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探究における生徒の学びはどこにあるのか

(読了にかかる目安:約20分。長!)

こんにちは、Japan Education Lab 代表の古谷です。
4月から高等学校等の新学習指導要領がスタートし早4カ月。コロナが収まってきたかのように思ったら、またまたリバウンドしましたね。”with コロナ”いつまで考えていかないといけないのでしょうか。もどかしいですね。

さて、新学習指導要領では『知識及び技能』『思考力、判断力、表現力等』『学びに向かう力、人間性等』の3つの柱で再整理され、資質・能力をバランスよく育成するために、特に主体的・対話的で深い学びの実現や、指導と評価の一体化が重要視されています。その中で最も注目され、多くの学校で右往左往している様子が散見されるのが新科目の”総合的な探究の時間”です。

総合的な探究の時間。他の探究的な教科も含めて、大きく”探究学習(活動)”と表現され、この学びに対し、多くの企業・団体が『Edtech×探究』であったり『教育旅行×探究』、『科学×探究』などと多くのサービスを展開しています。かくいう僕らも『キャリア教育×探究』と題して事業紹介をしているときも多くあります。

今回は探究学習に焦点をあて、学校としての取り組み、生徒の取り組みがどこに向かっていくのか、一つの授業としてプロジェクトとして、探究学習における”学び”は何があるのか、そんなところを僕なりの観点で述べたいと思います。

キャリア教育に然り、探究学習にも多くの方に関わっていただき、生徒たちの学びを支えるサポーターになってほしいです。


探究学習での学び

まず、前提として探究学習では「課題の設定」→「情報の収集」→「整理・分析」→「まとめ・表現」のプロセスをたどり、各学校・生徒が自由にテーマ(課題)を設定し、学習を進めていきます。

文部科学省「今、求められる力を高める総合的な学習の時間の展開」平成25年

従来の教科学習や総合的な学習との一番の違いは『自分で問いをたてる』ことにあると思います。
与えられたものではなく、自分の興味・関心・疑問から「明らかにしたいこと」等を先に据え置いて、問いをたてます。スパイラルという枠組みの中で一定以上の自由度を、生徒自身で形にしていく探究学習を理想的な学びとするために重要なことを考えてみました。

調べ学習との違い

よく”探究学習”と”調べ学習”は全くの別物であるという話がありますが、全てが異次元なのかと問われると、そうであるとは言い切れない部分もあるように思えます。ただ、探究学習という性質をもつ以上、調べ学習という次元で留まり続けると、従来の学びとの差別化が図れなくなり、「なんのための探究学習なのか」という印象を持ちやすいので、調べ学習も平行しつつ、場面場面で昇華していく必要もあるかと思います。

調べ学習は決められた範囲の中で、ものごとを調べていくので、適切な情報を自分でキャッチアップし、誰が見ても理解できるようにまとめていきます。
そして、探究学習は自分でテーマや課題設定を行い、調査方法と分析方法も根拠をもとに自分で計画を組んでいき、最終的なまとめは課題設定によって形式が異なります。

もし、調べ学習で終わらないようにするのであれば、探究学習と調べ学習の特性を理解することが一つのキーです。ただ、探究学習だから、「調べ学習をしてはいけない」ということはないと思います。一貫して全てがそうなってしまわないようには、しないといけないとは思いますが、探究学習と調べ学習の共通部分も捉え、探究学習全体の計画・デザインをしていくことで、探究学習が調べ学習と遜色ないもので終わることもなくなるでしょう。脱却をしないといけないというイメージよりも、それぞれの持ち味を融合していくイメージです。

調べた先に何を価値にしていくかをみんなで考えていきたいですね。

課題設定の重要性

探究学習の中でも取り分け大事とされているように見えるのが”課題設定”です。これは僕も同感で、生徒たちが課題設定を正面から向き合ってやるかやらないかで探究学習の学びは大きく変わってくるかと思います。

