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【ゴジラ-1.0】モノクロで見るならどっち?【シン・ゴジラ】
庵野秀明が提案したからなのか判りませんが、シン・ゴジラに続きゴジラマイナスワンでもモノクロ版が制作・公開されました。そして驚くべきことにそのままブルーレイ発売されてストリーミング配信までされました。
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何かと比較される2作品ですが、モノクロについてはどうなのか?
▼私の結論:
モノクロとの相性だけで判断するなら…
シンゴジの圧勝です。
なんなら、ゴジマイは失敗しているとさえ思います。
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以降は、シンゴジの良さを語る文章となりますが、裏を返せばゴジマイの悪さを語ることにもなりますので、自分の意見と異なるのを読むと不快になる方や、メンタルの強さに自信が無い方はここでブラウザバックしてください。
宜しいですか?
●撮影方法のちがい
シンゴジは殆どのショットでカメラを固定または手持ちにしています。これは昭和前期からよく使われていた撮影手法です。
一方でゴジマイは多くのショットでクレーンとジンバルを使用して、何かしらカメラがスムーズに動きます。これは映画がカラーになった後で技術的に可能になった撮影手法です。
このためにゴジマイでは、とても現代的な作品を、なぜか古典的なモノクロで見せられている感覚になります。
これだけでシンゴジの方がモノクロと相性が良い十分な根拠になります。
●構図のちがい
シンゴジは庵野秀明が総監督を務めているだけあって画面一つ一つの構図の決まり具合が別格です。CGが安っぽいとか、セリフが臭いとか、そういうことは横に置いて、完成品としてスクリーンに映し出される画が完璧に決まっています。
ビジュアルで表現する映画というメディアにおいて、構図はもっとも重要な要素です。どんな素晴らしい写真や絵画やアニメも、構図が決まっていなければ美しくなりません。この点でシンゴジは完璧であり、その価値はモノクロになっても失われません。
構図(こうず)
① 絵や写真などの画面の,全体の構成。「安定した―」
② 平面的な造形美術で,全体の効果を高めるための諸要素・諸部分の配置。コンポジション。
むしろ構図の美しさは、モノクロになった時にこそ真価を発揮するとさえ言えます。カラーフィルムが普及する前に作られたシネマの傑作と呼ばれる作品の多くが、画面の構図に心血を注がれています。これはカラーフィルムが発明された後も、フィルムメイカー達の技術に血肉となって含まれていたので、カラーでも昭和時代までは(1990年くらいまで)は構図が優れた作品が多いです。逆に言えば、カメラの動きでストーリーを語れないぶん、カメラの画角と構図でストーリーを語る必要があったからですね。
シンゴジでは、最初に完璧なカメラ構図を決めたら、そこで固定して、その中で役者が動くショットが多いです。これはアニメ制作の手法にも似ています。つまり天才アニメーターとしてキャリアをスタートさせた庵野秀明らしい特徴であり、彼だからこそ実現できた演出だと言えます。
そして、この庵野秀明の優れた美的センスは、色を無くすことで、完璧な画面構図として一層際立ちます。
一方でゴジマイはカメラが動くこともあり、一つ一つの構図にミリ単位で拘っているようには見えません。構図の美しさが足りない時も、色彩をうまく使えばビジュアルを魅力的にすることが出来ます。言い換えると、形だけじゃなく色も使って構図を作るのを、現代的な撮り方をする監督はよく使います。そしてゴジマイもそれに該当します。このためにカラーが失われることで、ゴジマイはビジュアルの完成度が激減します。
ゴジマイはモノクロにすることで、恐怖感は増大されるかもしれませんが、画面の完璧さは減少してしまうのです。
これがシンゴジとゴジマイの決定的なちがいと言えるでしょう。
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●ゴジラの魅力がアップする?
モノクロにすることで観客の想像力を掻き立てる量がアップするので、それで架空の存在(イマジナリーな怪獣)であるゴジラの恐ろしさがアップするという点は、ゴジマイとシンゴジ、どちらも等しくあるでしょう。
ただし、繰り返しになりますが、私は映画トータルとしてビジュアルの作り方とモノクロ仕上げとの相性、という点で語っていることをご理解ください。
●昭和の物語だからフィットする?
