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ニュースメディア生存のための6つの戦略(翻訳解説)

メディア開発投資ファンド(MDIF)のスタッフによって書かれた一連の記事「Media Viability: 6 strategies for success」の翻訳です。MDIFはニューヨークとプラハに本部をおく非営利のジャーナリズム支援組織で、しばしば政府が「報道の自由」に対して敵対的な新興国で活動する組織を中心に、40カ国100以上のメディアに資金・業務面での支援を行っています。

が、この文章は、報道の自由のレベルに関わらず、また営利非営利を問わず、今や全世界の全ての(国有でない独立した)ニュースメディアにとって考えざるを得ない課題となったビジネス面(収益性・経営戦略)について、基本的な考え方をまとめたものになっています。Entrepreneurial Journalismの入門編とも言える内容です。今回著者から許可を取ることができたので、導入部と、6つの戦略・事例紹介を全て一本の記事として訳出しました。

ニュース事業は基本的にそれ自体で収益を生み出す活動であるべきこと、その収益モデルも多角化すべきことなど、本文にはどれも大事なインサイトが詰まっているのですが、中でも特に、日本のメディアにとって重要なのは「6. 変化へのオープンさ」末尾部分のこの言葉ではないかと思います。

Many legacy media organizations struggle with inertia and reluctance inside their newsroom toward changes in existing workflow, but this must be overcome if a legacy outlet is to successfully adapt. 多くのレガシーメディアが、ニュース部門内における既存の業務フローを変えることへの怠惰と厭気に引きずられてしまっているが、もしこの時代に適応し伝統を受け継いでいきたいのであれば、必ず克服しなければならない。

新聞を始めとして、100年以上前から変わらない「マスメディア」の産業構造が、アメリカ等と比較するとそこそこ盤石に続いてきた日本。新聞業界関係者からの又聞きですが、デジタル事業部の方々がニューヨーク市立大のJeff Jarvis教授の本をバイブルにして事業開発を進めるなか報道部の一部は理解を示してくれないとか、どんな場面でも記者が出しゃばって主導権を握りがちといったエピソードを聞いたことがあります。巨大企業ほど困難が伴いそうですが、「2. フラットな組織構造」の実現も含めて、もっとオープンにそして機敏に変化に適応していくことが、サバイバルへの最も重要な戦略なのではないかと思います。

今年に入って、全国紙でも新卒採用が1桁だったり、早期退職が増えていたりなど組織人事の面から新聞業界の危機がついに露わになっているという話もあります(日本メディアの雇用状況については、米国メディア大量解雇問題について書き終えたらいずれ着手したいと思っています)。僕自身、まだ就職すらしていない学生として・だからこそ、次世代に生き残るニュースメディア・組織ジャーナリズムのあり方を模索していきます。
(小宮貫太郎)

翻訳元原文:
Valer Kot and Peter Whitehead, “Media Viability: 6 strategies for success,” Deutsche Welle Akademie, June 27, 2019, https://www.dw.com/en/media-viability-6-strategies-for-success/a-48851981
# この翻訳は筆者であるMr.Valer Kot, Mr. Peter Whiteheadおよび、掲載元のDeutsche Welleの許可を得て掲載しています。
# 文章内のリンクは訳出箇所における原註、[]は訳者による註を表す。画像は全て原文より引用。


メディアの生存可能性:成功のための6つの戦略

テクノロジーの発展がメディアエコシステムを破壊してしまった今、ニュースメディア経営から切っても切り離せない経済的な課題を克服する万能薬などなく、あるのはパターンのみだ。成功しているメディア企業は何がどう違うのだろうか?

