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アメリカ黒人音楽入門③偉大なる『スティーヴィー・ワンダー』❷ 1979~1987

2021/06/24投稿の『スティーヴィー・ワンダー』の記事の続きです。

今回は1979年から。

1979年

『シークレット・ライフ』サウンドトラックアルバム

「The Secret Life Of Plants」という結局公開されなかったドキュメンタリー映画のサントラをスティーヴィーが製作。全20曲収録。

公開されなかった映画のサントラということで地味な存在だけど、良曲がいくつかあります。

Power Flower.

隠れた名曲だと思っています。

Come Back As A Flower.

スティーヴィーの前妻、シリータ・ライトがボーカルです。

The Secret Life of Plants.

映画エンディングのスティーヴィー登場・歌唱シーン。

1980年

『ホッター・ザン・ジュライ』19thアルバム

『シークレット・ライフ』の商業的かつ重大な失望。そして1980年という年代の節目にあって、半端ない決意でこのアルバムを製作。

Master Blaster.(Jammin')

レゲエのレジェンド『ボブ・マーリー』への賛歌。
1980年秋の米国ツアーではオープニングアクトとしてボブ・マーリーを招聘。ステージで共演しました。

Lately.

はっきりいって名曲。

Lately.Jodeci

1993年Jodeciによるカバー。

Happy Birthday.

『マーティン・ルーサー・キング・ジュニア』の誕生日を祝日にする社会活動のため、このシングルを制作した。

1982年

Ebony and Ivory.(1982)Paul McCartney & Stevie Wonder.

作詞・作曲 ポール・マッカートニー
プロデュース ジョージ・マーティン

『タッグ・オブ・ウォー』ポール・マッカートニー

1982年ポール・マッカートニーのアルバム『タッグ・オブ・ウォー』収録のシングル曲。

1981年2月27日、モントセラトにて録音。楽器は全てポールとスティーヴィーが演奏。ブラックミュージックの巨匠スティーヴィーと、ポップミュージックの天才ポールの組み合わせは「夢の共演」とも言われた。

ポールにとってはビートルズ解散後、ウイングス時代を含めてイギリス・アメリカ両方の国で1位を獲得した初めて、かつ唯一の曲となった。

PVも2人の共演だが、お互いのスケジュールが合わなかったので別々に撮影したものを合成して作られている。

Ebony and Ivory.Paul McCartney & Stevie Wonder.Live at White House 2010

2010年 ポールがガーシュウィン賞を受賞した際の授賞式で、会場であるホワイトハウスで、アメリカ初の黒人大統領であるバラク・オバマ大統領の前で、スティーヴィーと共にこの曲を演奏した。

『ミュージックエイリアム』ベストアルバム

なぜここでベストアルバムかというと、オリジナルの書き下ろし曲が4曲収録されているので。

アナログ2枚組でスティーヴィーがセルフ・プロデュースをするようになった、1971年以降の作品から選曲されている。

本当の意味で『ベストアルバム』で、良曲しか入っていない。

アルバム収録の書き下ろし4曲。

That Girl.

Do I Do.

Ribbon In The Sky.

Front Line.

1984年

『ウーマン・イン・レッド』サウンドトラックアルバム

The Woman in Red.1984 Trailer

映画『ウーマン・イン・レッド』1984年公開 監督・脚本 ジーン・ワイルダー 出演  ジーン・ワイルダー、ケリー・ルブルック他

このラブコメ映画のサントラをスティーヴィーが手がけた。

I Just Called to Say I Love You.(心の愛)

アカデミー歌曲賞とゴールデングローブ賞主題歌賞を受賞。
シングルとしても、本国のアメリカでは『ビルボード』誌のBillboard Hot 100、R&Bチャート、アダルト・コンテンポラリー・チャートの3部門で1位を獲得する大ヒット。
イギリスでは、スティーヴィーにとって初の全英シングルチャート1位獲得作品。

もともと1979年に日本のフォークデュオ『ブレッド&バター』へ提供した楽曲。
その時は「I Just Called To Say I Love You」以外の歌詞はなく、松任谷由実が作詞、細野晴臣が編曲を担当。
「特別な気持ちで」というタイトルで発売を待つばかりであったが、直前にスティーヴィー側から、映画の主題歌として使うためこちらに先に発売させて欲しいという申し出があったため、発売は中止となった。

I Just Called To Say I Love You.Bread & Butter.

5年後にリリースの許可が出たので再レコーディングし、発表している。
 その後、スティーヴィーがパートナーとの間で曲の著作権問題で裁判になった時、ブレッド&バターに曲をプレゼントした際のデモテープが証拠となり勝訴した。

Remember My Love.Bread & Butter.