課題設定では多くの思考法を用いて、生徒に取り組んでもらうことができます。ここでは簡単に3つの思考法について紹介します。

システム思考
システム思考とは、「事象・物事がお互いが繋がりあい影響しあっている」全体像を俯瞰的に捉え考えることです。『風が吹けば桶屋が儲かる』これも一つのシステム思考だと言えます。
課題設定を考える際に社会と人々の関係性を見出そうとすれば、社会の変容が数珠つなぎになっている様子から課題設定を考えることができます。

デザイン思考
デザイン思考とは「共感」「定義」「創造」「試作」「テスト」のプロセスを順序的に、そして時には並行的に行っていく思考方法です。(ダイソンの掃除機はこのデザイン思考を土台に開発されたものらしいです。)
探究の入り口でもあるテーマの設計を多くの体験・観察・経験から事象に対して設計していくことで、客観的視点から着眼点を見つけ、課題設定を考えることができます。

アート思考
アート思考とは自分の興味・関心や疑問、好奇心を深掘りしていく思考方法です。システム思考、デザイン思考と大きく画している点としては「まだない答えを主観から創造的に思考する」ことにあります。思考の枠を排除し、思い思いの真っ白なキャンバスに考えたいことをひたすらめぐらせることで、自分だけの解を模索する中で課題設定を考えることができます。

(それぞれの参考になりそうなものを掲載します)

例えば、上記のような思考を課題設定の際に組み込んでいくことで、より実社会に向けた一つの準備として課題設定に取り組むことができます。
また、課題設定により価値をもたらしていくために、課題設定までの過程を生徒同士で共有していくことも大いに活用することができます。
おそらく、共有の時間というのはどこの学校でも探究の時間にやっているかと思いますが、僕が叶えるべきだと思っているのは”風土設計”です。「共有の時間です」と言って生徒たちが共有するのではなく、一つ一つの過程の中で、生徒が自分たちの意思で共有していく。自然とワールドカフェのような風景ができあがっていくのが重要だと思っています。これはキャリア教育にもつながる部分があるのですが、探究学習においても”気づき”が生徒同士の会話の中にたくさん隠されています。テーマの方向性が違ったとしても、観点や価値基準は大きく異なることがほとんどです。そういったことを生徒たちが普段の授業(もしくは授業外)で会話し、共有し、気づいていく。そんな風土が課題設定までに出来ていると、探究学習というものを生徒たちと一緒に創っていく授業に設計できるのではないでしょうか?

プロセスや構造を理解にマージする

(ここの小見出し、良い感じの言葉が思いつかなくて、すんごく気持ち悪い見出しになりました。反省)
話したい内容は基本的に探究学習は”結果”を生徒の中に還すだけに留めるのではなくて、学習プロセスと探究(プロジェクト)の構造も生徒の中に還元していくべきなんじゃないかという話です。探究を一つの学習方略としましょうということですかね。
ただ、現状のスパイラルだとジャンプアップしている側面があり、そうすると、構造の粒が大きすぎて生徒たちに還元しづらいので、僕的にもう少しかみ砕いたプロセスがこんな感じです。

それぞれ、色々とお話したいところもありますが、ポイントとなる部分を一先ず2つ紹介します。まずは『分解/複合、自己解釈』です。
例えば、”フェアトレード”を方向性にして、服のフェアトレードに興味をもった子がいたときに、単なるフェアトレードとはいえ、多くの組み合わせを考えることができます。例えば下記のように。

・フェアトレードから貧困問題に接続する
・フェアトレードからオーガニック農法に接続する
・フェアトレードを推進している企業に注目する
・#whomademyclothesの効果を考える
・アパレル業界の分業による透明性を明らかにする

フェアトレードという言葉を一つのワードとして捉えるのではなく、フェアトレードという世界を分解し、どういう産業と複合できるのか、どういう着地点が考えられるのかを見ていくと、多様な視点を獲得したうえで、自分だけの課題設定に着手することができます。

