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北海道・函館 ワーケーション・コワーキングスペース事情【前編】

北海道有数の観光地である函館は、MICE・ワーケーションといったビジネストラベル・イベントにも適した町、地域です。「MICE TIMES ONLINE」編集部が実際にワーケーションを実施。ワーケーションの視点から函館の魅力・情報をお伝えします。
※当記事の画像はすべて2024年7月~8月に当編集部で撮影したものです。


坂の上から函館港方面を眺める。函館ならではの眺望。

開港160年・北海道の南の玄関、歴史と文化を感じるたたずまい

函館市は、北海道南部に位置する都市で、北海道では札幌市、旭川市に次ぐ3番目の人口を有します。8月でも最高平均気温は25度ほどと夏は大変過ごしやすく、北海道としては冬場の雪も少ない穏やかな気候が特徴です。

総面積は677平方キロメートルと広大ですが、一般的に「函館」と聞いてイメージするエリアは古くからの市街であり、市電を中心に自動車がなくても十分にワーケーションできる範囲に収まっています。

函館は、北海道の南端部に位置し、北国としては比較的温暖な気候風土を持っており、日本最初の貿易港の一つとして世界に開かれ、さまざまな外国の文化を取り入れるとともに、水産業や造船業を主要産業として発展を遂げてきました。
現在は、その歴史と異国情緒あふれる街並み、四季を通じてさまざまな表情を見せる自然、豊かな海と爽やかな気候に育まれた多彩な食など、さまざまな観光資源を生かし、毎年500万人以上の観光客が訪れる国際観光都市として賑わっています。また、東日本の主要都市とを結ぶ北海道新幹線、東京・大阪・名古屋・台北(台湾)などとを結ぶ多くの航空路、本州とのフェリー航路や世界中のクルーズ船が寄港する港湾といった交通網も充実しており、国内外とのアクセスが大変便利な都市です。

(函館市 Webサイトより引用)

■人口は減少傾向にあるも、魅力は衰えていません


かつての函館は北海道最大の都市であり、全国でも屈指の規模を誇りました。(1930年に全国9位の人口)しかし、1980年以降人口は減少を続け、現在は24万人弱となっています。市中心部に複数あったデパートも数を減らし、往時のにぎわいを知る人には少しさびしさもあるかもしれません。

一方、年間500万人以上の観光客が訪れる観光都市としての魅力は近年ますます注目されているといえます。夏季を中心に特にアジア圏からのインバウンドは急増しています。新たな商業施設や宿泊施設も開業しており、個性的なカフェやショップもあちこちで目にすることができます。ラッキーピエロやハセガワストアといった昔から市民に愛されるお店も存在感があります。

多くの市民の方がたいせつに暮らす町だからこそ、今も町の魅力は衰えていないのだと思います。

大三坂に建つクラシカルな建物。中にはコワーキングスペースが。

■函館でしか出会えない風景が刺激を与えてくれる

1859年に江戸幕府が横浜、長崎とともに箱館を対外貿易港として開港。現在の情緒あふれる町並みができるきっかけとなりました。特徴的な広い道幅の坂や碁盤の目のような道路は度重なる大火から復興する過程で生まれました。

函館ハリストス正教会、旧函館区公会堂、旧イギリス領事館といった洋風建築群や、1階が和風で2階が洋風の和洋折衷建築、赤レンガの並ぶ歴史的な港湾施設など建物を見て回るだけでも心躍ります。旅行や仕事で全国の多くの街や地域を訪ねていますが、函館に似た町は思い当たりません。

函館の印象的な町並みや風景は普段の職場を離れて、ワーケーションをする方にはインスピレーションを与えてくれるかもしれませんね。


滞在先・ワークスペース・交通・グルメ、コンパクトなエリアにひととおり揃う

実際にワーケーションを行うにあたり、函館はどういった環境なのでしょうか。いくつの要素に分けて見ていきます。2024年夏に1週間程度のワーケーションを実施した経験を踏まえてお伝えします。

■ワークスペース

後述しますが、結論としては利用しやすいコワーキングスペースが複数あり、短時間での作業ができるカフェ、合宿・研修に向いた施設など幅広いワーケーションに向いた施設が揃っています。こういったスペースを出先で見つけるのは思った以上に苦戦することが多いのですが、函館では困りません。コワーキングスペースで利用者が多くて、席を見つけられないということもありません。

■滞在先

観光都市である函館にはホテルが多く立地します。中心部からタクシーで15分ほどの距離に湯の川温泉があり、函館宿泊者の約3割が利用しています。ホテルは主に函館駅周辺と五稜郭周辺に集まっていて、選択肢は多くあります。ただ、観光シーズンはホテルによっては長期滞在の予約が難しくなるかもしれません。早めの予約をおすすめします。

ビジネスホテルであれば2024年夏でも1泊5000円程度から見つかりますので、観光都市であるにもかかわらず、予算を抑えて滞在できます。ワーケーションということに限れば、JR函館駅の近くである必要はありません。市内の移動に便利な市電の電停に近い方が利便性は増します。函館駅周辺は観光客に向けた飲食店が多く、五稜郭エリアは多様なお店が見つかると感じました。
今回は函館駅前電停が近いビジネスホテルで7連泊しました。函館のお祭りがある時期で夏の観光シーズンでもありましたが、1泊平均1室7000円程度となりました。

初めての函館や短期滞在は函館駅周辺が観光やグルメ(朝市など)で楽しめますが、五稜郭エリアは暮らしやすさを感じられるため中長期の滞在では選択肢に入れたいです。湯の川温泉も温泉という捨てがたい魅力があります。期間や目的に応じて途中で滞在先を変えるのも面白そうです。

