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北伊豆古道を歩く〜西浦編〜

2022年9月7日。真夏のウォーキングは過酷なのでしばらく休止していが、9月に入り一発目。本日より北伊豆の調査がスタートする。午後からは雨予報なので、午前中でどこまで調査できるのか。

今回、踏査するのは伊豆半島の首の部分に面した、駿河湾の奥の院・西浦エリア。事前準備では何度も地図とにらめっこしていたが、古地図と現代地図を重ねても、しっくりくる古道が浮かび上がってこない。机上の調査が進まない、地味ながらこれまでの中でも、指折りの不安要素の多いコースだ。

続けて読むと伊豆半島一周します。西浦絵梨〜大瀬崎編はこちら↓


6時 西浦江梨(えなし)、伊豆峯次第の214番目のチェックポイント・菅公霊こと八幡神明神社からスタート。昨夜、ロケハンでやって来た時は入り口にロープが掛けられていたけど、ロープがなくなり開放されている。地域で管理されている神社のようだ。

八幡神明神社に菅公霊が習合したのか。地元の人にお話を聞いてみたいところだけど、以前ロケハンに来た時と同じ印象、人の気配がしない静かな集落だ。

神社を出て左手の登り坂を歩く。静かな集落なので自然界の音が耳を通じて心を癒してくれる。内浦の名に相応しく静かに寄せては返す波の音、秋を感じる虫の鳴き声、キジバトの朝の歌と、優雅に大空を飛ぶとんびはピーヒョロロ。

かつての古道はキレイなアスファルトで整備されている。本来はこのあたりから左に逸れていく道があるはずなんだけど、ガードレールの奥に見つけることができない。

古道は急勾配を往く道なので、新しく作った車道は迂回路となったのだろう。出口と思われる座標に古道の名残があった。今回は深追いせず、先へ進む。

工事中のため回り道、古道的には右に続く回り道方面が正解。

さらに上に道が見える。まさか。。

行き止まり。一般的には通り抜けられないことがわかった。でも、古地図を読むと道路の上の森林には、かつての道があったと思われる。雨上がりであり、土砂災害警戒区域であるし、今日はリスクが高いので深追いせず、一旦引き返すことにした。

伊豆峯次第の213番目のチェックポイント・海蔵寺まで引き返すと、人気のない集落から人の声が聞こえてきた。学生の娘さんを車で送る前にタバコを呑むお父さんがいたのだ。

実はこのプロジェクトが始まって以来、最も気になっていた井田ー江梨までの古道。現在の道は、県道を北上して伊豆半島の北西端、駿河湾に突出した大瀬崎を経由して江梨方面へ続く。ところが、古地図では大瀬崎への道はなく井田から江梨へと道があるのだ。

明治22年静岡縣管内全図とGoogleマップを合わせると見えてくる古い道

このルートは山の植物が枯れて道が見やすくなる頃、一番最後に改めての踏査を考えていた。それまでに出来るだけ情報収集しておきたい。そんな時に、千載一遇のチャンス到来。きっと地元の人なら知っているに違いない。どんな返答なのか、気もそぞろに質問をしてみた。

「おはようございます。古い道を探してやってきました。昔の地図を見ると西浦江梨から井田へと続く道があったんです。歩いたことありますか?」

歳の頃は40代と思われるお父さんは少し驚いた顔をした。記憶を辿るように一呼吸、間をあけて答えてくれた。

「小学生の頃、遠足でその道を通ったよ。でも、絶対無理(今は歩けない)だと思う。誰も入ってないから道はないだろうし、動物も出るし。」

なんと!歩いたことある!今は変わり果てた獣道だと思うけど、30年くらい前なら充分踏み跡は残っているはずだ。

「下の方に住む農家さんに聞いてみたら何かわかるかな。」

情報をいただいた。この西浦地区はみかんの生産が盛んな地域、そもそも古道の周辺もみかん園だから私有地、勝手には入れない。次の機会に改めてお話を聞くことにした。

車で移動。山を越えたお隣の集落、西浦久科(くりょう)へ。かろうじて富士山の裾が見える。雲がなければ目の前に富士山、晴れたら絶景なのだろう。先程の行き止まりの延長線上の道を踏査する。

7時半 絶賛、農道拡張工事中。先程の西浦江梨の道もだけど、キレイに整備された舗装道路だ。詰所があったので現場監督さんに話し、踏査させてもらうことになった。

通行止めの先を行くと拡張している途中の砂利道。右側が古道だから、元のサイズの3倍くらいの広い道になるのか。

脇に目をやると石像を発見。拡張中の道が、いにしえの道であることを見ることができた。

先程の行き止まりの反対側までやってきた。こちら側も歩行が困難な獣道なので踏査はここまで。

こうしてGPS地図を見てみると、一部区間通行不可とはいえ、ほぼ古道を繋げることができた。残念だけど、この道はコースとして紹介はできない。海側の県道を採用することにした。

伊豆峯次第の217番目のチェックポイント・熊野神社へ。

机上での事前調査では、次の集落までの道がまた途切れてしまうので、ひとまず車で可能な限りアテをつけてから踏査をする。今までにない地味な調査で距離が全く稼げない。

道を譲ってくれた芝犬。湿った真っ黒なお鼻が健康的。

真っ二つに折れた納経供養塔。

9時半 きめ細やかな、小雨が降り出す。子持ちのサワガニと出会う。

10時 みかん農園の山の中を抜けて西浦足保(あしぼ)へ。竹藪の道を抜けて下り、もう一山越えに行くも途中で道は消える。沼津土肥線、県道へ引き返す。

10時半 西浦古宇(こう)へ。こうして西浦地区を歩いてみると、みかん農園ばかりだ。かつての古道もみかん農園の私道だったりしている。

後で調べてわかったのだが、西浦地区は静岡県東部を代表するみかんの生産地。450年前から栽培の歴史があるそうだ。

出荷は7月上旬から始まり、3月中旬まで続く。駿河湾に面し、温暖な気候に育まれた西浦みかん。伊豆半島の名産をまた一つ知ることができた。

西浦古宇からも行き止まりまで調査完了。

11時 伊豆峯次第の219番目のチェックポイント・神明神社でゴール。


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