見出し画像

AI時代 「俺 勉強する意味あるのかな」息子の問い

ChatGPTの衝撃とともに明けた2023年。
一時の熱狂加熱状態からは抜けたものの、飽きやすい日本のメディアですらまだまだ絶賛報道中。

「ChatGPT」の文字を見ない日はありません。

私にとっても、実に衝撃的な出会いでした。

使えば使うほどに怖くなっていったChatGPT

昨年、海外トレンドに明るいママ友に教えてもらったのがChatGPTとの最初の出会いでした。

初めの頃は、ほとんど翻訳ツールみたいな使い方をしていたので、その凄さの1000分の1も理解していませんでしたが、使えば使うほど、その凄さがわかり、徐々に怖くなっていきました。

コンサルタントが何十時間もかけてやるようなアウトプットも、コンシェルジュが何年もかけて習得したステキチョイスの提案も、ものの数秒でそれなりの答えを叩き出してくれる。

回答の精度で言えば、そんなにすごいものばかりではないけれど、色々な角度から何度もして学ばせればこちらもあっと驚くような回答をくれます。
それにかかる時間と人間が介入する場合の時給換算をすれば、どちらが良いかなんて、経営目線で見れば一目瞭然です。

これまで2045年に起こると言われてきたシンギュラリティ(AIが人間の脳を凌駕し、あらゆるシーンで機械が人間を代替する時代)。
あと20年のうちに準備して…なんてのんきなことを言っていたら、
すでに喉元にギラリと光る刃が突きつけられていたことにほぼ全労働人口が気づいてしまったのです。

息子から投げかけられた「俺、勉強する意味ある?」

小さい頃から勉強好きな息子は、親があれこれ言わなくても勝手に勉強する子でした。(手のかからない子でありがたや…)


しかし彼がChatGPTを使った後に感じたのは、言いようのない無力感だったそうです。

「俺の1億倍賢くて計算早くて正確じゃん
俺、勉強する意味、ある?」

と。

まるで
「計算機で計算したら一瞬なのに、一生懸命5ケタ×5ケタの掛け算を地道にひっ算で解いている」
ような気分になったのだとか。

人が何万年もかけて解く計算を数時間でやってのけるスーパーコンピューターと、世界中の莫大な情報から絶えず学び進化を続けるAI。

この2つを使えば、人間が考えるよりもずっと早く正確に、より良い発見ができるはず。なのにわざわざそこに人間が介入して研究することに何の意味があるのだろう、ということです。

数学や物理が大好きで、5年前から、東大で量子物理学を専攻している家庭教師の先生(当初は大学生、今は院生です)との時間を、学校よりもずっと楽しみにしている息子。

「絶対に四次元の謎を解き明かしたい!」

この目標を小学校の頃からずっと持ってきました。

それなのに、自分が一生かけて研究したいと思っていたようなことを、もしかしたら人間よりずっと早く解いてしまうかもしれないAIの登場に、期待半分、脅威半分。で、今は脅威の方が強く出てしまっているようです。
 

息子の性格はというと
お年頃だというのに、服もこだわらず「着られれば何でもいい」
学校に遅刻したって、先生に叱られたって、いっさい拘泥しない彼。
そんな「ひょうひょう」という言葉がぴったりの彼にとっても、かなりの衝撃となりました。

「エンジニアも要らなくなるんじゃない?」

それに最近息子は、コーディングにも興味を持ち、幾つかのコードを書けるようになってきていました。

覚えた技術で小さなゲームやサイトを作っては家族や友達を楽しませてくれていた息子。

覚えたばっかりのコードを使いたいがために作られたものなので、中身はそんな自慢できるようなものではないのですが、なんか中学生の彼らしいおまぬけな感じとか、遊び心のある感じが散りばめられていて、親バカですが愛おしいものを作るんですよこれが。

一方、(現状の精度は私にはわかりませんが)、コードだって一瞬で出してくれちゃうChatGPT。

そんなにすぐではないと思うけれど、いずれは研究者も、エンジニアも、今ほどは必要なくなる。

「この知識、あとちょっとしたら使えなくなる可能性大だけど、とりあえず勉強しときな〜」

なんて言われてやる気になる子、いるはずないですよね。


「別に勉強は嫌いじゃないから続けるけれど、趣味みたいなものに過ぎなくなるんじゃないか、と思ってる」
と、彼は言いました。

人間にしかできないことを磨こう

「勉強する」ということへの猜疑心を持った彼に私が伝えたのは3つでした。

構想して創りあげる力をつける
人の心の機微に思い至る力をつける
直感力を磨く

ということでした。

つまり、人間にしかできないことを徹底して磨くということです。

構想して創りあげる力をつける

どんなに情報処理能力が早くて正確でも、
「この社会にどんなモノ(思想や行動、サービスなど)が必要で、それを作るためにどんな行動を取れば良いか」
は、人間にしか想像/創造できないから。


