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【あらすじ感想】【シン・仮面ライダー】

昨年の5月に書いてストックしたまま忘れていた記事です。

今年ブルーレイの発売内容が告知される前から、5話に区切って書いてたのに、なんか勿体ないことしたかも!(笑)


#ネタバレ

2023年5月某日。
公開から約2ヶ月経った5月に、ようやく観ました!
怪作であり快作で面白いじゃん。
酷評してる特撮オタクは厳しすぎですよ。(苦笑)

庵野監督のシン・シリーズでは2番目に好きですね。
(ゴジラ>仮面ライダー>エヴァンゲリオン>ウルトラマン)

▼あらすじ(ネタバレ):

第壱話:SHOCKER、襲来(蜘蛛オーグ)
緑川ルリ子はSHOCKERから飛蝗オーグ(本郷猛)を脱出させる。本郷は追手の蜘蛛オーグを殺してルリ子を救い、緑川博士の意志を継いでSHOCKER殲滅を誓い「仮面ライダー」と名乗る。

第弍話:見知らぬ、髭男(蝙蝠オーグ)
ルリ子と本郷は政府のひげ男たちと協力することにする。しばらく自身の凶暴性を恐れて迷う本郷だったが、ルリ子を守ることを決心して蝙蝠オーグを殺す。

第参話:泣かない、緑川(蜂オーグ)
ルリ子と本郷は蜂オーグのアジトにある巨大洗脳装置を破壊する。本郷はトドメを刺すこと拒否したが、先立って蠍オーグを殺して毒素を入手していた政府の髭男が代わりに蜂オーグを殺す。

第四話:泡、逃げ出した後(KKオーグ)
ルリ子と本郷は蝶オーグと対峙するが圧倒的実力差の前に一度撤退する。ルリ子は追ってきた強化型飛蝗オーグ(一文字隼人)の洗脳を解くことに成功するが、新型のKKオーグに不意を突かれて失血死する。一文字はKKオーグを殺すが、本郷への協力は拒否して去る。

第伍話:本郷、心のむこうに(蝶オーグ)
本郷は再び蝶オーグのアジトに攻め入って、駆けつけた一文字の助けを借りて群生帯飛蝗オーグを蹴散らす。ルリ子が残したプログラムで蝶オーグを無力化して駆逐するも、エネルギーを使いすぎた本郷は絶命する。一文字は本郷の意志を受け継ぎ、本郷の意識がインストールされたマスクをつけて仮面ライダーと名乗り、打倒SHOCKERを誓う。

FIN


▼よかったところ:

🔵物語

予告の時からずっとそうでしたが、庵野秀明は「原作:石ノ森章太郎」をアピールし続けていました。だからこそ、私はそれだけは読んでから映画を観たのですが、これが大正解でした。きちんと石ノ森の原作を現代らしくアップデートした物語になっていたので、非常に面白く観覧できました。

特にラストシーンのバイクで走りながらの「俺の体はないが、君の目が見ているものが見えているし、君の耳が聴いているものが聴こえているし、君の体が感じている風も感じている」という本郷のセリフはまさに原作漫画の中盤でニコイチライダーになった時のもので、とても感動しました。(原作をサボって未読だった人達はさぞ困惑したでしょうね:苦笑)

石ノ森章太郎デジタル大全 仮面ライダー(2)より引用。

やや性急な展開は、良くも悪くも石ノ森の原作に近い手触りがありました。これについては、巷では「庵野の説明力不足だ」と結論している酷評が目に付く気がします。わざとやっているのか、本当に実力が無いのか、私には正直100%の判断はつきませんが、いずれにせよ本作については良く作用していたと思います。

公開初日から実に60日近く経ってから観たので、先に舞台裏を知っている状態での鑑賞になりましたが、一番感慨深かったのは柄本佑が演じる一文字隼人のキャラでした。メイキング映像で柄本佑はムードメイカーのような言動をしている場面が多く収められていたのですが、あれは一文字隼人のキャラクターが反映されたからだったようですね。石ノ森版では本郷と一文字のキャラがそこまで高解像度で描かれていないので、庵野版でのキャラ付けは素敵だったと思います。

YouTube 東映映画チャンネル
SHOCKER presents 不定期『シン・仮面ライダー』撮影現場調査報告 第1回
https://youtu.be/dHUN1ATGqSw

映画のラストはちょうど石ノ森版の中盤に当たるのも良かったです。原作から見るとちょうどあと半分くらい残っています。これも異色ですが、私は事前に庵野版の続編構想も舞台挨拶の映像で知っていました。