次に、『多角化』のプロセスです。(多角化は本来ビジネスで用いられる言葉なのですが、良い言葉が思いつかなかったので、ニュアンスが近い言葉として使っています)
⑥で情報収集したもの(材料)をどう調理するのか決めるプロセスがないと、おそらく整理/分析が稚拙なものになるかと思い、自身の課題設定、そして目標設定において適切な調理の仕方を学び、やることを明確にしたうえで、整理/分析のプロセスに入っていくことが必要だと感じました。もしかしたら、生徒によっては整理/分析ではなく、何かプロトタイプを創造するフェーズに移行するべき子がいるかもしれません。なので、多角化というプロセスをきちんと定義することで、ふわっと整理/分析に移行するのではなく、ある種のレシピを自分たちで作成し、「さぁ調理だ」と望むことが出来るので、うまく生徒たちが移行できるかと思います。

さて、この①~⑨は単なるプロセスではありますが、探究を進めていくうえで、「自分が何のためにこれをしているのか」と生徒が認識をすることで、ただ探究をしているに過ぎない状況から、構造を自分の中に理解して落とし込んだ自己調整を図ることができます。
要するに「はい次はこれ」と進めていることでも、自然の流れの中で「気づいたら課題設定をしている」となっているわけでもなく、先生方のサポートの元、「②のフェーズが完了したから、③に行きましょう。また、②で獲得したことは何か認識を整理しよう」と構造の中で探究を進めていき、自分が現在いるプロセスを移行する中で、前のフェーズをきちんと次へと踏襲していく、そんな形で進めることができると、探究という”学習方略”を生徒自身が身に着けていけるかと思います。

また、①~⑨のあと、場合によっては”検証”や”振り返り”という段階が必要になってきます。

探究学習への違和感

さて、ここまでつらつらと探究学習について述べてきましたが、探究学習を先行導入した学校であったり、探究に関する多くの記事、先生方のプレゼンなどを見てきて、なんとなーく違和感を感じる時がありました。
もちろん、生徒主語で探究に取り組まれていることはとても素晴らしくて、目に見える成果云々に関係なく、先生方が学校を生徒を盛り上げていこうという姿が目に見えるのがとてもいいなとは思っています。

「良い学校に必要なことは?」と問われれば、「先生方が学校を楽しんでいること」だと僕は思います。なので、探究という一つの転換によって、先生方が生徒と繋がるきっかけを持ち、教科学習とは違った角度で生徒の成長を感じているのであれば、探究は一つの成功を通っていると思います。

ただ、『探究とはこうあるべきだ』という見えない像・バイアスがかかっているようなところを散見することもあります。学習指導要領を始め、多くの事例、口コミによって広がっている探究の姿はあれど、やはり一度学校ごとに定義づけをした方が、より”学校でやる探究”という観点での意義が強くなるかと思います。ここでは、僕が感じている見えない像・バイアスに対するいくつかの提起を挙げます。

VUCAから始めると壮大すぎないか

コロナ前からしばしば耳にするVUCA。読者の皆さんもVUCAという言葉は耳にせずとも、VUCAに関わる言葉は聞いたことがあるかもしれません。

VUCA(ブーカ)とは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)という4つのキーワードの頭文字を取った言葉で、変化が激しく、あらやるものを取り巻く環境が複雑性を増し、想定外の事象が発生する将来予測が困難な状態を指します。

リクルートマネジメントソリューションズのサイトより

文科省のサイトにも「変化の激しい社会に対応して、探究的な見方・考え方を働かせ~~」と書かれています。それゆえか、探究の導入時にVUCA的な危機をみせる学校がありました。もちろん、それは正しいですし、危機からやる気を見出すこともあります。(テスト前的な)
しかし、それは探究を進める上でのスタートラインを明示できているのでしょうか?
せっかくの探究だからこそ、もっと生徒に近いところから共感・理解を生むところから始めるべきなんじゃないかなと思っています。

