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一膳めし屋 丸久

みなさんご機嫌よう。もーやんです。

秋の夜長の読書感想文。本日は、最近めちゃくちゃ好きな『一膳めし屋 丸久(まるきゅう)』(中島 久枝著)シリーズをご紹介。

もう、ほんと、わたくしの『好き』というか『萌え』ポイントが詰まっております。

また、主人公のお高さんはわたくしと同じ29歳になった年。思わず親近感。でも、同じ年で店主ってすごいなぁ・・・。

文章から漂う雰囲気も大人で、言葉遣いや立ち居振る舞いも”柔らかくも、芯のある自立した女性”というレディな魅力にあふれています。

〇大好きな料理系小説

みをつくし料理帖も、包丁侍の鮎川さんも、なんでも、とにかく料理系の時代小説は私の大好物。もれなく読みます。

本書も、高級日本料理屋から独立した亡き父の店を引き継ぎ、そこそこ繁盛させているお高さんが主役。

安定し始めているけれど、まだ模索中。常連さんや幼馴染、父の代から働くお栄など周囲の人が手を出し口を出し、暖かく見守っています。

特筆すべきは、食材や料理の表現。作者の中島さんはフードライターとして活躍されているとあって、素晴らしい。ぬるぬるとか、つやつやとか、普通の音をたくさん使うのに、使う場所が的確。短くシンプルな文章で、砂糖と醤油、みりんで煮た魚の香りがしてくるの。たまらないわぁ。

毎話、必ず料理が出てきます。どんな魚を選ぶと美味しいのか、旬の野菜、調理の仕方、ぜんぶ分かってないと書けない。あとは、相当な食いしん坊じゃないと、こんなに美味しく書けないと思うのよ。お腹すく~( *´艸`)

〇心揺さぶられる人情もの

良い人情ものは、悪役がいません。(持論)

だって、みんな味が出て憎めないの。この!と感じても、すぐ「でもそういう時もあるよね、場合によるよね、いるいるこういう人!」とか考えちゃう。

一膳めし屋のメンバーは、割と大人しい。唯一、年頃なお近ちゃんは過激だけど素直で可愛いし。見ててサッパリと気持ちの良いメンバー。

その分、お客さんや周囲の人の仕様のなさが際立ちます。笑

特に若者。お近ちゃんに下駄で殴られる剛太なんか、本当にありそうで情けない。いくら幼馴染がお嫁に行ってちょっと寂しいとは言え、好いてくれた女の子にそんな姿見せたら幻滅されるわ。下駄で殴るお近ちゃんもすごいけど。

絵描きの学生達の「好き」と「才能」と「未来」で苦悩する様も、笑顔も泣き顔も全部こころ揺さぶられます。

〇頭の中で動き出すキャラクター達

数多く登場するキャラクターは、全員まったく異なります。もう、キャラが立ちすぎててすごい。みんな自分の思う通りに進んでいきそうで、頭の中で想像しても先が読めません。

お高さんの幸せを願う常連3人衆も、口喧しくて面白くて魅力的。

3巻で、作太郎に思わず呼びかけたシーン。奥手なお高さんが、まさか告白めいたこと言うなんて思わなくて、ほんとにポロっと言っちゃった感。読んでても正にそう感じて、ポカンとした後「・・・キャーーーーー(゚∀゚)!!!」と叫びました。大いなる第一歩。作さん早く帰ってきてね。

〇泣きそうになったシーン

ほんとうに、グッと掴まれて心臓がえぐれたシーン。女性の心の機微を上手く書いてます。

それは第3巻の2話。何かとお高さんを頼りにする腐れ縁の政次。毎日のように顔を出しては、面倒ごとを持ちつ持たれつ。頼りになる親友です。でも、そこにモヤモヤしているのが政次の奥さんお咲ちゃん。

これって、時代関係ない悩みよね。男女の友達がいるカップルは、本当に多そう。

お咲ちゃんは、些細なことの積み重ねから、どんどん、どんどん悪い方へ気になります。そんな考えを振り払おうとしても、ふとしたことで実感してしまう。そしてついに、心の痛みが表に出てしまいます。

本当に自分は政次の一番なのか。
二番目だったりして。
妻なのに。
もしかして、もしかして。
涙がぽたりと落ちた。

ここ!ほんとに、心がキューっとなりました。それまでは、やきもち焼きなお咲ちゃんにも思うところはあったけど、大好きな旦那さんが離れてしまうと恐れた彼女の切なさと悲しさったら!お蔦さんの優しさにトキメキつつ、「政次ぃい!」と嘆きつつ読みました。

全文載せたいけど、泣く泣く断念。ぜひ読んでみてね。

この後は、無事『ごちそうさまぁ~♪』な展開で安心したけど、現代女子と同じ悩みに共感の嵐。

〇お高さんのお店と恋の今後を応援

愛を語って長くなりましたが、最後まで追いかけたい小説がまた増えてしまいました・・・。良いことよね。

まだ登場していない昔の男も気になりますが、優しくて陰のあるプリンス作太郎さん好きなので応援。一番はお高さんが好きなので、誰とも添い遂げないエンドでも良いです。お店とお客さんがパートナーみたいな。ふふ。

お栄さんも幸せになってほしいなぁ。大きなお世話って言われそうだけれど。お近ちゃんもね。

あとは、お手軽そばだしを辞めた今後のお店も気になる。毎回登場する料理の描写をとても楽しみにしているので、腕を上げたお高さんが作り出す逸品は垂涎ものなのでしょうね。

好き!

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