独立メディアに対する最大の脅威とは何だろうか? 物理的暴力? 投獄? 地元有力者による経営権の奪取? これら全ては重要で、厄介なほど定期的に持ち上がる問題ではあるのだが、我々が提携しているメディア企業によると答えは全く違うものだ。自分たちの存在そのものへの脅威度でナンバーワンを決めてくださいと聞くと、我々のクライアントは明確だが地味な回答「経済状態」を挙げる。

呆れたことに、それは経済なのだ
新興ネットメディアから、ネパール・コソボ・マラウイ・ペルーといった国々の全国ネット放送局まで、我々の提携している40ほどの報道機関には毎年、経営に関する様々な問題についてのアンケートを行っている。

ある質問では「あなたがたが直面する課題に順位づけをしてください」と聞いている。2018年に課題ランキングの第1位を獲得したのは、そのメディアが属する国の〈マクロ経済状況〉だった。そのうち79%の回答者はそれが「組織の存続を脅かすほどの課題」か「深刻な課題」とみなしていた。次点は〈広告収入減少〉で、深刻または存続を脅かすほどであると答えたのは71%。3位は〈他のメディアとの競争〉で54%だった。〈政府からの経済的・政治的圧力〉はそれぞれ第4位・第5位にランクインした。このような結果は決して一過性のものではなく、経済的課題は過去3年間にわたって首位を飾っている。

もちろんこの結果は、独立ニュース企業が少なくとも何らかの形の自由のもと活動できるような国における報道機関の、比較的小さなサンプルによる見方を表すものであって、最も過酷な地域のものではない。だが、彼らのいう経済問題というのは、世界中のほとんどの独立メディアが日々直面している最大の課題である。

万能薬なんてない、あるのはパターンだけ
はっきりしていることだが、メディア組織の運営に関する経済的課題を乗り越えるための万能薬など存在しない。成功しているメディア企業は、その規模・オーディエンスの層・使えるリソース・立地条件やその他多くの要素に鑑みて、様々な手を打っている。汎用的な戦略はないとはいうものの、成功しているメディア経営の事例には、その素晴らしいプロダクトを支えている性質・アプローチ・プロセスにいくつか共通点が見受けられる。以下は、40カ国の100を優に超えるメディアに財政的・技術的援助を行う中で我々が見てきた、特に顕著な6つの戦略だ[それぞれの戦略の詳細はこの導入部の後]。

収益を生み出すのか、生み出さないのか?それが問題だ
[MDIFのようなジャーナリズム支援団体から]助成金を得て活動しているニュースメディアとして(既存かスタートアップかを問わず)、その将来性を考えるときに、自らに問わなければならない最も基本的な問題というのは、長期的にいつまでその助成金に頼っていたいか・いられるかという点かもしれない。もちろん寄付によって活動している優秀な、影響力の高い非営利ニュースメディアは存在する。しかし我々の意見では、いちメディアとして、資金提供者の関心が他メディアまたは世界の他地域に移ってしまったとしても存続可能な組織となりたいのであれば、自ら収入を稼ぐことに取り組む必要がある。助成金は収益源の一部である分には構わないが、それが唯一の頼みであってはならない。

いま助成金に依存しているメディア組織に関しては、一夜にして改革を成し遂げよと期待しているわけではない。一番大事なのは、生存可能性[viability]への最初の一歩を踏み出すことなのだ。その道は長く、単純なものではないだろうが、独自に収益を生み出すための一歩一歩ごとに、資金提供ドナーへの依存度は減り、自らの将来はより保証される。そして最終的にそのメディアがビジネスのマインドセットを持って収益を確保できるようになれば、もし助成金が急に途絶えてしまったとしても順応しやすくなるだろう。なぜなら、純粋に非営利な組織としての考え方から、完全に営利企業的な考え方への変革は、それが急に必要になったとしても不可能であるからだ。

この変革過程のどの地点においても、メディアを取り巻く経済状況というのは厳しいものであるが、全く克服できないというものではない。

変化するエコシステムに順応していくこと
メディア企業はそれぞれに特殊なビジネス環境(消費者・競合・供給元・流通先・広告主・政府当局など)の中で営業しており、その環境は、メディアがどのように個々のニュースプロダクトないしサービスを提供するかに影響を与えている。このエコシステムの中では各主体が相互に影響を与えあっており、ビジネスとして持続するために業務のどの部分においても柔軟性と適応能力が求められるような関係性が、絶えず形成されている。

テクノロジーの発展は我々の旧知のメディアエコシステムを破壊し、伝統的な確実性の多くが跡形も無くなってしまった。メディア企業は今、そのプロダクトや戦略が長期的に生存可能なものでありたいと願うのであれば、大胆な実験に乗り出さなければならなくなった。将来性を見出すためには、メディアは大胆で勇敢であり続けなければならない。

