ZOOMに慣れようVol.1 / リアルで何気なくやっていることが実は凄いことだった件
このマガジンではzoomやslackを活用して中高生がオンライン上でグループワークを実施できるようになることを目指したトレーニングプログラムのスライドを解説を公開していきます。
今回は前回の全体についての説明に続いて、「zoomに慣れよう vol1」のスライドの公開と解説をしていきます。
マガジンの内容
0. 全体についての説明
1. zoomに慣れよう Vol.1 チャット機能でクイズゲーム
2. zoomに慣れよう Vol.2 ブレイクアウトルームでじゃんけん&しりとり
3. zoomに慣れよう Vol.3 ホワイトボードでドローイング、連想作文
4. zoomで雑談 ギャラリービューで雑談
5. zoomで対話 スポットライトビデオでトーキングスティック
6. zoomでグループワーク
とはいえ、Vol.1についてはこのプログラムの制作を担当した江村くんによるいいかんじの記事が既に公開されているので、詳しくはそちらを参照してもらいつつ、この記事では「Vol.1」についての補足的な解説のみさせてもらおうと思います。
まずスライドはこちらになります。
参考:
N中等部ニュース・トピックスでの記事
edtechzineでのこのスライドの解説記事
「zoomに慣れよう Vol.1」ではzoom上でのクイズ遊びを通してチャット機能の活用を学んでいきます。講師がクイズを出し、生徒/参加者はそのクイズにチャットで答えていきます。もちろんクイズの正解/不正解を競うためではありません。この活動をとおしてzoomのチャット機能の使い方を学習しつつ、チャットで何度も全体に向けて情報発信をするということについて慣れていくことが目標です。
どうしてそんなことを初回に重点的にやるのかについて、これから説明をしていきます。
リアルの授業やワークショップで誰もが何気なくやっていることの凄さ
教職員やファシリテーターにとって教室やワークショップスペースなどのリアルな空間からオンライン上になって、まず困難さを感じるのは自分の授業やファシリテーションにたいして生徒/参加者からの反応がほぼ見えない(←いろんな意味で)ということではないでしょうか。zoomはもちろん、Google meet(旧ハングアウト)、YouTube Liveでもこれは同じです。
では、我々はリアルではどのように生徒/参加者の反応に応じて場を進行しているのでしょうか? たとえばロゴデザインのワークショップをファシリテートしている場面を想像してみてください。
まず最初に講師は「今日のグループワークでは企業のロゴづくりを通して『伝えること』について学んでいきたいと思います」という導入をします。
このとき講師は導入説明をするのとほぼ同時に、会場全体を見渡しながら参加者たちがキャッチアップしているかどうか観察と判定を行っています。
より具体的には参加者の視線が講師自身のほうを向いているかどうかや、参加者たちの表情が興味を示しているかなどを瞬時に観察しがら、参加者がこの導入に付いてきてくれているか否かを判定しています。
参加者たちが受け取ってくれていることを講師が判定できたら、一呼吸おいてプログラムを次のステップに進めていきます。「世の中は様々なロゴで溢れていますよね。皆さんもロゴと聞いて思いつくものがきっといろいろあるんじゃないでしょうか?」と問いを投げかけます。
そしてまた全体か、あるいは自分の近くにいる参加者の複数の参加者に目を遣り、この問いに微かに「あるある」という肯定的な表情をしている参加者を瞬時に探し出し、その参加者の方に体を向け、目を合わせながら「(あなたは)何が思いつきましたか?」と1to1で問いを投げかけます。参加者は「スタバのロゴとか?」と応答をしてくれます。
リアルな授業やワークショップの場では、だいたいこのようにして講師は参加者の表情や所作を判定しながら問いかけを行っていくことで参加者からの応答を引き出していき、その積み重ねが協働学習の場を構成していきます。
こうした知覚を活用した観察と行動選択はあまり意識せずに、なにげなくやっている方がほとんどかと思います。授業にせよワークショップにせよ、リアルでの学習の場はこうした表情や所作の観察に基づくノンバーバルなコミュニケーションの上に成立して、我々は普段それをあまり意識していません。なんとなくできてしまう。
一方、オンラインでは参加者の表情や所作が非常に読み取りづらい(画角/画質的に見えづらいだけでなく、いろんな意味で)ので、リアルと同様の表情や所作の観察に基づく場づくりをしていくことが非常に困難になってしまいます。
オンラインプログラムのトライアル実施のときも、N中等部/N高の通学コースでオンライン授業に切り替えたときも、教職員からのFBは「オンラインでは授業を聞いてくれているかわからなくて不安になる」「反応がなくて話しづらい」という内容がほとんどでした。zoomの画面オフとかもそうですね。相手の表情や所作が見えないと非常にやりづらい。
