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6月 難しいことを、難しいままで。 | カント、異動、花一匁など。

部署を異動して3ヶ月。
入社して2年間取り組んできた仕事から離れ、今は当時と全く異なる業務をしている。同じ会社でもここまで違うのかと、新鮮な驚きで日々過ごしている。

当たり前だが、部署の数だけ仕事があり、上司の数だけやり方が異なる。基礎的な部分を除き、分かったつもりになっていたことの殆どは、限定的な環境下でしか意味をなさない。

部署異動が決まった日の週末、さんぽで大阪城へ。


仕事を取り巻く変数は、少し考えただけで相当多いことが分かる。

経済・会社・取引先・繁忙期・閑散期のような大きなものから、部署・職種・チームの相性のような小さなもの。PCの調子、上司の機嫌、昨日の夜更かし、朝飯を抜いた、失恋した、贔屓の野球チームが惨敗したなどの些細なものまで。

極端な話ではあれど、大なり小なり目の前の仕事に影響を与える。

人と比べること。その傲慢。


こうやって日々仕事をしていると、つまらないことを色々考える。同期が優秀だとか、部署同士の力関係だとか、上長の社内政治における力関係であるとか。どれもこれも、他人と比べることによって生まれている。

けれども、人は複雑だ。仕事も複雑だ。変数が絡み合って混沌としている。比べることなど鼻からできない。適切に比べられると思い込むことがそもそも傲慢だ。

隣の芝が青く見えるというが、いつから隣の芝を適切に認識する能力があると思い込んでいたのか。

身近な同期同士といえど、比較はできない。できるはずなどない。世界を適切に認識する能力など、我々には持ち得ない。

異動後初のGWは小豆島に。

カントの二世界論

最近、社会学者である宮台真司さんの講演を通して、18世紀の大哲学者であるイマヌエル・カントについて勉強した。

カントは『純粋理性批判』『実践理性批判』という2つの大著を残したけれど、そこで語られたのは世界の認識についてだった。以下、自身の解釈も踏まえて書いてみる。

世界は物理世界人倫世界の2つでできている。物理世界はこの世界そのもの。カントの言葉では「物自体」という。人は、物自体である物理世界をそのまま認識することはできない。

なぜならば、人は有限だから。人は物理世界の一部を体験することで、それを何となく感じることしかできない。海の一部を触ることは出来ても、海の全てを知ることは出来ないようなものだ。

(ちなみに神学の世界には、人は神について何も分からないとし、「神は〇〇ではない」という余事象の輪郭を探ることで、神の全貌をイメージする方法論がある。これを否定神学という)

長いので休憩。最近はじめて陶芸しました。

我々は物理世界という大海を生きる。しかし物理世界を正しく認識することはできない。ならばできる範囲で航海図を作り、全貌の見えない海を渡っていくしかない。大海原に対する航海図。これが人倫世界と言える。

人倫世界は人の自由な意志に基づいて、「他に選択肢があるにも関わらずそれをする」という姿勢をとる。「海がどうなっているのか、本当のところは分からない。だが、こうやって我々は海を渡っていくのだ。それを我々は選んだ。」というようなもの。

意訳があると思うけれど、結局は「世界がどうなっているのかは分からない。けれども、その中で人には大事なことがあり、それに基づいて出来ることがあるんだ」と言いたいのだと思う。

日記と読書メモは同じノートに。

できることから一つずつ

仕事も同じだろう。世の中が、仕事が、実際どうなっているのか。本当のところは誰も知らない。誰にも分からない。

そもそも資本主義において、会社員は資本家の生存競争における部品である。部品としての活動の見返りに、賃金を受け取るだけの役割。部品それ自体において、本人にとっての自己実現などあり得ない。

けれどもその中で大事なものはあって、それらを磨いたり、たまに無くしたり、再び見つけたりしながら、複雑系の中にあるはずもない秩序を描き出そうとしていく。

たとえ到達できないとしても、目指すべき方向というものがある。

それらが何かについては、正直まだまだ分からない。航海図を作るには、流石に材料が足りていない。まずは材料を探すことだ。ただ、「人と比べて右往左往すること」ではあり得ない。

人生と仕事とで目指すべきものはおそらく一致しないが、落とし所と譲らない所を見誤らないように、やるべきことをやる。できることからする。

意味が欲しいよ 花一匁
手に入らないこと わかってても
柄にないことばかり たらたら溢して
こんな僕をまた 笑ってくれたらいいのに

ずっと真夜中でいいのに。『花一匁』

補足のようなもの(宮台さん参考)

カントの二世界論(物理世界/人倫世界)はその後の近代哲学史に甚大な影響を及ぼした。

フッサール(自然世界/生活世界)、ブーバー(汝/それ)などの二世界論の継承者のような者たちから、ウェーバー、パーソンズ、ハーバーマス、ルーマンなど、社会学も巻き込んで体系知を作り出していった。

また、政治の世界でルソーに影響を与え、経済の世界でアダム・スミスに影響を与えた。アダムスミスと、カントを批判したヘーゲルに連なる系譜としてマルクス(上部構造/下部構造)がくる。

この辺もまとめて、残しておきたい。

インクとガラスペンを買いました。

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