初対面の中高生がオンラインでグループワークやワークショップができるようになるには
こんにちは。園です。これからこのマガジンではzoomやslackを活用して中高生がオンライン上でグループワークを実施できるようになることを目指したトレーニングプログラムのスライドを解説と一緒に紹介していきたいと思います。
マガジンの内容
0. 全体についての説明 ←今回はこの記事
1. zoomに慣れよう Vol.1 チャット機能でクイズゲーム
2. zoomに慣れよう Vol.2 ブレイクアウトルームでじゃんけん&しりとり
3. zoomに慣れよう Vol.3 ホワイトボードでドローイング、連想作文
4. zoomで雑談 ギャラリービューで雑談
5. zoomで対話 スポットライトビデオでトーキングスティック
6. zoomでグループワーク
0がこの記事です。一連のトレーニングプログラムの背景や全体概要について重点を置いて紹介します。1から6ではプログラムのスライドと解説を公開していきます。
2020年3月にこのプログラムの冒頭の「zoomに慣れよう Vol.1」を紹介したN中等部のブログが話題になり、そのご縁で担当者がedtechzineさんにも寄稿させていただいたこともあったので、2の「zoomに慣れよう Vol.1」の中身についてはそちらの記事も良ければ参照してみてください。
N中等部ニュース・トピックスでの記事
edtechzineでの記事
もともとはzoomで「授業」をする為のプログラムではなかった
改めて全体の内容ですが、全部で6コマあり、それぞれ50分のプログラムになります。
・zoomに慣れよう Vol.1 チャット機能でクイズゲーム
・zoomに慣れよう Vol.2 ブレイクアウトルームでじゃんけん&しりとり
・zoomに慣れよう Vol.3 ホワイトボードでドローイング、連想作文
・zoomで雑談 ギャラリービューで雑談
・zoomで対話 スポットライトビデオでトーキングスティック
・zoomでグループワーク
どうしてこんなに時間をかけてzoomに慣れていくのか。授業枠がもったいない!という声も聞こえてきそうですが……
なぜグループワークができるようになるまでにこれだけ時間をかけるのか、zoomに慣れて、雑談して、対話して、というような構成になっているのか説明します。
まず、そもそもこのプログラムは上記の記事で書かれているような「zoomを使った授業」のためのものではありませんでした。このプログラムは新型コロナウイルス対策用のオンライン授業のために作ったものではなく、2020年4月に開設したN中等部ネットコースの21世紀型スキルプログラムのオリエンテーション的な位置づけの授業として制作していたものです。
角川ドワンゴ学園では、21世紀型スキル学習という能力開発のための授業を提供しています。(参考:経産省未来の教室実証事業)これらのプログラムはワークショップ形式で参加者同士が正解のない問いについて話し合いながら取り組み、学習をしていくプログラムなので、これらを本格的に実施していく前にオンライン上でグループワークができるようになるためのトレーニングが必要でした。
新型コロナウイルスの影響で3月からN中等部・N高の通学コースにおいてオンラインでの授業実施が急遽必要となったことを受け、そのオリエンテーション的なプログラムを転用して、オンライン授業に広く活用することになったのです。
そのため、このプログラム制作にはもともと
・教職員/生徒において関係構築ができていない状態
・生徒のPCスキルに高低差がある
という大前提があり、プログラムのなかでzoomを使いこなせるスキルが身につくと同時に人間関係が構築できることを目指していました。一定の時間をかけてzoomに慣れて、雑談して、対話してというような構成になっているのはそういう背景があります。
プログラム全体の目標はzoomを使って生徒同士がすこし仲良くなること
上記の背景もあり、前半の3コマ「zoomに慣れよう vol.1〜3」はzoomでのグループワークに必要な機能を実際に使ってみながら、教職員と生徒、生徒と生徒がコミュニケーションができ、関係開始ができることを目標にしています。
前半の遊びと混ぜたプログラムについて
・zoomに慣れよう Vol.1 チャット機能でクイズゲーム
・zoomに慣れよう Vol.2 ブレイクアウトルームでじゃんけん&しりとり
・zoomに慣れよう Vol.3 ホワイトボードでドローイング、連想作文
「zoomに慣れよう Vol.1」ではzoom上でのクイズ遊びを通してチャット機能の活用を学んでいきます。
