吉田誠一郎@クレド

クレドインスティテュート代表取締役。日本国内やアジア地域の企業・自治体・教育機関などで…

吉田誠一郎@クレド

クレドインスティテュート代表取締役。日本国内やアジア地域の企業・自治体・教育機関などで企業理念/クレドの開発、推進、ブランディングをサポートするコンサルティングを展開する会社です。2004年設立。https://j-credo.com/

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最近の記事

2021年の理念① 「利他」

2021年に入ると、クレド企業の皆さんから「今年はどんなことに気をつけて社内に情報発信すべきか?」「浸透の新しい施策は?」といった質問を受けます。 それについては、年末年始にかけて読んだ書籍から、ヒントを得た話をしています。以下の書籍は参考にさせて頂いた本です。 ・料理と利他 (土井善晴、中島岳志著) ・人間復興の経済Small is Beautiful (EFシューマッハー著) ・汚穢(おわい)と禁忌 (メアリ・ダグラス著)  ・人新世の「資本論」 (斉藤幸平著)  ・

    • クレドは「資格」である

      ある企業の従業員が「クレドは憲法のようなものですね」と言っています。 誤解をおそれず言うと、それは「違う」のです。            ともすると、「会社の規則として従業員が従うのがクレド」という考えが 広まっている組織では、まさに法律で縛る憲法のような感じなのでしょう。 しかし、クレドは金太郎あめのように統一され画一的な従業員を育成するためのツールではありません。 逆に言えば、より自由に思考し行動できるために与えられた「資格」と考えたいのです。それは数年前に大手製薬

      • 法律とグッドマナー

        コロナ禍の今年、飛行機に乗る際にマスクをする・しないで揉めて出発が遅れたというニュースがありました。 また数年前には足の不自由な乗客が飛行機のタラップ(階段)を乗降する際に、乗務員が「法律違反」だとして介助を拒否。結果その乗客は自身の腕を使い自力で乗降することになった、という”事件”がありました。 どちらも「法律」と「グッドマナー(良識)」を比べ「法律」や「社内規定」が優先されたケースです。 本件は乗客にも、また航空会社や乗務員にも何とかして「グッドマナーが実践できなか

        • 多様な価値観の社員を結びつける方法

          在宅ワーク、様々な働き方、若い世代とベテランとの仕事観のギャップ…など、コロナ禍も相まって日本の企業では「多様化」がキーワードです。 しかしクレド実践企業であるジョンソン&ジョンソン(JNJ)のような海外企業では、昔から様々な国籍の人たちが集い、国毎に違う法律や文化、価値観の元で仕事をしています。つまり今の日本の先取りを数十年前から実施していると考えていいでしょう。 そういった多様な価値観を持った従業員にどうしたら統一感を持って企業の目的であるビジョンやミッションの実現を

        2021年の理念① 「利他」

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        • クレドの作り方
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        記事

          「挑戦」を妨げる要因、とその打破策

          企業理念やクレドには必ずと言っていいほど、「挑戦」「チャレンジ」というキーワードが書かれています。例えば、ユニクロ(ファーストリテイリンググループ)の理念にも価値観(Value)に以下の文章があります。 私たちの価値観 ( Value) お客様の立場に立脚 革新と挑戦 個の尊重、会社と個人の成長 正しさへのこだわり しかし、そうは言っても「挑戦」するという行為は実行が難しいものです。それはなぜか?それは変化を妨げる3つの要素があるからです。 その1「批判:現状の変更を許

          「挑戦」を妨げる要因、とその打破策

          「いじめ」解決法に学ぶクレド浸透

          いじめの問題は洋の東西を問わず起きている残念な社会課題です。 その解決には当然ながら当事者同士、特にいじめをする人を指導するのが一般的ですが、そればかりが解決手法ではないようです。 一昨年お亡くなりになった一橋大学教授の山岸俊男氏は著書『日本の「安心」はなぜ、消えたのか』の中で、いじめを調査された結果、その対処法の一つとして「傍観者」への教育の重要性を挙げています。 詳細はご著書に譲るとして、簡単に解説すると山岸氏は、大多数の「傍観者」を教育し、見て見ぬふりをさせないこ

          「いじめ」解決法に学ぶクレド浸透

          ステークホルダー資本主義の目的

          クレド実践企業であるジョンソン・エンド・ジョンソン始め、当社の多くのクライアント企業(クレド実践企業)では、昨年からアメリカ経済会で喧伝されている「ステークホルダー資本主義」を、もう幾年も前からマネジメントの根幹に据えており、”至極当たり前のことを何故今さら”という感覚を持っています。 11/17日経新聞にも「SDGs経営 コロナ下こそ」との特集記事が掲載され、ステークホルダー資本主義の要請はコロナ禍で一層重くなったと論調しています。ますますこの潮流が顕著になるのは自明の理

          ステークホルダー資本主義の目的

          ジョンソン&ジョンソンに学ぶ”7つ”のクレド実践策

          当社の顧問で医薬品メーカー「ジョンソン・エンド・ジョンソン(以降 JNJ)」でCCO(チーフ・クレドー・オフィサー)を務められた堀尾嘉裕氏に JNJでは、どのようにしてクレドを社内で実践し続けているのでしょうか?と尋ねました。 ☆ちなみにJNJでは、理念やクレドの「浸透 penetrate」という言葉を使わずに「強く実践する strengthen/enhance」という考え方をしています。 堀尾氏は以下の7つの施策を上げていますので、自社の取り組みと比較してみて下さい。