[以下、6つの戦略の詳細]

1. 編集部門と同じぐらいビジネス部門も重要

どんな媒体のどんな規模のどんなニュース事業においても、長期的に生き残りたいのであれば、ビジネス部門も編集部門と等しく重要という事実を受け入れなければならない。

成功しているニュースメディアは、コンテンツ制作・キュレーションにかけるのと同じ意識や情熱を持って財務面に取り組んでいる。

ある程度の成功を収めてこんにちのメディア環境をリードしているメディアとそうでないメディアの違いは、業務のビジネスサイドにどうアプローチするかにかかっている。報道機関がビジネスを編集と同じぐらい真剣に考えるためには、事業開発に従事するシニアリーダーを置く必要がある(創立者かCEOが理想)。そうしたリーダーはデジタル世界を生き残り、持続可能にしていくためになくてはならない価値を体現していなければならない。つまり、彼らは革新的で、協力的で、新しいことに挑戦的で、直感的でなくデータに基づいた意思決定を日々行うような存在でなければならない。

継続すれば、ビジネスとコンテンツはそれぞれ相互補完しあう成功のカギとなる。ビジネスサイドに注目することそれ自体は成功を保証するものではないが、それなしでは報道機関は非常に苦しむことになるだろう。

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成功事例:Malaysiakini
実例として、マレーシアの大手政治ニュースサイト、Malaysiakiniは20年近くにわたってネットメディアの最前線をひた走ってきた。その成功はコンテンツ・ビジネスの両方におけるイノベーションや事績によって成し遂げられており、2人の共同創立者がそれぞれビジネスサイド・編集サイドに責任を分掌している。この組織は、収益性向上のためのイニシアチブを絶え間なく実験し続けていて、ペイウォール[記事に有料会員限定アクセスをかける手法]やサブスクリプションを手始めに、自前のネイティブコンテンツスタジオ、そして「選挙公約トラッカー」や、2019年国家予算が国民にどれほど関わっているかを可視化するオンラインツールのような編集プロジェクトの数々を手がけてきた。こうしたMalaysiakiniの革新的アプローチはニュースに限らず多岐にわたっており、教育講座の運営や、他パブリッシャーへのCMS[コンテンツ管理システム]・ホスティングなどWebサービスの提供、そして採鉱会社による環境破壊を暴露し起こされた名誉毀損訴訟によって発生した賠償金をクラウドファンディングで賄うといったことも行っている。

2. フラットな組織構造

人材投資であれ、外注投資であれ、設備投資であれ、どんな投資活動も慎重に考え抜かれ、長期的な経済合理性がはっきり見えている場合のみ、なされなければならない。

経済的に困難な時代においては、リーンな[無駄がない]企業というのは成功の前提条件である。報道機関は、できるならどんなエリアであれ、脂肪を落とさなければならない。なされなければならない公正な業務評価を行い、従業員の能力を検討した上で、最大限得られる価値を生み出すリソースに絞って合理化を図らなければならない。生産性を落とさずに中間管理職を削減できるだろうか? 新たなスキルが必要となった場合、新規に人材を雇うことなく、知識やスキルの再習得に積極的かつその余裕のある既存のスタッフが存在するだろうか?

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成功事例:某中欧メディア
例えば、MIDFと提携し中欧の国で活動しているある報道機関は、3人からなる小規模の事業開発チームを有していて、それぞれマーケティング&クラウドファンディング担当・ダイレクト広告営業担当(代理店経由や運用型の広告の管理については外注している)・20人以上のジャーナリストからなる強力な編集部担当に分かれている。ジャーナリスト達は高品質なコンテンツを生み出すだけでなく、SNS上のプレゼンスを高め、マーケティングや事業の戦略立案にも加わり、様々なプロジェクトに取り組むことで資金調達にも一役買っている。トップマネジメントは、それぞれが共同創立者であるCEOと編集長によって担われている。加えてCFOが会社に関する財務の全て(フィナンシャルプラニング・会計・財務報告)を管理し、COOが進行中の社内業務と事業開発チームを監督している。総体としては30人強の組織によって月間350万PVのトラフィックが生み出されている。