こんなことできたらいいな→実際に行動してみる


最近彼は、リュックサックに取り付ける、傘ホルダーを3Dプリンターで作って、学校のファンドレイジングイベントで入賞したのですが、それをまず「商品化→売る」までの一連をやってみると宣言していました。

そうそう。どんな小さなことでもいいから、ひとつ何かやってごらん!

人の心の機微に思い至る力をつける

昨日と今日、今日と明日。

そんな短いスパンでは、目を凝らしても気付くことはほとんどできないのですが、長い目で見ると確実に人々の心には変化が起こっています。

不況、大震災、気候変動、多様性へのムーブメント、コロナ
社会に長く生きていると、人々の人生観に確実に大きな影響を及ぼす出来事がおこります。

自分の属性に当てはめてみると、この二十年でたとえば…

(特に女性にとっての)幸せの定義が多様化しました
有名な大企業に勤めるのが成功の証という価値観が変わりました
日本人や日本企業は世界ですごいと思われている、という感覚が薄れました
常時ネットを介して”繋がっている”のが当たり前になりました
物理的にその場にいなくても当たり前に仕事ができるようになりました

ほんの少し書き出しただけでも、猛烈な変化です。

いつまでも、自分の当たり前が社会の当たり前だと思っていたら、あっという間に化石になります。

テクノロジーがどんなに変化しても、社会を動かすのは「人の心」です。

「今この状況に置かれた人は、何を幸せと思い、何を痛みと感じているのかな」

この想像力に長けた方はきっと、政治でも経済でもテクノロジーの世界でも活躍するはずです。

彼の通うインターナショナルスクールは、多様なようでいて多様ではありません。確かに、人種や宗教、考え方などで言えば多様なのですが、こと家庭という面で見れば、皆両親ともに大卒、一様に教育熱心、今の学校の学費を支払うことのできる家庭ばかりです。


自分の周りだけを見てそれが世の中すべてだと思わないように、ね。

直感力を磨く

出会った瞬間に脳の最も原始的な部分に訴える直感
「この人と関わるな」みたいな危険信号に近いものです。

残念ながら機械は
「この人は嘘つきだ」
「サイコパスだ」
などと教えてはくれません。


私は人の運はすごく良い方だと思っていますが(ビンゴも宝くじも当たったこと1度もありませんが)それでも人生40年生きていると、
「この人とはマジで出会うべきじゃなかった」
と思うくらい強烈な人がいるものです笑

まぁ、そうゆう人も何年か経つと笑い話に変えられるようになるものですが、たいていそうゆう人と初めて会った時、実は脳の中で危険信号が鳴っていたのです。


「いや、話せば分かるでしょ」
「でも、仕事上関わらなきゃならないし」
てな具合に、脳からのありがたい危険信号を無視して、痛い目を見た経験がありますw


でもその逆も然り。
出会った瞬間のビビッとくる感じ。
高校・大学の親友とは、初めて会った瞬間に「あ、私この子と超仲良くなるな」と直感がありました。


機械や数値で測れない、言葉ですら言い表せないこの本能からくる直感。
ちょっとスピリチュアルっぽいかもしれませんが、こうした直感を磨き、力にしたものを磨き、より良い選択をできるようにすべきと感じました。


この問いには正解も不正解もないけれど

突然やってきたこのAIの大波。

AIの海にある日突然放り込まれ、何が正解かわからないまま、あっちへこっちへもがいてみたり、「いや、溺れてなんていない」と誤魔化してみたり、色々しました。

だけど、AIだって人間が作り出した情報を食べて賢くなっています。

5年、10年先にどんな未来が待っているのか、今はまだ言葉にもなっていない兆しを捉え、形にしていくことはできません。

だからこそそこに人間がしっかりと介在してあげる。
機会が気持ちよくどんどん賢くなって、人間をサポートできるように、人間がその知性でサポートをする。


息子には、この激動の時代に生まれて悩める青春を過ごすことができることをラッキーと捉え、大きくなってほしいと切に願います。

この記事が参加している募集

物理がすき

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?