《プロップが昭和だからモノクロ映像が合う》というのは、一見正しそうですが、あくまで条件付きの話であり、安易に考えると間違えます。
《舞台が1947年だからモノクロにすることでフィットする》というのは非常に言語脳的な発想と言えます。映画をビジュアルじゃなくてロジックで理解する特性が強い人は、そのような結論になりやすいでしょう。(*私はロジカルシンキングを得意とする人がそのような結論になることが、悪いことや劣っていることだとは考えませんので、そこは断っておきます。)
しかし、ここまで述べてきたように、ゴジマイは撮影手法が現代的なので、そこまで見通せる人には、色だけモノクロにしても、昭和22年に撮影したフィルムには見えず、嘘臭さが強くなります。映画をロジックでなくてビジュアルで理解する人ならば、同じ感覚をお持ちになるでしょう。私の場合は、ゴジマイ白黒版には「これのどこが昭和っぽいんだよ」と反感さえ持ちます。
誤解してほしくないのですが、ゴジマイ白黒版を「まるで昭和の撮影フィルムのようです」と言う感想に反論を述べているだけで、「令和の映画をモノクロでお見せしています」と言われたら、特に異議はありません。「ああそうですかご自由に」という感じです。ただし、構図が甘いカットが多い(モノクロで見ると)のでゴジマイマイナスカラーは私には退屈な作品となりますが。
その点で、シンゴジオルソは物語の舞台やプロップこそ現代ですが、撮影手法から仕上げまで一貫して昭和前期らしさがあるのでストレスなく、むしろ撮影機材だけ1954年にタイムスリップしたような不思議な感覚で面白く観られます。
例えば、私達は漫画だったらモノクロ印刷でも現代劇を普通に楽しむじゃないですか。そういう感覚でシンゴジ白黒版は楽しむことが出来ます。
▼ネットの反応:
で、Twitterにもあったのでいくつかピックアップして感想を書きます。
シン・ゴジラはどうやっても現代劇なので、白黒もとりあえずやってみた感は抜けなかったが、-1.0は昭和時代劇だから白黒verとの親和性ほんと高いなコレ。台詞がクサめなところがまた昭和感に寄与してる
— でるた (@delta0401) May 2, 2024
これは、私に言わせれば大きな間違いです。というか、この人は《現代劇はモノクロで楽しめない》と主張してるのにほぼ等しいのですが、本気で言ってるのでしょうか。モノクロフィルムで仕上げてる現代劇映画なんていくらでもあるのに、それも全部《とりあえずやってみた感》という言葉で片付けるつもりなのでしょうか。感性が歪んでいるのか、それとも無知なのか、あるいはジョークのつもりなのか。
おそらくこの人は昭和のモノクロ映画をあまり観たことがないのでしょう。エアプってやつですね。この考察は浅いと言わざるを得ません。意見は個人差があるので別に良いのですが、このようなツイートに1,000以上いいねが付いてることは少し残念です。
「シン・ゴジラ オルソ」𝗮𝗺͜𝗮̹𝘇𝗼𝗻
— くまchan. (@kumachan_twt_go) May 8, 2024
「ゴジラ-1.0」はモノクロになっても更に良い感じになってたけど、
「シン・ゴジラ」はモノクロになってもやっぱり駄作!☹️
ゴジラにはモノクロが似合うけど、映画そのものが超駄作だからモノクロにしても駄作はやっぱり駄作でしかなかった😑
駄作連呼(笑)😂 pic.twitter.com/jX9rzYLrtB
これは稀に見るクソツイートです。ただ「駄作」「超駄作」と言いたかっただけなのか、こう言えば面白いと思って呟いてるのか、炎上狙いなのか、それとも何か庵野秀明とシンゴジに恨みがあるからなのかまでは知りませんが。
内容自体は《フルカラーからモノクロに変わっても映画の好みは影響を受けなかった》ということだけ言えば済む話なのに、このように他人の心象を害するような言い回しをするのことにはあまり感心できません。
一番クソなのは、この否定的な文脈のツイートでファンアートを貼っていることです。一体どういう了見なのでしょうか。きっとこれを描いた人はシンゴジのことが好きなのだと思います。そのくらいの愛は伝わってくる絵です。それを駄作だと連呼するツイートに使われたらどんな気持ちになるか、この人はそんな想像力さえも持ってないのでしょうか。
ひょっとしたら2016年に起きたシンゴジブームに乗れなくて、そのときに何かしら言われたりして、傷ついた経験からタタリ神になった人なのかもしれませんけど。この人が早く過去の傷や呪縛から解放されることをお祈りします。
庵野秀明総監督・樋口真嗣監督『シン・ゴジラ オルソ』観た
— kawata (@MugenShinsi) May 6, 2024
『シン・ゴジラ』をモノクロ映像にして生まれ変わらせた特別版
山崎貴監督の拘りで新生と言えるぐらいにまでの深みが出た『ゴジラ-1.0/C』と比べて、あんまし白黒にした意義を感じない
