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1. 北欧の義務教育~事例紹介

文責:内田真生

本記事は、全4回連載『北欧の義務教育~事例紹介』のうちの一つです。

はじめに~事例紹介をしたい理由

2019年以降、世界的なコロナウイルスというパンデミックに襲われた私たちは、「ニューノーマル」と言われる時代に生きることになった。そして、人生の歩み方を再考すると共に、これまで以上にICTを使って、人とコミュニケーションを取る必要性が生まれた。インターネット上で活動する中で、多種多様な人々と協働する経験をした人も増えただろう。これまで理想とされてきたスキルや能力を実際に使わなければならない環境に強制的におかれることになったのだ。そして、不安定で先の見えない複雑化していくと思われる社会を生き抜く力をつけるため、ICTを使いこなし、多様な文化と価値観の人々と協力し合いながらイノベーティブかつクリエイティブに何かをつくりあげていくことが、子供たちに期待されている。そして、そのための環境を構築していくことが、大人たちの現在の課題となっている。

これまで、子供たちが将来のために獲得すべきスキルやコンピテンシーとして、21世紀型スキル(21st century skills)がATCS21S Secretariat[1]、Partnership for 21st Century Learning (now Battelle for Kids)[2](図1-1)、OECD[3]等の国際的団体により定義・フレームワーク化され、最適な教育方法が検討されてきた[4]。

スライド1

図1-1. Battelle for Kidsによる21世紀型スキルのフレームワーク[5]
(筆者による日本語訳追加)

ICTを利用した学習やアクティブラーニングの実践が、子供たちにとって有益な教育方法とされ、既に導入している国、地域、学校も多い。実際、アクティブラーニングは、コミュニケーションスキルと協働力、そしてクリエイティビティの向上に効果がある、と複数の報告がなされている[6][7]。

日本でも、多くの学校や教育関係者が、その知恵、経験、学習成果を駆使し、子ども達のための「ベストソリューション」を求め、日々活動している。それらは事例として、日経BP社「教育とICT online(https://project.nikkeibp.co.jp/pc/)」や東洋経済新聞社「education x ICT」等の一般誌をはじめとする様々なメディアで紹介されている。それら事例は、他の多くの学校や教育関係者の教授法に関するアイディアの参考になっているのではないだろうか。

今回、デンマークフィンランド、そしてエストニア義務教育(初等・前期中等教育)向けの「ICT学習環境の整備の状況」と「アクティブラーニングの実践に関する事例」を調査する機会を得た。その内容は興味深く、上記の事例同様、日本の関係者また保護者に向けて、有益な知見となるのではないかと考え、知見共有として本稿の執筆を決めた。

なぜ、3回の知見共有なのか?

次章から「ICT学習環境の整備」、「アクティブラーニングの実践に関する事例」の2つのテーマを3回に分けて紹介する。

1. ICT学習環境を整備するとは?
デンマークとエストニアが、義務教育におけるICTを利用した学習環境をどのように整備して行き、どのような学習方法やコンテンツを利用しているのかを紹介する。教育におけるICTのあり方や教育そのものに対する北欧の教育者からのメッセ―ジも併せて紹介したい。

2. アクティブラーニングの実践方法とは?
デンマークとフィンランドで導入されているアクティブラーニングの実践事例を紹介する。どのような方法で、どのようなに実践しているのか、教育者のメッセージと共にお伝えしたい。

3. 北欧の義務教育とは?
最後に、デンマークに住む日本人である筆者がどのように感じ、何を考えたのか、自身のふりかえり(Reflection)を共有し、まとめとしたい。

本稿を含め、全4回の投稿にお付き合いいただけると幸いである。

次回のテーマは「2.ICT学習環境を整備するとは?」です。
義務教育における学習環境として、ICTをどのように導入し、どのように使用しているのか、デンマークとエストニアの取組みについて紹介します。

参考文献

[1] ATC21S. About the Project. http://www.atc21s.org/
[2] Battelle for Kids. Frameworks & Resources. https://www.battelleforkids.org/networks/p21/frameworks-resources
[3] Chernyshenko, O., Kankaraš, M. & Drasgow, F. (2018), Social and emotional skills for student success and well-being: Conceptual framework for the OECD study on social and emotional skills, OECD Education Working Papers, No. 173. OECD Publishing, Paris. https://www.oecd-ilibrary.org/education/social-and-emotional-skills-for-student-success-and-well-being_db1d8e59-en
[4] Global Partnership for Education. (2020). 21st century skills: What potential role for the Global Partnership for Education?. https://www.globalpartnership.org/content/21st-century-skills-what-potential-role-global-partnership-education
[5] Battelle for Kids. Framework for 21st Century Learning. http://static.battelleforkids.org/documents/p21/P21_Framework_Brief.pdf
[6] Nielsen, J., Du, X., & Kolmos, A. (2010). Innovative application of a new PBL model to interdisciplinary and intercultural projects. International Journal of Electrical Engineering Education.
[7] Christiansen, E. T., Kuure, L., Mørch, A., & Lindström, B. (Eds.) (2013). PROBLEM-BASED LEARNING FOR THE 21st CENTURY: New Practices and Learning Environments (1 ed.). Aalborg Universitetsforlag.

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