マイティ・ソー2で実はジョス・ウェドンがゴーストライターとして参加していた件
マイティ・ソー:ダーク・ワールド。MCU初期3フェーズ23作品の中で「一番人気がない作品」にしばしば選ばれてしまう映画です。私は本作の最大の敗因はシリアス路線なのかギャグ路線なのか定まらず映画としての統一感が欠けるからだと思っていたのですが、ウィキペディア英語版とIMDb英語ページを読むことで、ギャグを中心に「立て直し」を担当したのがジョス・ウェドンだったと分かったので、考察していきます。
すこし長くなりますが、面白かったら途中で脱落しても高評価をつけていくのを忘れないでね。笑。
▼なぜソーは(比較的)人気が低いのか:
そもそも日本での人気はアイアンマンとキャプテンアメリカの2人勝ちで、同じビッグ3なのに正直ソーはいまいちパッとしない、という印象があります。もちろんソーが一番好きだという方も沢山いらっしゃるでしょうが、この3人で人気投票をすればおそらく大差で負けるだろうと思われます。
この理由としては、ソーのコスチュームが2人に比べれば地味なのと、割と現実味を重視するMCUの中で彼だけは「神」というチートキャラなのでアベンジャーズの面々と同列には扱いにくいことや、彼のルーツである北欧神話があまり日本ではメジャーではないので欧米人向けには十分な説明でも日本人には足りない、という側面があるからだと思います。
しかしそれらの弱点に加えて第2作The Dark Worldで不評を買ったのが、実は地味に効いてるんじゃないかと私は考えています。
ちなみに誰の仕業(ミス?)でそうなったのかは知りませんが、ダークワールドはウィキペディア日本語版からは消されて無かったことにされています。笑。
▼実はダークワールドはジョス・ウェドンがゴーストライターとして参加していた:
ダークワールドは混迷を極めたプロジェクトでした。2012年の『アベンジャーズ』第1作の超特大ヒットを受けて、翌年公開の本作は制作途中でロキが死なない設定に変更されました。このため撮影終了後に脚本が大幅に変更されて、辻褄を合わせるために追加撮影も行い、制作現場は超絶ハードワークで大混乱だったことが、多くの人の証言や報道から分かっています。
そして、IMDbに気になる記述がありました。
なんと!
ジョス・ウェドンも関与していたんですね!
映画の序盤で一瞬で殺されるクローナン(巨大な岩のエイリアン)は本当は長い戦闘シーンが用意されていたけど、ソーに瞬殺されて、ファンドラルのとびきりのジョーク「次はデカイ奴から倒そう」が追記されたということでしょう。
ロキがキャプテン・アメリカに変身するのもウェドンのアイデアだったようですね。アベンジャーズが大ヒットしたので、そことのつながりを強調する目的だったようです。まあここはウェドンに依頼するのがシンプルに考えて真っ当な話だとは思います。MCUではポストクレジットだけ別監督が演出を担当するのは日常茶飯事ですし、それの派生型みたいなものかと。
この廊下を歩くシーンでは重要なポイントが2つあります。1つはロキが一般兵に変身している点です。この兵士は終盤で死を偽装してアスガルドに戻ってくるときの姿でもあるので、終盤のオーディンとの会話シーンが後からスタジオの意向で追加されたことを示しています。
もう1つはロキがソーをシフの姿に変身させて「うおおお、セクシーやんけ」「てめえ殺されたいんか」と口喧嘩している点です。この手のセクシーをネタにした笑いはウェドン監督の十八番なので、まさに彼らしい演出だと言えます。まあ、これだけならまだ他愛のないレベルだと言えました。
問題なのは、次です。
ええええ?
飛行機で空輸される特殊部隊がウェドン!?
そこに駆け寄るテイラー撮影チーム。
「先生、ここはどうすれば良いでしょうか?😨」
「ふむ…シャシャシャシャッ!✍️」
「はあああ、先生ありがとうございます!これで命拾いしました!😂」
「うむ。それじゃあ僕はこれで…バラタタタッ🚁」
「先生!ありがとうございます!せんせーい!😭」
マジかよ!