夜のゴジラのシーンは結構映えてましたが pic.twitter.com/P1ulKol4Pp
山崎貴監督のこだわり…って具体的に何でしょうか。
そして、庵野秀明や樋口真嗣のこだわりと、何が違うのでしょうか。
むしろモノクロ版を作ってみることの走りが庵野秀明なのを、この人は知ってるんでしょうか。
マイナスカラーで感じた意義とは何なのか、もう少し具体的に書いてほしいところですね。
今回はアマプラ見放題の怪獣映画『ゴジラ-1.0/C』をご紹介!通常版とは異なり初期のゴジラを彷彿とさせるモノクロ仕様。ワシ的にはこのバージョンめっちゃ好き😍戦後間もない雰囲気やゴジラの不気味さもカラー版よりこっちの方が好み👍テーマ曲のタイミングも良すぎて圧倒される#ゴジラマイナスワン pic.twitter.com/U6fnNvk5Bv
— モカシ☁️映画ナビゲイター (@mokashi_movie) May 5, 2024
昭和20年代の再現度の高さを高評価する人が多いゴジマイの映像ですが、私は「戦後間もない雰囲気」と呼ぶには綺麗すぎると思うんですけよねー。この人は1947年ごろの記録映像とかあまり見たことがないのでしょうか。
まあでも《カラーよりは雰囲気が出てる》という捉え方はあるかもしれませんけどね。
『ゴジラ-1.0/C』
— 山本雨季 (@ukikocandy) May 4, 2024
カラー版よりこのモノクロ版の方が断然好き。粗のある映画ではあるんですがモノクロという形態がその払拭を助け、リアリズムや恐怖感の増大に成功している印象を強く受けました。ただ、細かいことを言うと、やっぱり海軍なのに敬礼が陸軍式という点だけはちょっと気にかかったかな。 pic.twitter.com/b7h9WJxpK7
アラを隠すためにカラーを捨てよ、という後ろ向きとも前向きとも解釈できる感想ですね。興味深いツイートでした。
敬礼の形式一つ取っても陸軍と海軍で違うんですね、私は知りませんでした。こういう鋭い観察力と知識に裏打ちされたツイートが好きです。
『シン・ゴジラ:オルソ』鑑賞。
— タラ (@1xkujzaO1tYxEmh) May 11, 2024
戦後を舞台としたゴジラ-1.0をモノクロ化する意義はよく分かる一方、バリバリの現代劇でスマホやネットも出てくるシン・ゴジラをモノクロ化する意義は正直よく分からないというのが鑑賞前の想いでした。
しかし、数々のキメにキメた画で個性豊かな顔した↓ pic.twitter.com/2mqNk1knJV
この人は、シンゴジにモノクロは、最初はロジカルに考えてフィットしないかもしれないと危惧したが、実際に映画を観ることでビジュアルで考えてフィットすると考えが変わったというツイートですね。柔軟な思考をお持ちで尊敬します。
シン・ゴジラ オルソ』を見た。 自分の反応に驚いた。 ハイコントラストなロングショットや役者のアップの美しさを大いに引き立てていた! この映画は信じられないほど美的だ! ここまでで、すでにカメラワークと編集にとても感動した! オルソはこれらのシーンの美学を高めている。… pic.twitter.com/3Yl2BQ41Op
— Godzilla🫶🇯🇵 (@Shin_Gojira_66) May 12, 2024
モノクロにすることで構図の美しさが際立つのが、シンゴジオルソの最大の強みだと言えるでしょう。
モノクロ版による内容の深化では
— 新鮮グミ局長あしたか(頭痛) (@assi_na) April 30, 2024
ゴジラ-1.0<<<<<<<シン・ゴジラ
なんだが。個人的には。ゴジラ-1.0は光景こそ昭和だが絵作りが今時の映画過ぎてな。シン・ゴジラは画面の動きが抑えめかつドキュメンタリーチックな作風に淡々とした印象を与えるモノクロ映像が抜群に合う(写真は画面直撮り) pic.twitter.com/Vy9Xt5U7nH
この人の感想は私とよく似ていますね。映像表現の特徴を的確に捉えた感想だと思いますが、このような真を食った意見がTwitterではあまり共感を集めないのは寂しいです。
シン・ゴジラ:オルソとゴジラ-1.0/C
— 四畳半 (@baiken0815) May 3, 2024
正直モノクロにした時のハマり具合は断然オルソです。
もはやシン・ゴジラ自体がモノクロ前提で作られたのではないかと疑うレベルで構図と役者の顔が映えまくってる。
逆にマイナスカラーはエンタメ映画的な構図とキャスティング過ぎて白黒映えはあまりしないかな。 pic.twitter.com/Y2zTuuwsGH
この人も私と大体同じ感想ですね。
(了)
最後まで読んでいただきありがとうございます。ぜひ「読んだよ」の一言がわりにでもスキを押していってくださると嬉しいです!