ばれる文字をひとつずつ組み合わせて版を作り、ハンコの原理で凸面にインキを乗せる古い印刷技法。いまでは、その独特の質感が再評価されています。

そして、2014年にデッドスペースになっていた社屋の2階に活版印刷の見学や体験が可能なスペース『高山活版室』を開いたり、2015年には活版印刷によるオリジナルステーショナリー『TAKAYAMA LETTERPRESS』、2019年には遊び心を刺激するポストカードや名刺ケースの『PLAYFUL』などを発表しました。こうして活版を打ち出している今は、「高山活版社という社名を変えなくてよかった」と思うようになりました。

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——すごく新しい挑戦をしていますよね! そのきっかけが昔の技術であるっていうのも面白いです。

高山香織(以下、香織) 私たちの売り上げの9割以上は、地元で昔からお付き合いのあるお客様の事務用印刷物や冠婚葬祭関連の印刷物。それを、「オフセット印刷」と呼ばれる手法で印刷しています。

私たちのオフセット印刷は最新鋭のものではないし、ネットなどで注文できるいわゆる「ネット印刷」はどんどん便利に、技術も進化している。そして、印刷業界はずっと「斜陽産業」と呼ばれています。つまり、放っておくとどんどん下を向いてしまうような心境だったんです。でも、初めてプラテンという種類の活版印刷機が動くのを見た時に、大袈裟じゃなく雷みたいに打たれたような感覚に陥ったんですよ。「活版印刷って面白い!」と思ったのはその時でした。

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——雷ってすごいインパクトですね。香織さんが商品開発を担当しているのは、そういう理由でしたか。

香織 おかげで、それまで縁のなかったようなデザイナーさんやクリエイターさんが私たちに興味を持ってくれた。つながりができると、私たちにはないアイデアも生まれる。もちろん活版印刷だけで食べていくことはできないけど、改めて仕事の楽しさを感じたし、活版印刷を復活させることができて本当によかったです。

「デザイン経営」が社員の声を引き出した

——コロナで打撃を受ける企業も多い中、高山活版社はいかがですか?

英一郎 いやー、大変ですよ。私たちも昨年はコロナの影響をもろに受けて、最悪だったときは、通常の半分以下に売り上げが落ち込みましたから。

ただ、そういうときにロフトワーク・林千晶さんの「デザイン経営」に関する講演を聞いたので、とても共感できました。それで今、デザイン経営を通じてもう一度高山活版社を成長させようと会社全体で導入に取り組んでいます。

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——「デザイン経営」を導入してみて、いかがですか?

英一郎 導入の真っ最中なので、正直キツいです(笑)。

香織 でも、2週間くらい実際にロフトワークの方が来てくださったんですよ。一緒に顔を突き合わせてあれこれ議論するのはすごく勉強になるし、楽しいです。

——具体的にはどんなことをしているんですか?

英一郎 他社との差別化になるような企業の価値を言語化し、行動に移すという作業で、今は会社のミッション・ステートメントや提供価値をブラッシュアップしています。これまでのように幹部だけで考えてトップダウンで決めてしまうのではなく、全員が時間を使って、ボトムアップで決めていく。その実感があるからか、社員もずいぶん変わりましたよ。

物静かな50代の社員が、朝から大きな声で挨拶してくれたりして。やっぱり、長く働いていると「なぜこの仕事をしているのか」とか考えなくなるじゃないですか。でも「自分はこんなことが好きで、だからここにいるんだ」と再認識することは大切です。社員を見てもそう思うし、自分自身も実感しています。

高山活版社は、
大分でいちばん〇〇い
文具の印刷屋さんです。

いきなりですが質問です。〇〇には、何が入るでしょうか?
おもしろい? 遠い? あったかい? ゆるい?(ある意味どれも当たってる)
ただ、いちばん知って欲しいのは「古くてあたらしい」かもしれません。

私たちの創業は、1910年(明治43年)。
社名のとおり、活版印刷機を自動・手動ふくめ3台ご用意。
本社内に体験型の工房「高山活版室」を設け、
クリエイターとのものづくりも、前のめりで行なっています。

でも、それだけでなく。オフセットおよびオンデマンド機による
事務用伝票などの文具、婚礼関係の印刷物も制作(むしろこっちが主流)
さまざまなご要望をくみ取り、きめ細かくお応えしています。

そう、新旧の機械がひとつの工場内にあり、
両方を駆使した印刷物を、小ロットから対応できるのは、
私たちならではの、得意なところかもしれません。

100年以上もの間、ここ大分の地に根を張り、文具を作ってきたからこそできること。
古さとあたらしさが寄り添っている環境が、整っているからこそできること。

あなたと、いっしょに考えていきたいです。

高山活版社発「サウナ用ノート」?

——英一郎さん自身がやりたいことも決まりましたか?

英一郎 そうですね、新しいステートメントやミッションの浸透や、商品開発などやるべきことはたくさんあります。ただ個人的には、サウナグッズとか作りたいですね(笑)。

——サウナーなんですか!?

英一郎 熱いサウナと冷たい水風呂、外気浴を繰り返して、出てから麻婆豆腐を食べてビールを流し込む。これがもう、言葉に表せないくらい最高なんですよ。一人でこんなに楽しい時間が過ごせるなんて、この歳になってはじめて知りました。
今では、出張するときも「行きたいサウナ」からホテルを決めるくらいハマりました。

——まさに“ととのって”いるんですね…。サウナ×印刷は、すごく面白そうですね。

英一郎 サウナって自分と向き合う時間でもあるので、あの中だからこそ書き留めたいことや、読みたいものがあると思うんですよ。耐水性のある素材もあるし、それでノートを作ったり、何かを印刷したり……夢が広がります。

香織 それなら、サウナの中でも書けるペンやインクも一緒に商品開発しないとね(笑)。

高山 英一郎
株式会社高山活版社 代表取締役社長

1979年大分県生まれ。妻、娘、ダウン症の息子の四人家族。2002年大学卒業を機に地元大分に戻り高山活版社へ入社し、2014年社長に就任。2015年活版印刷機を買い戻したことでデザイナーやクリエイターとの協業する仕事を増やし、モノづくりの面白さを再認識。2016年熊本大分地震を機に、オリジナル防災用品あったか銀紙をデザイナーと開発。現在全国展開している量販にて販売に至る。商品の仕上げ作業には障がい者就労支援施設に力を借り、息子がいつか社内で働ける場を作る際の参考にもしている。

高山 香織
株式会社高山活版社 総務・営業部 所属『TAKAYAMA LETTERPRESS』担当

1975年大分県生まれ。大学では英文学を専攻し、卒業後は養護学校や知的障がいを持つ方の施設に勤務。その後大分県サッカーワールドカップ交流プラザの臨時職員や旅行用品会社の販売員などを経て、2006年に高山活版社へ入社。2014年に高山活版社が復活させた活版印刷に出会い、人生が変わる。同年に活版印刷の体験スペース『高山活版室』を社員と共に作り上げ、活版印刷のオリジナルステーショナリーブランド『TAKAYAMA LETTERPRESS』を開発。現在では8アイテムを西日本のギャラリーや雑貨店10店舗で販売。地方の小さな印刷会社の可能性を信じて、奮闘する日々。会ってみたい人、やってみたいことがたくさんある。
http://takayama-print.main.jp/


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