北伊豆古道を歩く〜西浦ー内浦編〜
北伊豆の拠点に宿泊し、富士山村山古道を一緒に登った沼津在住の稲葉くんに、本日の踏査区間まで送ってもらう。
前回は古地図と現代地図を重ねても、馴染む古道が浮かび上がらない、机上の調査の限界を痛感した西浦江梨(にしうらえなし)〜西浦古宇(にしうらこう)間の踏査が完了。
続けて読むと伊豆半島一周します。前回の道、西浦エリアはこちら↓
今回、踏査するのは伊豆半島の首の部分に面した、駿河湾の奥の院・西浦〜内浦エリア。ロケハンと机上の事前調査により、道はほぼ確定済み。厳しい山道もなく歩きやすい道が続く予定だ。
なので、今回はゴール設定せず、日が暮れるまでエンドレスに伊豆歩きをすることにした。果たしてどこまで踏査することが出来るのか。
西浦古宇(にしうらこう)
2022年9月15日。7時 西浦古宇の集落に到着。伊豆峯次第の219番目のチェックポイント・神明神社からスタート。
みかん園に囲まれた集落を縫うように細道を歩き県道127号に出る。遊法苑のバス停を右折すると、緩やかに集落越え。早速、一つ目の山を登る。
遊法苑の駐車場を抜けると、一間半(約2.7m)ほどの道幅となり古道らしくなってきた。登れば下り、次の集落へ。旧道の面影はやっぱりある。
西浦立保(にしうらたちぼ)
西浦立保の集落を歩く。伊豆峯次第の220番目のチェックポイント・神明神社に到着。
西浦立保の集落も低木のみかん園が目立つ。それもそのはず、西浦地区は450年前から栽培の歴史がある、静岡県東部を代表するみかんの生産地。山の斜面に植えられたみかんの木は、たくさんの陽の光を浴び、風通しの良い海風によって病気になりにくいそうだ。
下りては登り、次の集落へ山越えの道を歩く。今日は視線の先に富士山が微かに頭を覗かせていた。
西浦平沢(にしうらひらさわ)
西浦平沢の集落を歩く。伊豆西海岸ではお目にかからない人工の白浜・らららサンビーチの手前から旧道に入る。
次の集落までは起伏が少ないので、人の営みを肌で感じながら歩く、丁度良いハイキングコースかもしれない。道祖神が道案内をしてくれるので迷うことがない。
西浦久連(にしうらくづら)
西浦久連の集落を歩く。100mほど県道を行き、同じ太さで右にそれるのが古道だ。
次のチェックポイントはGoogleマップには表示がないお寺さん。洗濯物を干していたお姐さんに尋ねたら丁寧に教えてくれた。
8時 伊豆峯次第の220番目のチェックポイント・宝珠庵に到着。
ウォーキングは「今」を知覚する有効な手段の一つだ。リラックスして、普段より大股で、ゆっくり歩き始める。足の指先まで使えてることを確かめるように一歩、一歩、丁寧に踏み込む。
やがて、足の裏からふくらはぎ、太もも、体、腕、頭と、順に体の動きを意識する。意識はやがて真情に気づき、人と自然の喜びを喜び、悲しみを悲しむようになる。人の幸福は身近なところにあるものなのだ。
西浦木負(にしうらきしょう)
みかん園に囲まれた道を通り、西浦木負の集落を歩く。
伊豆峯次第の224番目のチェックポイント・鮑玉白珠比咩命神社に到着。
続いて、伊豆峯次第の225番目のチェックポイント・蔵王権現。名称の記載がどこにもないが、國學院大学の資料によると、現在は境内に合祀とあるのでおそらく合ってると思われる。
西浦木負の集落は平坦で緩やかに街を抜けて行く印象だ。伊豆石の蔵と石垣が続く古き良き街並み。道標を確認しつつ歩く。
再度、県道に出るとシーサイドカフェ 海のステージの前に出てきた。富士山を借景にした絶景カフェであり、スカンジナビア号とラブライブの聖地でもある。以前、ロケハンで立ち寄った際、充実したカフェメニューからお気に入りとなったお店だ。
かつて、ここ西浦木負地区には豪華客船スカンジナビア号が係留され、1970年から2005年まで日本初の海に浮かぶホテル・レストラン営業がされていた。その後2006年、生まれ故郷であるスウェーデンに向けて曳航中に浸水、そのまま和歌山県沖に沈没してしまったという。
伊豆半島で内浦の話になると、度々耳にしていた伝説の船・スカンジナビア号。店内にはスカンジナビア号にまつわる展示スペースが設けられ、オーナーによるスカンジナビア愛詰まった歴史ストーリーを聞くことが出来る。
西浦木負から内浦へ抜けるトンネルを避ける左側が古道。更に100mほど入ると右に逸れる細道が古道なんだけど、Googleマップでは繋がっていない。
地元の人に聞いたら「通れる。」やっぱり!道の状況を丁寧に教えてくれた。
階段で整備されていて、丁寧に治山が施されている。
階段を登りトンネルの上を抜けると、視界の広いみかん園に出た。軽トラのラジオからは大音量で流れている。空の広い、自然の中で聴く音楽は心地よい。階段のおかげでそこまで登った気がしなかったが、次の集落へは下り道が続く。
おや?本来あってほしいところに道が見える。藪漕ぎしたくないけど、見た以上は見逃せない。しかし、最終的に行き止まり。今回は引き返す。
内浦重須(うちうらおもす)
内浦重須の集落を歩く。伊豆峯次第の226番目のチェックポイント・熊野神社に到着。鳥居の左右にスッと伸びた大クスが印象的、境内に入ると幹周り8-9m、高さ20m以上あるだろうか。更に巨大なクスが迎えてくれた。
内浦重須の集落は、水の流れる音が聞こえる。そんな中、お家に直接引き込まれた専用の水場を発見。洗い物をしていたのだろうか、今は使用されていないようだけど、当時の人の営みに想いを馳せる。
集落から県道へ歩くと長浜城跡の辺りに出てくるので立ち寄ってみることにした。
この城郭は、戦国時代に関東一円を治めた後北条氏の水軍の拠点とされた城跡。駿河湾の奥の院・内浦重須は安定して波が穏やかなので、大型軍船を係留しておくに適した地形だったのだろう。
当時西国で発達していた「安宅船」と呼ばれる大型軍船。北条水軍の事実上の大将である伊勢出身の梶原景宗が安宅船を運用して、武田水軍との戦いを有利に進める足場となったという。
現在は、水軍基地がヨットハーバーとなっており、よく晴れた日には海越しの富士山を望みながら、奧駿河湾の入りくんだ風光明媚な眺めを見渡すことができる。
後半戦に続く↓
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