「種の保存」発言と『書店トイレ侵入』からみるマイノリティ問題
先日、LGBT理解増進法案の自民会合で行われたセクシャルマイノリティへの差別発言。同時期に発生した『「気持ちが女性だから」として大型書店の女性トイレに侵入して現行犯逮捕された』件。これらは別問題にもかかわらず、この2つを比較し大きく世論が混乱しています。
今回はこの件を踏まえた、マイノリティ問題における『主語が大きくなる』現象について考えます。
『種の保存』『道徳的に許されない』発言
「(LGBTQ+は)種の保存に背く」
「道徳的に許されない」
これらの差別発言は、LGBT理解増進法案の自民会合にて起こりました。
その中でも暗にトランスジェンダーの人たちを否定する発言が、波紋を呼んでいます。
「男性が『心が女性』として(スポーツで)女子競技に参加するようなばかげたことがたくさんおきている」
この発言は差別発言であり許されるものではないのですが、日本の性犯罪の悪質性も後押しして、賛否が分かれるものとなりました。
書店トイレ侵入騒動
北海道豊平市の大型書店にて「気持ちが女性だから」と女性トイレを使用していた方が、「正当事由なく女性トイレに入った」として現行犯逮捕されました。
なお、この件は掲載元であるYahoo!ニュースが記事を削除しており、事実確認が取れない状況です。
一方で、当該事件が自民会合での発言の直後に起こったことから、一部で「これだから自称LGBTは信用できない」「性自認ではなく医師から認められてなければだめだ」といった声が上がりました。
しかし、これらの問題は全くの別問題です。
マイノリティ問題は主語が大きくなりがち
『種の保存』発言と、書店トイレ侵入騒動は、全く違う人物を指しているにも関わらず「これだからLGBTは〜」という論が展開されています。
これは他のマイノリティにおいても同じような現象が起きています。
●第一線で活躍するゲイのダンサーやメイクアップアーティストたちがメディアで取り上げられる
→『ゲイは感性が鋭い』
●「〇〇人男性が逮捕された」と報じられると
→『これだから外国人は危険だ』
これらは属性がそうさせているのではなく、本人の行いによって評価されたものです。
●第一線で活躍するゲイのダンサーやメイクアップアーティストたち
→ダンスやメイクの技術が優れた人
(性指向はその人の要素のひとつであって、ゲイだからダンスやメイクが上達したわけではない)
● 「〇〇人男性が逮捕された」
→犯罪を犯した人の国籍が日本でなかった、というだけ
(〇〇人だから犯罪を犯したわけではない)
その人の言動と性質は直結しているわけではなく、『要素のひとつ』でしかありません。
あくまでも『人類すべてのうちの1人』
LGBTQ+などの社会的少数者は、その数が少なく見えることから一部の人の言動が『総意』のように扱われやすい性質を持っています。
しかし、実際は人自体の性質は属性では推し量ることはできません。『少ない母数に属するなかの1』にみえても、『約1億分の1』『約76億人分の1』に過ぎないのです。
良い行い、悪い行いをした人は属性ではなく、『その人』として評価をするべきでしょつ。その人が属するコミュニケティや国などをまとめて差別していい理由にはなりません。
しかし、メディアはニュースをセンセーショナルに伝えるために、何か特徴的な属性があるとそれを全面に押し出してくるのです。
情報の受け手も、メディアの性質を踏まえた上で、事実の尾鰭のついた情報を分けて考える力を身につけることが問われています。
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