デンマークの障がい者雇用
レアスコウ華恵ソフィエ / 安岡美佳
2017年7月
高福祉国家である北欧・デンマークでは、企業に障がい者を雇用する義務や法定雇用率等は定められておりません。近年社会保障費削減の動きもあり、障がい者の就労を促すための政策は見られますが、 義務化には至っていないのが現状です。
デンマークの実際の企業における障がい者雇用の動きをみると、日本とは少々様相が異なっています。特に興味深いのは、法定雇用率を達成する為だけに企業内で障がい者に適した業務を探す、または障がい者のニーズに応じた設備や環境を整えるなどと言ったアプローチとは全く異なる「dis-ability」(障がい)を「special-ability」(特別な能力)と捉える新しいビジネス形態が存在することがわかりました。
本レポートでは、そのようなデンマークでの障がい者雇用促進の為、一般企業とビジネス展開を行うソーシャルビジネス事例を調査し、報告書としてまとめています。調査は、収益を十分にあげ堅調な成長を見せるソーシャルビジネス企業が対象となっています。
はじめに
北 欧 ・デンマークに 、高福祉国家のイメージを持つ方は少なくないのではないだろうか 。国民は高い税を納め、手厚い福祉を受けられるというものだ 。 デンマークでは医療費や 、公立の小学校から大学院までの教育費 が無料というのは聞 いたことがある人もいるだろう 。 確かにそういった一 面がある一方 で 、近年はデンマークでも社会保障費の削減のための政策が進められているのも事実だ。
そんなデンマークでは、障がい者に対しても様々なサポートが行われてきた。福祉として国も補助金などのサポートを行っているが、障がい者が積極的に社会参加できるような仕組みづくりも進められてきた。障がい者雇用の分野では企業へのインセンティブ創出も進められ、企業(CSR)の社会的責任、もしくはビジネスとして理にかなうものとして促進されている。
本稿では、障がい者の雇用に焦点を当て、国や自治体のサポート、そして企業の取り組みで、いかに障がい者に雇用の機会が与えられているかを調査した。オンライン調査に加え、労働省、障がい者雇用を促進する企業、ソーシャル・ビジネスに詳しい組織へのインタビューを行った。
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