3. 明確に定義されたブランドと読者

もし市場に新しいものを持ち込もうと思うのなら、徹底して競合分析を行い、クリエイティブにブランド戦略を立てながら、能動的に参加してくれる読者・視聴者・リスナーのコミュニティをどう形成していくのか計画せよ。

ブランディング・コミュニケーション・コミュニティ形成は、スタートアップメディアにとっても、既存企業による新プロダクトにとっても、成功を決める鍵となる。

デジタルプロダクトに関してもう一つ重要なのが、ユーザー中心設計を意識することだ。消費者のためのデザインというのは当たり前のように聞こえるが、絶えずアンテナを張りながら、変化していく消費者(オーディエンス)の需要に適応していくという終わりなきプロセスでもある。メディア企業についても同様に、継続的にオーディエンス開発[新規読者開拓]を行い、ロイヤルティを高める様々な方法を実験しイノベートしていく必要がある。こうしたアプローチなしに、安定的な成長は望めない。またさらに、(既存のそして将来の)広告主・提携パートナー・寄付金提供ドナーに向けて、特別で一貫したコミュニケーション計画を立てる必要がある。

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成功事例:Magdalene.co
これらを上手く行うのは難しいことだ。インドネシアのフェミニストWebサイト、Magdalene.co (世界最大のムスリム人口を抱える同国では通常報道されない「タブー」であるジェンダーとセクシュアリティの問題を扱っている)は今年2月に大規模なサイト刷新を行い、こうした業務改革をやってのけた。ブランディングとサイトの新デザインの開発に、デザイン思考[デザインに基づく問題解決の手法]が使われている。この過程では、アイデア・これまでの経験・対象読者の検討によってデザインが生み出された。デザインをしている対象読者への深い理解によって、彼らのニーズ・意見・感情・モチベーションをよりよく把握し、期待に応えることが可能になる。これらによってMagdalene.coは、使い勝手の良い、シンプルなナビゲーションと機能を備えた雑誌スタイルのデザインを開発した。

4. 収益源の多角化

ビジネスモデルは時とともに変化し、新たなモデルも日々現れ続ける。つまり、メディア企業は常に新たなアプローチにオープンでいなければならない。

我々は今、デジタルジャーナリズムをマネタイズするための新たなアプローチの実験という、非常に面白い時代を生きている(ここに52の収益戦略のヒント51のネイティブ広告戦略のヒントがある)。MDIFの活動の中で我々が気づいたのは、報道機関が売上を稼ぐための収益モデルはもはや2種類や3種類といったレベルではなくなっているということだ。5から10の異なる種類のモデルを使い分けることは非常に一般的になっていて、こうした企業は、いつなんどき崩壊するか分からない少数の収入源への依存から脱却を果たしている。このことは同時に、他のモデルを試す前に、まず一つの収益モデルをきちんと打ち立てることが大事ということでもある。「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」戦略は効果的ではない。

オンライン市場状況と既存の競合関係の把握に時間を費やすことで、収益創出と対象読者のオプションが絞りやすくなるだろう。さらに重要なのは、収益オプションを考える際に、「選択したモデルを実行するための能力(内部のスキルとリソース)は存在するだろうか?」と自問自答してみることだ。収益戦略一つ一つはそれぞれ異なった要件・メリット・デメリットを有しているので、ある選択を行う前には、それを選択した際の機会費用の慎重な評価が必要となる。

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成功事例:Hakumonline, Mail & Guardian
インドネシアでは、法務ニュースに関するオンラインメディアHukumonlineはそのコンテンツを補完するために、専門家によるイベントを開催している。これにより収益源が多角化できるだけでなく、法務情報についての頼れるソースとなることに一役買っている。また南アフリカではMail & Guardianが毎年、医療・政治・スポーツ・教育など様々なカテゴリーごとに、国内の若者層を代表するような新進気鋭のスターを特集している。年に一回その特集者リストが発表されるイベントと、そのタイミングと同時に発行される印刷物は、収益・知名度向上に多大な貢献をしている。