SDGsにも似たような印象を持っています。SDGsもぱっとみは生徒たちにとって遠い世界でもあります。なので、個人的には『探究をしよう⇒SDGsについてやろう』だと難しいと思っています。多くの事象や課題をこまごまと見ていって、初めて身近にSDGsのゴールにつながる発見があります。なので、道理としてSDGsを核に扱うのは二次的、三次的なものになるかと思います。

例えば、SDGsのジェンダー問題を扱うときに、最初からSDGsを見せて、色々と考えさせるのではなく、最初は日本の男女共同参画社会基本法から入って、男性比率の多い職業(政治家、IT、教師など)や男女に関するアンコンシャスバイアスから扱って、途中でSDGsを通っていく方が、生徒たちが共感を持ってからのSDGsになるので、より身近なものとしてSDGsを捉え、探究を進めていけるかと思う次第です。

「think globally act locally」で全然良いかと思いますが、もう一つ付け加えて、「feel around think globally act locally」といった感覚です。
ここらへんも、もっともっとつめていきたいですね。ご意見ください。

達成目標は明瞭になっているか

探究学習は個別最適な学び、自己調整学習の最もたる学習だと思います。課題設定がそれぞれ違えば、学習目標は大きく異なります。
そんななか、探究に関する外部サービスや外部教材はここ数年で一気に増えました。しかし、多くの学校では、うまく生徒たちの目標と整合性のとれたものを導入することが出来ているのでしょうか。

僕らも学校を支える外部団体として、ずっと付き合っていく課題なのですが、ジェネラルな形で授業に生徒に寄り添った形の教材を作りきることはかなり難しいです。(ただの枠だけのワークシートでいいなら別ですが)
これが英語とかであれば、「スピーキングとリーディングに特化させた授業で、生徒たちにこのラインまで達成してもらいたいから、『PATHWAYS』を使おう」とかになるのですが、探究学習においてもここまで明瞭な目標ができているのでしょうか。

なにもなく探究教材を導入しただけでは、回っているように見えて、回っていない部分が多くあります。これを解消していくには少しでも生徒に沿った授業の設計・目的が大事になります。
生徒たちの探究のファネルと段階設計ができるとベターかなと思います。
下図は探究学習での生徒の状態/ぺルソナの経過と対応する段階的な目標の図です(案)。

Roger Martinのknowledge-funnelを探究になぞらえて改変・思案してみました

こういう部分の研修を教育委員会で実施し、多くの先生方が膝をつき合わせながら、協創していけばいいのにと思うのですが、僕の見えている範囲では実施しているところがなかったです。悩むのは目に見えているのだから、まずはみんなで考える時間をつくれるように出来るといいなと思いました。

”探究”という言葉に囚われすぎていないか

探究学習なんだから当たり前なのですが、僕から見ると”探究”という名称に躍起になりすぎなのでは?と思うときがときたまあります。

教育は先進事例が出れば出るほど、後進はそれに頼りがちになるところがあるかと思います。探究も同じで、『地域×探究』をしたいと思えば、おそらくそういった探究学習に取り組んでいる学校を探して参考にするかと思います。ただ、アプローチは同一でも、生徒から出てくるアウトプットは必ず違くなります。なので、アウトプットまで同一にしようとすると、おそらく生徒たちは苦しくなります。
この章の冒頭にも述べましたが、『探究とはこうあるべきだ』とバイアスはかかっていませんか?探究は生徒にとっても先生にとっても自己調整学習です。探究の入り口、出口が生徒それぞれならば、定義も生徒それぞれです。大枠として探究の概念をつかむのは大事かと思いますが、それを投影しすぎないようにするのが探究を進めていくうえでは非常に大事なことかと思います。

探究学習のゴール設計

教科学習とは違い、具体的な修得内容を明示できない探究学習はどうしても定性的な形でゴールを示す必要があります。そして、基本は学習指導要領に則る形ですかね。

とはいえ、それでゴールを設計できれば苦労することはないので、ここまで書いてきた内容に併せて、ゴールがどのようなものになりえそうか考えました。皆様の参考になれば幸いです。