そのお礼として作った曲が、「Remember My Love」である。

Love Light in Flight.

もう一曲アルバム収録で個人的に好きな曲。

1985年

SYNTHESIZER MEDLEY (From the 1985 Grammy Awards ceremony)

1985年2月26日の第27回グラミー賞より、『シンセサイザー・メドレー』という特別パフォーマンス。

共演はスティーヴィー・ワンダー、ハービー・ハンコック、ハワード・ジョーンズ、トーマス・ドルビーの4人。

不満があるとすれば、パフォーマンス時間が短すぎる。

『イン・スクエア・サークル』20thアルバム

Overjoyed.

1979年のアルバム『シークレット・ライフ』のアウトテイクだった曲。
その後に再録音され、アルバム『イン・スクエア・サークル』に収録された。

It's Wrong.(Apartheid)

この曲は、南アフリカ共和国のアパルトヘイトを批判したプロテストソングで、コサ語のコーラスを取り入れた。

またこの年(1985年)は、『We Are The World』に参加。
ミュージシャン、ボブ・ゲルドフが提唱した『バンド・エイド』の成功に触発されてアフリカの飢餓と貧困層を解消する目的で作られたキャンペーンソング。

We Are The World.U.S.A For Africa.

作詞・作曲 ー マイケル・ジャクソン、ライオネル・リッチー
プロデュース ー クインシー・ジョーンズ

スティーヴィーはブリッジ部分でリードボーカルをとった。

※しかし1985年7月のLIVE AIDには不参加。スティーヴィーはポスターに名前が掲載されていたにもかかわらず。
本番前日になりスティーヴィーとマイケルがデュエットで出演ということになった。
本番当日、『マイケルとスティーヴィーが共にフィラデルフィア入りした』ということが本番中のステージで発表され会場は一気にヒートアップ。
ところが2人の消息は、それっきりつかめなくなり結局、会場に姿を見せることはなかった。

That's What Friends Are For.(愛のハーモニー)ディオンヌ・ワーウィック、スティーヴィー・ワンダー、グラディス・ナイト、エルトン・ジョン

アルバム『フレンズ』ディオンヌ・ワーウィック収録

1曲目「That's What Friends Are For」はエイズ救済資金の為の歌。

この曲はバート・バカラックとキャロル・ベイヤー・セイガーが制作した楽曲。

That's What Friends Are For.Rod Stewart.

1982年の映画『ラブ IN ニューヨーク』のサウンドトラックに収録されたロッド・スチュワートのバージョンがオリジナル。

この曲を当初はディオンヌ・ワーウィックとスティーヴィー・ワンダーだけのデュエットにする予定だった。
このセッションに共同プロデューサーとして参加した作者バート・バカラックは、ゲストを増やそうと考えた。
ワーウィックの指名でグラディス・ナイトとエルトン・ジョンも迎えられた。

There Must Be An Angel.(Playing With My Heart.)Eurythmics.

ユーリズミックスのこのシングル曲にハーモニカでゲスト参加。

アルバム収録の音源(バージョン)なら、スティーヴィーのハーモニカがたっぷり聴けます。

1987年

『キャラクターズ』21thアルバム

これといったヒット曲が収録されていないので、地味な存在だけど、ぜひ再評価されて欲しいアルバム。

With Each Beat of My Heart.

You Will Know.

Skeletons.

『Skeletons(骸骨)』のタイトルが示すとおり、人間の外面の皮をはぐと、嘘と欺瞞に満ちた本質が隠されているという内容。

Get It.

マイケル・ジャクソンがボーカルで参加。

Just Good Friends.Michael Jackson feat.Stevie Wonder.

同年発売のマイケル・ジャクソンのアルバム『BAD』収録のこの曲でも二人は共演。

1980年代はシングルヒット曲だけを聴くと、定番ラブバラードばかり目立って、若いリスナーからそっぽ向かれそうですが、チャートアクション、人気、一般認知度など含めて見ると、この頃は明らかにスティーヴィー・ワンダーの黄金期です。

ただ時代的に、1970年代後半からスティーヴィー自身がリードしてきた黒人ミュージシャンの地位向上が明かで、1980年代はR&B、ブラック・ミュージックは、一個の大きな音楽的ムーブメントです。

マイケル・ジャクソン、プリンスなどが台頭し、さらに黒人音楽シーンを引っ張り、1990年代のR&B全盛期に突入します。

またサウンド面でもシンセやトーキングモジュレーターを多用した電子音楽という分野でも、スティーヴィーは早い時期から革新的でした。

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