庵野「原作を…石ノ森先生の原作を読んでる人はすぐピンとくると思うんですけど。まあプロット的には、日本政府がSHOCKERの…
柄本「そんなに言っちゃって良いの!?(笑)」
池松「結構…ライブ(ビューイング)の向こうでも皆さん…(笑)」
庵野「ちょっと…人工知能…アイと同じレベルの人工知能を開発してですね。まあブレインと言うんですけど。それが…それを利用したSHOCKERに入った政府の…まあ政治家と官僚がですね、SHOCKERに入って色々やろうと。それと戦う一文字ライダーという感じです
池松「すげえ…壮大な…がんばってください(笑)」
柄本「がんばる!俺、がんばる!(笑)」
庵野「お金、たぶん足りないので。再生怪人でなんとかしようかと(笑)
一同「(笑)」
庵野「なのでイチローも出番あるかもしれません(笑)
森山「あ、そうなんですか?(笑)」
庵野「再生怪人なので

庵野秀明監督『シン・仮面ライダー』続編構想明かす 仮面ライダー0号のイラスト初公開 映画『シン・仮面ライダー』大ヒット御礼舞台挨拶
https://youtu.be/DIx0mB-aBRo
石ノ森章太郎デジタル大全 仮面ライダー(3)より引用。

マイナンバー関連でSNSに出回った切り抜きでも有名なこのシーン。原作ではこの後にも更に「急展開」があって実は日本政府が黒幕とは限らないとなりますが、あまりネタバレをすると引用の範囲を超えそうなので控えておきます。気になる方は原作を読んでください。とにかく、原作を知っていると庵野監督が匂わせた発言から大体の骨組みは想像できるので、それをどう料理するのか(どうアップデートするのか)楽しみになりますよ。

再生怪人の件は本当にさりげないですが、壇上の出演者一同はさすがに石ノ森原作を読んでて知ってたんですかね。この舞台挨拶をYouTubeにアップしたウェブメディア担当者が把握していたのかはよく分かりませんけど。

思いっきり余談ですが、石ノ森の原作はライダー1号と2号を見分けるのが難しいので覚悟して読んでください。たぶん連載当時は同じデザインで、後から単行本に収録するときに2号のスーツに白いラインを加えたんじゃないかな。手塚治虫や藤子F不二雄はよくやるんですよね。しかし石ノ森は詰めが甘かったのか、時々忘れてるんですよ。アシスタントのスキルの問題なのか分かりませんが。このためアクションシーンで何が起こっているのか致命的に難解です。(笑)

🔵ルック+アクション

主要キャストの顔と衣装は最高だったと思います。これはほぼ異論の余地がない所でしょう。良い意味で古臭い1号2号ライダーを、うまく令和に馴染むデザインに昇華していました。V3以降のカラフルな感じや、いわゆる平成ライダーのような洗練されたフォルムを好きな人達でも「これはこういうものだ」と納得できる部分だと思います。

浜辺美波はどのシーンも可愛く映っていて凄かったです。動いて、喋って、気絶して、それでもあのビジュアルキープは驚異的です。綾波レイって日本人に実在したんですね。(笑)

アクションやCGは、日本映画としては及第点だったと思います。少なくともシン・ウルトラマンのメフィラス星人やゼットンのような明らかにレンダリング不足の安っぽいルックのCGは無かったかと。その上でダサく(泥臭く)見えるのは意図的にしているような気がしました。

全部で5人出てくる敵オーグとの戦闘シーンで、どれも雰囲気が異なるのは素晴らしい点だと強く思います。基本的に次々と新しいヴィランが現れては倒すのを5回も繰り返すので、1週間ギャップが生まれるテレビシリーズと異なり、連続して観る映画では「味変」させるのは非常に重要です。

おそらく一番完成度が高く人気があるのは最初の蜘蛛オーグ戦でしょうし、一番理解されないのは最後の蝶オーグ戦でしょう。「デパリハライズ」という聞き取れない意味不明な単語が出てきて、私はSE経験があるので「ああプログラムを書き換えて無効化するプログラムみたいな感じかな」とすぐに納得できたのですが、いわゆる仮面ライダーのバトルアクションを楽しみにしていた普通の観客には意味不明で憤慨ものでしょう。どこかエヴァTV版のオリジナル25,26話を想起させて、それが庵野への憎悪を増していたんじゃないかとも邪推します。

🔵庵野だからこその演出

蝶オーグを倒す場面は、いつもの頭でっかちな庵野節全開で私は好きです。

一部の人達の怒りにつながった庵野らしさ(庵野のこだわり)こそ、私が本作品と優れた映画作品だと思う理由でもあります。

蝶オーグとの戦いではヘルメットを被せてから精神世界での戦いに移行しますが、これはテレビ版のエヴァ最終話や新劇場版のシンエヴァでもやっていたことでした。アクションの最終形態として庵野節全開になるなんて最高じゃないですか。