十字街電停。お祭りのシーズンでしたので、ユニークな車両も行き来していました。

■交通・移動手段

市電:中心部の移動は函館市電です。主要な地点にアクセスできます。観光の起点になるのは路線の乗り換えができる「十字街」電停。ベイエリアや西部地区はここから徒歩数分。函館駅、市役所、五稜郭、湯の川温泉には乗り換え無しで移動できます。観光シーズンにはやや混み合いますが、本数も多く、車窓も楽しめるため退屈知らず。路面電車の便利さを実感できます。交通系ICカードが利用でき、1日乗車券は600円です。
主要なワークスペース、ホテルへの移動を考えると、市電の電停近くの滞在が便利さを実感できます。

バス:市電ではカバーできない場所へのアクセスはバスも便利です。路線バスは主に函館バスとなり、地元の方の利用が多い印象。市外・郊外へも路線は伸びており、ちょっとしたバス旅気分で利用するのもよさそうです。

タクシー:函館空港、JR函館駅にはタクシーが常駐しています。中心部では流しているタクシーを見かけます。観光シーズンは予約しておくのが無難です。空港へのバスが混雑することもあるため、タクシーの利用が便利なことがあります。

・函館市電 https://www.city.hakodate.hokkaido.jp/tram/
・函館バス 路線図 http://www.hakobus.co.jp/search/primary_route.html

定番ラッキーピエロ

■飲食店・買い物

飲食店:観光都市ですので、飲食店は数多くあり、観光シーズンでも困ることはありません。観光客に人気の朝市やラッキーピエロなどは行列ができることもありますが、それは観光エリアの一部のお店です。ラッキーピエロでも郊外のお店なら並びませんし、海鮮は朝市以外でもいただくことができます。ワーケーションで滞在するのであれば、地元の方が通うようなお店も見つけたいですね。
ラーメン、海鮮・寿司、ジンギスカンといった北海道らしいグルメも十分満喫できます。

ワンタン入り塩ラーメン

函館駅周辺は海鮮丼、海鮮居酒屋など”函館名物”が目立つものの、五稜郭エリアに行けば、ジャンルは多様です。カフェやスイーツはエリアを問わず、素敵なお店が多いです。
飲食店は総じてレベルが高く、美味しくリーズナブルなお店が多いです。今回の滞在ではイタリアン、焼き鳥、カレーなどもいただきましたが、どちらも大変美味しかったです。食事が楽しみな方は季節を問わず満足度が高いはず。
中心部にはいわゆる全国チェーンの店舗は少ないです。

買い物:コンビニは北海道名物「セイコーマート」をはじめ、3大チェーンはすべて揃います。店舗数も十分です。五稜郭エリアには唯一のデパート「丸井今井」があり、周辺はにぎわいを見せています。スーパー、ドラッグストア、コインランドリーも探せばすぐに見つかります。

■観光・レジャー

ミシュランガイド三ツ星の夜景をはじめ、元町エリア・ベイエリア散策、五稜郭、朝市、湯の川温泉と観光には困ることはありませんが、せっかくのワーケーション。ユニークな楽しみ方、リフレッシュできるものを見つけたいところです。今回、チャレンジしてみたことをいくつかあげておきます。

立待岬を徒歩探訪:市電谷地頭から20分ほどの散歩旅。味のある住宅街を抜け、坂を越えると、パノラマの絶景。海を望むカフェや谷地頭温泉などにも立ち寄れるといいですね。気分転換できて、手軽に大自然を感じられます。風がなければ、海を見ながらベンチで仕事したいと思いました。

・大沼国定公園でワーケーション:函館からJRで1時間弱。大沼(七飯町)は8月日中でも23度しかありませんでした。ここから30分ほど歩いて、国際セミナーハウスのコワーキングスペースで仕事をしたあと、遊覧船に乗ったり、ホッケフライカレーを食べたりと函館からのさらなる日帰りワーケーションを実現できます。クーラーいらずの快適さは京都の人間からすると天国です。

青森ねぶたで東北の夏を堪能!:ワーケーションの中日はお休みとしていましたので、津軽海峡フェリーを使って日帰り青森ねぶたツアーを敢行!青森のホテルはまったく空いていませんでしたが、函館から遠征するならなんとかなりました。ワーケーションの拠点をベースキャンプとして利用することで、身軽に普段行けない場所やイベントに足を運ぶことができます。

「ラブライブ!サンシャイン!!」「ゴールデンカムイ」「PとJK」「犬と私の10の約束」「パコダテ人」「居酒屋兆治」…
映画やアニメ、文学などの舞台としても何度も登場している函館。聖地巡りも捗りそうです。

名探偵コナン劇場版の舞台となったこともあり、お目当てと思われる観光客も多く見かけました

函館市役所。吹き抜けが見事でした

函館市もワーケーションを積極的に応援

函館でワーケーションするにあたり、今回は函館市役所でもお話を伺いました。(別記事にて今後アップ予定です)
函館市はワーケーションの利用促進に力を入れています。ワーケーションのWebサイトや動画をパンフレットを作成されているだけではなく、各地に赴いてイベントに参加されるなどして函館のPRをされているそうです。今回も当編集部の取材に応じていただき、函館でのワーケーションを含めた様々な取り組みについてお話を伺うことができました。

ワーケーション実施企業のサポートもされています。ワークスペースの紹介、各種相談にも対応していただけます。伺った際には「函館市立地環境調査補助金」として視察費用の一部支援、IT企業の拠点開設支援事業補助金についても教えていただきました。

・函館ワーケーション Webサイト https://h-workation.jp
・函館市経済部 企業立地担当(電話)0138-21-3321


●後編はこちら

後編ではコワーキングスペースを実際に使ってみてのレポートを中心にお届けします!


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