ウェドン監督、人生の絶頂期だったんじゃないでしょうか。笑
なんか、、、仕事できない人ほど忙しいフリをするものなんですけど、この飛行機のくだりからその手のヴァイブスを感じるのは私だけでしょうか。笑
そう言われてみるとロンドンのグリーンウィッチでの戦闘はシリアスそうな見た目とは裏腹にちょくちょく陽気なギャグが挟まれます。ジェーンがダーシーを間違ってワープさせるテヘペロとか、イアンがダーシーを救って2人がいい感じになるとか、ソーが普通に地下鉄に乗り込むとか、地下鉄で女性がバランスを崩して寄りかかられたソーがニンマリするとかは、いかにもウェドンぽい笑いのセンスです。
また映像のクオリティ的には、ロンドンの戦いが終わった後にカメラがロングショットになったときに、キスしているダーシーとイアンは少し不自然に浮いているようにも見えました。CGでは画面の不自然さを軽減するためにレタリングという何層にもフィルターを重ねる作業があるのですが、これは後から追加したので十分な時間が取れなかったのかもしれません。
また、ラストバトルの後で皆でテーブルを囲んでシリアルを食べているのは、アベンジャーズのポストクレジットで皆でケバブサンドを食べているのと全く同じです。たぶんアベンジャーズでウケたから二匹目のドジョウを狙って入れたんでしょう。
アベンジャーズ(2012)が大成功したことで、当時ジョス・ウェドンはマーベルで大変重宝される存在になっていたのは間違いなさそうです。テイラー監督もどんなノリで発言したのか分かりませんが、命を何回も救ってくれたという言い回しからは少なくとも彼に感謝はしていそうですね。(それが彼が望んでいたかどうかは別として、会社に求められる作品に仕上げるためには助かったという意味で)
ただ私はこれを読んで気づいたのですが、あちこちにウェドンの筆が入っていたということは、セルヴィグ博士のアタマがおかしくなって全裸になったりズボンを履かない方が落ち着くようになったりしたのはウェドンによるリライト(演出)だったのではないでしょうか。下図は、彼がジャスティスリーグで追加撮影したギャグをまとめたものですが、ギャグの方向性がそっくりなんですよねー。(こちらの記事でも詳しく解説)
思い返せば、地下鉄でよろける女性とそれを内心喜ぶソーも同じようなラッキースケベ的なユーモアです。テイラー監督の別作品である『ターミネーター 新起動/ジェニシス』ではこの手のユーモアは一切出てこなかったので、ウェドンによる追記だと考えてほぼ間違いないでしょう。
▼ウェドンがMCUに利用されて捨てられるまで:
MCUを公開順に並べると、ウェドンの悲しい歴史が見えてきます。
ここから私が読み取ったことは以下の通りです。
いかがでしょうか。
同じライト路線でも、ウェドンのギャグが「話の腰を折るタイプ」の破廉恥なネタを多用するのに対して、ガンやワイティティやワッツは物語の中に自然に溶け込ませるのが上手くユーモアのセンスも上品です。他のクリエイターに比べてウェドンだけが笑いのセンスもストーリーの組み立ても数十年レベルで時代遅れというか。なんかノリが昭和っぽいというか。いまだに90年代の作風というか。よく言えばベタで親しみやすいのかもしれませんが。ただ個人的には、ウェドンと他MCU監督での教養とか映像クリエイターとしての手腕には圧倒的な差を感じます。
こうして年表を見ると、ダークワールドはアベンジャーズのトレンドが途切れないように、ファイギが作品の方向性を無視して急きょ強引にウェドン色をぶち込んだ印象がかなり強く、それで作品の評価はMCUでも屈指の低さなのですから、ユニバース化の被害を最も大きく受けた作品だと言えそうです。
そして全く同じことが起きたのがDCの『ジャスティスリーグ』でした。スナイダーが離脱したのを好機と言わんばかりに、ワーナーは急きょ強引にウェドンをぶち込んで彼に好きなように作らせて、結果は批評家からも一般層からも総スカンを食らうスーパー駄作になってしまいました。
しかし後年になってスナイダーカットがリリースされて『ジャスティスリーグ』の評価は180度ひっくり返って大絶賛されました。これを見たテイラー監督が、自身の構想通りのディレクターズカットを世に出したいと思うのは、かなり必然なことでしょう。
いやーしかし、2017年のウェドン監督のジョスティスリーグでの大失態の前兆が2013年のマイティソーダークワールドですでに現れていたというのは目から鱗でした。温故知新とはこのことですね。
▼ナタリーポートマンMCU離脱もウェドンが原因か:
ダークワールドの出演を最後にナタリーポートマンはMCUから離れて、続くアベンジャーズエイジオブウルトロンでも現れず、ソーラグナロクでも出演はありませんでした。エンドゲームでソーが語ったように彼女とは恋人関係が終わっており、エーテル回収のために過去のアスガルドに飛んだシーンでポートマンの新たな撮影はなく、ダークワールドの未使用シーン(ベッドで目覚める場面)と残りはボディダブルを用いて撮影したようです。
あれ?
コレもしかして、、、
ウェドンが嫌だったからポートマンが離れた説、あるぞ!
ここから先は事実の記載ではなく、私の推測になるので、別の記事(ナタリー・ポートマンMCU離脱事件の真相)として纏めました。
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了。
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