NHKのドキュメンタリーでアクション(殺陣)を指示しない庵野はかなり叩かれていましたが、庵野からしたら精神世界のバトルを描ければそれで良いので、あとは自分の中に無い何かを入れたかったということなのでしょう。私は劇場で初鑑賞した瞬間から楽しめました。

他にも群生帯のバッタオーグにバイクで取り囲まれるシーンは原作漫画の構図を意識しており、知ってるとニヤリとできる場面でした。

石ノ森章太郎デジタル大全 仮面ライダー(2)より引用。
石ノ森章太郎デジタル大全 仮面ライダー(2)より引用。

取り囲まれた本郷が庵野で、取り囲んでいるライダー軍団はツイッター上で攻撃的だった特撮オタク(ライダーオタク)のようにも見えます。(笑)

オタクの人達には、自分の夢想したイデアを「唯一の正解」として他者の創作物を叩く癖がある人が少なからず含まれるからウザイですね。

▼あまり感心できなかったところ:

個人的にあまりハマらなかった点も書いておきます。

🔴音楽

BGMにはあまり感心しませんでした。たとえば蜘蛛オーグの場面で使われる英語ラップの曲や、蜂オーグの場面で使われるやたらヴォカリーズ多めのオリジナルBGMは、どれも編集のリズムやビジュアルの雰囲気にミスマッチだと感じました。

なんというか、シン・仮面ライダーは全体的にわざとドン臭く撮っている場面が多いのですが、それにスタイリッシュな音楽が不釣り合いなのだと思います。例えば公式がYouTubeにアップしているメイキング映像では常に昭和ライダーっぽい曲が使われていますが、そちらはマッチしています。

庵野監督がギリギリまで編集を粘ったせいで音楽担当者の時間が足りなかったのでしょうか。ちょっと意図が分かりませんでした。

ただ昭和臭い音楽は10分程度なら良くても、それが2時間も続けばクドイと感じるかもしれないので、判断は難しいところかもしれません。

🔴手ブレ

意図不明な手持ちカメラがしんどかったです。蝶オーグとのラストバトルも激しかったですが、蜂オーグの時も酔いそうになりました。

🔴入場者特典

これは文句ではないのですが…

どこの映画館とは言いませんが、私が入場した日に4期分の特点を貰えました。これって一定期間での予定入場者数を大きく下回ったという証拠ですよね。それは貰ってもなんだか悲しい気分になったなあ。もう少しマーケティング予測が正確にできなかったのかと思ってしまいます。観客に「計画通りに動員できてない」ことが悟られてしまいますからね。とはいえ破棄するわけにもいかないですし、難しいところですが。(*私の行った劇場が東京郊外だったというのもあったかもしれません)

第4弾 SHOCKER識別IDタグ
第5弾 シン・仮面ライダーカード2
第6弾 シン・仮面ライダーカード3
第7弾 シン・仮面ライダーカードコラボver

🔴ターゲット顧客

シン仮面ライダーの幕間でハリケンジャー20周年版の予告が流れました。20年経ってもオリジナルキャストが集結できるのって素晴らしいですわね。ただシンカメがターゲットにしてる客層とは、似てるようでズレてるかもしれないと感じてました。

🔴ヘタクソな英語

一点だけ猛烈にダサくて観ているこっちが恥ずかしかった要素がありました。登場人物の何人かが「英語できますよ」というノリで発音してる英語が揃いも揃って全員ヘタクソで「マジでやめてくれ」と思いました。特にJKが酷かったです。そのくらいは流石にちゃんと探してきて。(笑)

英語を話せない日本人の声優さんが、持ち前の耳の良さだけで英語のネイティブ発音を巧妙に真似すると、ああいうヘンテコな発音が出来上がります。まあ、もしかしたら庵野監督の演技指導かもしれませんけど。でも日本人の発音が日本語訛りになるのはともかく、JKのような無国籍キャラの発音がグローバル基準で不自然なのは気になります。

私は一時期に血の滲むようなスピーキングの訓練をして、ネイティブの発音方法を身につけたので、この違いを聞き分けることができます。なお、こんなことできなくても英会話はできるので実用面では全く不要のスキルではあるんですが。

私が話せるのはジャパン訛りのネイティブ発音。JKが話してたのはネイティブ風のジャパン発音。この違いはネイティブ発音とジャパン発音の両方を体得している人にしか聞き分けることができません。だから多くの日本人観客はJKの英語を綺麗なネイティブ発音だと認識してそうですね。

(了)

2024年7月追記:

ブルーレイの発売方法は悪質だと思います。基本的に価格設定が高すぎるし、4K UHDの購入時に必ずフィギュアやらマフラーやらが付いてくるのは愚の骨頂です。以上。

最後まで読んでいただきありがとうございます。ぜひ「読んだよ」の一言がわりにでもスキを押していってくださると嬉しいです!