我々が学習の場をつくるとき、たえずその場を観察して「生徒/参加者が自分の話を聞いてくれている」「授業/ファシリテーションを成立させることができている」ということを確認しながら進行をしています。
が、いざオンラインになってみると、こうした認識はほんの一瞬視線が合うことや、微かな表情の変化や頷きなどの所作を観察/知覚することで、かろうじて確認できた非常に繊細なものだったんだなあ、としみじみ思います。同時に、人間の知覚/観察の能力は凄まじいな、とゾクゾクもします。
チャットとオーバーリアクションがオンライン授業やグループワークをやりやすくする
話が少し逸れてしまいましたが、「zoomに慣れよう vol.1」ではzoomの使い方の学習は大前提として、「オーバーリアクション」と「チャット」に重点が置かれています。
前述のようなリアルからオンラインに遷移する際に発生する困難さを、生徒/参加者のチャットやオーバーリアクションで解消しようというのが狙いです。
(チャットについてはクイズ大会という遊戯的なアクティビティが用意されていますが、欲を言えばオーバーリアクションについても何かしらのアクティビティを準備したいところではあります)
チャットで反応する文化が根付いてくると、リアルでのように表情や所作のセンサリングが困難でもチャットの盛り上がりによってそれが一部代替できます。
文章でコメントがくるのもよいのですが、もっとハードルが低い「www」や「それなー」や「うおおおおおおおおお」のようなとくに意味のない相槌や感嘆詞などをチャットでコメントする文化が醸成されていくと、自分の説明や問いかけにも生徒/参加者が逐一反応してくれるようになり、そのチャットの盛り上がりを見ているだけの他の生徒/参加者も、話に意識を向けてくれるようになります。Facebookやinstagramのいいね、twitterのlikeと同じですね。
生徒/参加者がチャットで反応しやすい問いかけを定期的に投げかけたり、大きく頷いたりなどのオーバーリアクションをしてもらうグランドルールを提示し協力してもらうことで、運営側にとっても授業/ワークショップの進行がぐっと楽になってきます。これは生徒/参加者が主体のグループワークになったときの生徒/参加者間のコミュニケーションにおいても同様です。
チャットやオーバーリアクションのしやすさが授業/ファシリテーション/グループワークのやりやすさになると言っても過言ではありません。
チャットの活用で大切にしているポイント
長くなってしまいそうなので、あとはポイントでお話させてください。
・プログラムの中での問いかけではチャットで回答しやすいものからスタートする
ワークショップではパワフルな問いかけが重んじられますが、オンラインでは全ての問いかけをパワフルにするとチャットが静まり返ってしまいます。プログラム序盤での問いはチャットで返しやすいライトな問いかけを心がけるとよいかと。
・チャットの拾い方はライブ配信者のコメントの拾い方を参考に
生徒/参加者からのチャットはできるだけ拾うようにすると、チャットが盛り上がります。チャットで寄せられるコメントをどんどん拾ってコミュニケーションしていくスキルは、人気のあるネットライブ配信者のコメントの拾い方がとても参考になりました。
いや、ほんとすごいんです。ニコ生、インスタライブ、ツイキャス、YouTube Liveでも17liveでも興味のある方は是非ご参考ください。もし「この人のコメントの拾い方がすごい!」というオススメの配信者がいたら、教えてもらえるとありがたいです。
・チャットでの発言内容を評価しない
チャットで寄せられるコメントを拾っても、それにポジティブ/ネガティブな評価をしてしまっていると生徒/参加者は徐々にその評価を気にするようになり、活発化を妨げることになってしまいがちだな、と。
もちろん他者を貶めるようなコメント内容には注意したほうがよいですが、可能な範囲で評価はしないことをおすすめします。
・提供者自身も表情/所作でのオーバーリアクションを心がける(適度に)
逆に生徒/参加者にとっても教員/ファシリテーターの表情や所作が見えづらく、リアルでのセンサリングが困難です。教員/ファシリテーターのような提供者側も、表情や所作を(引かれない程度に)大きく分かりやすく見せていくことで、生徒/参加者も安心してオーバーリアクションを取りやすくなっていきます。
その他にもいろいろとあるのですが、これはきっと次の記事で江村くんが追加してくれると思います。
MURALなどの参加者の動きが可視化されるオンラインホワイトボードも、リアルのセンサリングの一部を機能的に代替できうるサービスかもしれません。(このまえ僕らのワークショップの先生的な人たちから教えてもらいました)。こちらも中高生向けのワークショップや体験学習で活用でき次第レポートできたらいいなと思っています。
読んでいただいてありがとうございました!
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