          ジョンソン&ジョンソンに学ぶ”7つ”のクレド実践策

          サーベイは「PDCA」の「P」

          再度問う!なかなかこのタイトルの考え方が浸透しません。 この10、11月は例年「従業員サーベイ(当社ではエンゲージメントサーベイと呼称)」を実施するクライアント企業が多い時期です。が、そこで毎年ご質問を頂くのが、 「サーベイは評価ではないのですか?」 どうしてもサーベイなどは数字が示されるのでチェック「C」、つまり評価や部門リーダーの通信簿だと思えるのです。 確かに「リーダーシップ」に関する設問の点数が低かったらリーダー自身の努力が認められなかった、と愕然とし部下に対

          サーベイは「PDCA」の「P」

          「定義」することの重要性

          企業理念やクレドの推進を担当する皆さんは、当然その「浸透」をミッションに施策を展開したり、研修プログラムを組んだりしています。 しかし、残念ながら担当の方々に「浸透を定義していますか?」と尋ねても、ハッキリとした答えが返って来ないケースが少なくありません。 ジョンソン・エンド・ジョンソン(以下JNJ)では、我が信条(OurCredo)の浸透を次のように定義しています。 全社員がクレドの意味を知り、理解し、認識していて、職場においてクレドの教義を実践するうえで障害となるこ

          「定義」することの重要性

          「課題が無い」からクレドを策定する!

          クレド作成に限らず、何か新しい施策や新しいプロジェクトを会社で実施する際の理由として「何らかの課題があるから、その解決のため」という思考で動くことが一般的です。 課題とは往々にして「顕在化した問題」の場合がほとんどでしょう。 ・顧客から同じ様なケースのクレームが頻発しているから ・従業員の離職が最近続いているから ・納期に関して不安定だと代理店から相談が数多く報告されたから… もちろんそれは正しい理屈ですが、そもそも「課題が無いと新しい施策は始められない」という思考につ

          「課題が無い」からクレドを策定する!

          失敗しない!「クレドの作り方⑤最終」

          「従業員だけに浸透させる」という考えを止める これまで述べてきたように、クレドを開発する際には気を付けるべきポイントが多数あります。ただ単純にトップマネジメントの想いや価値観を言語化すれば事足りるわけではないことがお分かりになったでしょう。 最後に重要なポイントを記して「失敗しない!クレドの作り方」章を締めくくります。 それは「クレドは従業員だけに浸透させればいいのでしょうか?」という問いかけから始まります。どういうことでしょう?一義的には「クレドは従業員に実践してもら

          失敗しない!「クレドの作り方⑤最終」

          【特別編】混迷の「今」のクレドとは

          クレドを作成したい、というIT大手の経営者とミーティングをしました。 このコロナ禍で混迷している時期に、果たして有効な内容のクレドが作れるだろうか?という疑問を持っています。 確かに誰もが確信を持った正しい「解」を持てていないのが、多くの企業現場の実情でしょう。 ここで思い出すのが今年3月のコロナ渦中にドイツのメルケル首相が演説し、直後から支持率がV字回復したという事実です。 彼女は「自分もどうしていいか分からない」と国民に率直に訴え、「これから出す政策は上手く行くか

          【特別編】混迷の「今」のクレドとは

          失敗しない!「クレドの作り方④」

          全従業員を参画させる クレドの作成で重要な5ポイントの内、従業員を参画させることは必須のポイントです。 その最も重要な理由は「作るプロセスが、最大の浸透施策」だからです。 ある大手企業で、新年度4月1日に従業員が朝、出社したら全従業員のデスクにクレドカードが置いてあった。という話を聞いたことがあります。 もちろん、それまで従業員が作成に参画した経緯は一切なく、当然のことながら”いきなり感”をもって受け止められました。 これは全くナンセンスな事例です。クレドを作成した

          失敗しない!「クレドの作り方④」

          失敗しない!「クレドの作り方③」

          クレドは経営者(社長)の意向で作成することが決まるものでしょう。その意向を受けて人事部や経営企画部が主導的役割を果たしプロジェクトチームを組成して動き始めることが一般的です。 しかし、当然ながら順調に行く場面もあり、また立ち往生することもありながら進んで行きます。その過程の中で、実は忘れがちな大きな落とし穴があります。それが「管理職の巻き込み」です。 クレドは、「従業員によるボトムアップで作成」という方向性は間違いではありませんが、最初から最後までそれを貫くと思わぬ失敗を

          失敗しない!「クレドの作り方③」

          【特別編】「褒める」は必要か?自己肯定感を高める工夫

          私たちは、多くの企業で「企業理念やクレド」の開発をサポートをしています。コロナ禍の今春、あるエネルギー関連企業A社で「クレド」を完成させ、現在オンライン教育を取り入れながら全従業員への浸透活動を進めています。 その開発にあたって経営陣やプロジェクトメンバーとかなり突っ込んだ議論をしたのは、「このクレドの価値観には、実践することで”自己肯定感”を従業員が想起できるものにしたい」というものです。 自己肯定感。最近は良く耳にするキーワードです。自分の存在を積極的かつ前向きに評価

          【特別編】「褒める」は必要か?自己肯定感を高める工夫