探究学習のゴールをお話しするうえで、まずは二つの軸で考える必要があるかと思います。一つは時数的なゴール。もう一つは学習的なゴール。教科学習であれば、修得すべき内容が明確なので、ゴールは一つで考えればいいのですが、それとは一線を画している探究学習では、教科学習と同じように学習的な側面でのゴール設計、そして、時間的な幅がある中で何を生徒が実施したらゴールになるのかを考える必要があります。

時数的なゴール

学期末、学年末までという時間制約の中で、大部分の学校が”発表”という形式で修めているかと思いますが、それだけだと、少し勿体ない部分があります。というのは、探究したテーマが「食」だったときに生徒・先生が見る/聞くだけでは形式として正しいのでしょうか?
探究的な学びは、ある種での専門的な学びに繋がっていきます。だからこそ、専門の人に聞いてもらい、アドバイスや感想をもらうべきだと思います。人数が多ければ多いほど、大変なので設計をきちんとしないといけないですが、オンラインで相手方の時間に合わせて生徒が発表を個別で行っていくだけでも十分だと思います。
また、生徒個別で時数のゴールを延長する方法もあります。それが外部団体が主催する大会などへの参加です。
昨今、探究を通り道に生徒が表舞台で輝ける場所は本当に多くあります。ここでは、生徒が学校を通さずに申し込めるものを少し挙げておきます。余裕があれば是非とも利用してほしいなと思います。

学習的なゴール

探究学習のサイクル。それを「終えた=ゴール」ではないと僕は思っています。「まとめた、表現した、終わり。」では、探究という学びに次がなくなり、探究ごとの亀裂が起き、生徒たちが探究してきた意義が損なわれる可能性があります。そうするくらいなら、究極的に「え、これつぎどうしたらいいの」的な『モヤモヤ』で終わってもいいかとさえ思っています。
時間の制限がある以上、ここは仕方のない部分があるかと思います。しかし、探究を進めていく中で、次に考えたいこと、やってみたいことが見つかる生徒は多かれ少なかれいることかと思います。そんな中で、「はい終わり。」で、あとは生徒にお任せでは、手放した感がすごく強いです。アウトプットさせることは、もちろん大事ですし、必要十分的にやった方がいいかと思います。ですが、それにかけすぎることで生徒の探究がそこで終わりのようなイメージ付けが起きてしまっては本質的な探究というものに対して、本末転倒のような気もします。
さて、敢えてここでゴールを一つ明示するとすれば、『次のアクション設計』をすることでしょうか。自分で探究をおしまいにするのも、進路に繋げるのも、就職に繋げるのも、生徒の学びのうえで起こるものとし、「じゃあ君は次に何をするのか」これを言語化して、初めて高校での探究における学習的ゴールと考えるのも一つあるかと思います。

キャリア教育としての探究学習

僕は探究学習を”包括的なキャリア教育”だと捉えています。
キャリア教育は学年、社会への知識、興味・関心などが変わってく中で内容を変えていく必要があります。しかし、探究学習は高校1年生でも3年生でも同じレベル感で探究を進めていくことができると思います。そういった意味で、キャリア教育とは違い、1年生のときから自分の知りたいこと、突き詰めたいことを一所懸命に取り組むことができ、探究の過程の中に様々なキャリア教育の要素が詰め込まれていると思います。

ただ、探究学習が完全にキャリア教育に代替できるのかと言われると、それはNOだと思います。なぜなら、探究学習は「キャリアを意識して」進めているわけではないからです。(そういった学校もあるかとは思います)
キャリア教育として時間があることの一番いいことは、受けた生徒全員の意識や考えを一律に形成できる点にあります。しかし、探究学習だけでは、キャリアに関する意識に個人差がうまれ、探究学習で包括的にキャリアを考える子もいれば、そうではない子も多い可能性があります。そうすると、学校全体でキャリア観を醸成できているかという目線でみると異なる気がします。