「zoomに慣れよう Vol.2」では、しりとりやじゃんけんなどの素朴な遊びを通してブレイクアウトルームの活用を学びます。
「zoomに慣れよう Vol.3」ではドローイングゲーム、連想作文を通してホワイトボード機能やzoomと他アプリの同時併用を学びます。
この前半の3コマでは誰でも参加しやすく置いてけぼりにならない素朴な遊びをしながら、zoomの基本的な操作を学習するという構造になっています。
遊び/アクティビティについても「クイズ」➝「しりとり」➝「ドローイング」と徐々に正解がなくなっていき、自分なりの思考をアウトプットするものに段階的に変化していきます。このステップも最終的に個々人の思考をグループワーク内でアウトプットできるようになるという目標に向けた足場がけになっています。
後半の雑談/対話と混ぜたプログラムについて
・zoomで雑談 ギャラリービューで雑談
・zoomで対話 スポットライトビデオでトーキングスティック
・zoomでグループワーク
「zoomで雑談 ギャラリービューで雑談」ではギャラリービュー機能を使って複数名で共通の話題を探しながら雑談をしてもらいます。
「zoomで対話 スポットライト機能でトーキングスティック」では、スポットライトビデオを活用しながら、トーキングスティックというネイティブ・アメリカンの対話方法をモチーフにしてダイアローグします。
「zoomでグループワーク」では、これまでに学習した様々なzoomの機能をつかって合意形成にチャレンジします。
後半ではグループワークの実践に向けて、zoomの機能を活用しながらも、よりコミュニケーションの自由度が上がり、前半と比較するとハードルが上がっています。
雑談〜対話のパートは、グループワークに入るまえに雑談や対話のワークショップを通してグループワークができる程度に「関係づくり≒場づくり」ができることを目指した内容になっています。こちらはまた後日、解説と一緒にスライドを公開したいと考えています。
有り体に言えば、このプログラムは「zoomを使えるようになりつつ、軽く一緒に遊んでみて、少し仲良くなったところで、おしゃべりしたり、ともに語り合ってみる」という流れになっています。
オンライン上でのグループワークはいとも簡単に
自然消滅してしまう
2016年にN高を開校した当初もzoomでオンライン上でのグループワークを開催する機会が度々ありました。slack上での非同期型コミュニケーションでは生徒間でそこそこやり取りができていても、zoomで同期型のコミュニケーションかつ初対面となるとなかなかコミュニケーションが成立しませんでした。関係構築が不十分な状態でグループワークを実施しても、徐々に生徒からの発言が減っていき、沈黙や離脱でグループワークが自然消滅してしまうという苦い経験を何度もしました。
中高生に限らずともオンライン上で初対面のクラスメイトや、そこまで仲良くない知人と一緒にグループワークをするというのは、なかなかハードルが高いものです。
リアルな場においても初対面同士でアイスブレイクが不十分なままワークショップを実施しても話は活発化しません。オンラインでは相手の表情や所作などが見えづらく、目が合うこともないのでノンバーバルなコミュニケーションの難易度が上がってしまいます。そのぶん、身振り手振りを大げさにしたり、チャットなどを駆使してバーバルなコミュニケーションの質と量を担保する必要があります。そのあたりはこの次の「zoomに慣れよう vol.1 チャット機能でクイズゲーム」のスライドと解説で触れていきたいと思います。
社会接続とオンライン上のコミュニケーションスキル
角川ドワンゴ学園とドワンゴではリモートワークが始まってから2ヶ月が経とうとしています。3〜4月は僕もチームメンバーとのコミュニケーションや会議はほぼslack、zoom、電話のみで直接会うことなく仕事をしています。
きっと多くの方もそうだと思いますが、リモートワークで複数のメンバーと仕事をしていくうえではコミュニケーション上の困り感も少なくはありません。
コミュニケーションのオンラインへの転換は今回のコロナによってより一層加速していきそうですが、これからの時代の社会接続においてはオンライン/非リアルのコミュニケーションスキルの豊かさがより一層求められていくようになるんじゃないかなと。現在のこの取組が、数十年先の時代まで生きてゆくことになる中高生たちのオンライン/非リアルのコミュニケーションをより豊かにしていけるような学習になったらいいなと思っています。
読んでいただきありがとうございました!
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