5. 新しい、クリエイティブな伝え方

デジタル時代の課題に適応するという、いちメディア企業の苦闘は、別の企業にとってはチャンスとなりうる。スタートアップは、クリエイティブな方法で新興のメディア空間に参入するのにぴったりかもしれない。

チャンスを掴むために、ニュースメディアは様々な局面でのエクセレンスを追求していく必要がある。ニュース・情報・サービスを提供し、コンテンツのキュレーションを行い、フォーマットや伝え方を刷新して、そして新興地域において人々が自由で開かれた社会を築かなければいけないという対話やさらに言論を促すための、新たな方法論に注力するべきである。

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成功事例:Hashtag Our Stories, Colab
例えば、南アフリカに拠点を置くHashtag Our Stories (HOS)は、世界を変えている人々の動画を作るモバイルストーリーテラーの、グローバルネットワークである。彼らは、個々人が市民ジャーナリストとなり、スマートフォンを使って素晴らしい動画を制作し、一般のニュースメディアでは取り扱われないストーリーを伝えることを支援している。HOSは最近、アフリカ大陸最大の清掃運動を支援するために大手小売企業と連携して、9カ国で6,000人を動員し、55,000回以上視聴された動画を制作した。

情報のニーズを捉えたスタートアップのもう一つの例としては、ブラジルの市民と自治体政府を繋いでいるアプリ、Colabがある。Colabは人々が気にかけている地域犯罪・ごみ収集といった問題を当局の責任者に報告するためのシンプルでダイレクトな方法を提供し、自治体予算や行政サービスの優先順位をつける際に、より多くの声が反映されるようにしている。

6. 変化へのオープンさ

収益モデルや経営ツール・手法の数々は馴染みがないように思えるかもしれないが、ジャーナリズムというエンジンが動くために、必要不可欠な燃料を提供してくれるのだ。

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いま、多くの独立ニュースメディアはコンテンツ改革に意欲的である。それはほとんどの場合ジャーナリズムの核心をなす編集部門におけるプロジェクトであるからであり、商業的な野心に導かれたものではない。

そしてここ数年間で、多くのネットメディアにおいてメンタリティにポジティブな変化が起きている。より多くのニュース制作責任者が、新たなマインドセットを持ってデジタル事業の統括を行うようになっている。彼らは新しいアイデアや実験に対してオープンだ。会社が何か新しいことを試し失敗するたびに、何がうまくいかなったのか、そして何より、何がうまくいったのかについて、価値ある情報を提供している。この点から始めることで、変化を起こし、やり直し、継続的に学びイノベーションを起こすことがより簡単になっていく。

オンラインで読者と収益を築き上げたい伝統的メディアにとっては、異なる配信チャンネルやコンテンツ制作部門の間の壁を取り壊すことは、極めて重要なことである。それが動画・テキスト・音声・インフォグラフィックスであろうと、また紙・テレビ・ラジオ・Webのどの媒体上であろうと、ニュース制作部門は制作コンテンツが掲載される全てのプラットフォームと直接関わりながら仕事を行う必要がある。このようにニュース部門が統合されていなければ、想定対象読者・配信チャンネルに沿ったコンテンツ制作は不可能に近いと言っていい。多くのレガシー[伝統的]メディアが、ニュース部門内における既存の業務フローを変えることへの怠惰と厭気に引きずられてしまっているが、もしこの時代に適応し伝統を受け継いでいきたいのであれば、必ず克服しなければならない。

(Media Development Investment Fund(MDIF)は40カ国の100以上のメディア企業に財政的・技術的援助を提供してきた組織です。この寄稿では[訳注・原文はドイツの国際放送局Deutsche Welleが運営する#mediadevブログに寄稿された]MDIFのValer KotとPeter Whiteheadに、彼ら自身の経験に加え、メディアの生存可能性に関する世界各国の報道機関への調査をもとにしたインサイトをシェアしてもらいました。MDIFにおいて、Valer KotはSenior Media Advisor、Peter WhiteheadはDirector of Communicationsをそれぞれ務めています。)