僕はキャリア教育をやるなかで、最も重要なことは『生徒たちが分け隔てなく自分の将来や進学先について、いつでも話せる状態になること』だと思っています。キャリア教育、探究学習に前後関係は存在しないですが、例えば探究学習を進めていく中で、生徒たちが自分の考えや探究していることを互いに話し合える心理的安全性が形成できれば、それはキャリア教育に繋がっていく大きな要素足りえると思います。

探究学習はキャリア教育にとっても追い風です。いろいろな探究活動の中で、生徒が自身のキャリアを発見するのも良いことですし、探究学習の中で思考する素養が磨かれ、キャリアについて考える時間にそれが生かされることも考えられます。探究学習とキャリア教育、両方を融合して計画まで踏み込んでいけるといい形になるんじゃないかなと思います。

最後に

ICT活用もそうですが、探究学習も実践事例と一緒に生徒の変化も見つめてほしいなと思っています。どういうアプローチによって、生徒たちがどういう表情をするのかに注目してほしいです。先生方が悩むのはもちろんで、それは普段の板書型授業の時には生徒の反応が想像つくけど、探究では想像つかないというのが一つの要因だと思っています。なので、まずは色んな生徒の中高生の表情と変化をつかんでほしいなと。

探究学習が進むことへの期待

僕が現在の学校教育での教科学習において問題視していることの一つに『分断された教科』があります。国語は国語、数学は数学、大きく見ても文系は文系、理系は理系。と意識的な分断が起こり、その最たる例が学習指導要領です。実は国語の学習指導要領には「数学」という熟語は登場しません。(逆も然り、数学の学習指導要領には「国語」という熟語は登場しません。)このように、教科の分断が最初から最後まで起きていることが非常に勿体ないと感じています。なので、授業の中で教科の中で互いを取り上げることはほぼないかと思います。(事例あればください。見たい。)ですが、僕は個人的に数学の中で国語の良さ、必要性、つながりを見つけることがあります。これは一つの探究的学びに他ならないかと思います。

探究が進む中で、もちろん一つの業界・科目に特化して進めることもあるかと思います。でも、その中で他の教科を見つける瞬間はきっとあるかと思います。データサイエンスなんかまさにそうですよね。それを見つけたときに大事にし、普段の教科学習での学びに繋がっていく。それが探究への一つの期待です。

文系だから「数学をやる必要はない」、理系だから「国語は学ばなくていい」などと意識にも分断してしまうのはすごく勿体ないです。探究をやることによって、授業でやることはなくても、興味を持つきっかけになったり、他の学問に価値を持てる状態になれればいいと思っています。

あとがき

ここまで非常に長くなってしまいすみません。
分けて書こうかなと思ったのですが、綺麗な分け方がなかったので、そのまま一つのものとして仕上げました。

学校には多くの社会課題が取り巻いています。給特法が一つのいい例です。合法的働かせ放題は由々しき問題です。しかし、今僕が声を上げても現状の政治スピードでは明日明後日に変わることは決してないかと思います。もっと自分に力がつけば。。。もどかしいですね。
なので今できることとして、先生たちが考えるべきことを代わりに考えることで少しでもヒントを作れれば、それだけ先生方が時間を他に費やすことが出来るかと思い、それを続けていきます。そんな考えもあり、今回はがっつりとした内容を書くに踏み切りました。(これが果たして参考になればといった感じですが)

出前授業もその一つです。学校で完結できることを僕らにアウトソーシングしてもらうことで、先生方の負担を軽減しつつ、先生方が実践したかった内容を考案し、生徒が「受けてよかった」と思ってもらえる授業を創り出せれば、学校を支える一つの役割となれるかと思います。

Japan Education Labが先生方の相談相手になれるように、これからも多くを実践し、研究し、構築していきます。


☆ホームページがかっこよくなりました☆

これまでは実践事例をnoteに挙げていましたが、今後はホームページにて更新していくことになりましたので、よろしければホームページもご覧ください。

これからの取り組みも、ぜひチェックしていただけますと幸いです。
Japan Education Labに興味をお持ちの方はいつでもご連絡ください。

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