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電波戦隊スイハンジャー

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神も仏も小人も天使も異星人も暴れるヒーロー戦隊もの
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#阿蘇

電波戦隊スイハンジャー#100

第六章・豊葦原瑞穂国、ヒーローだって慰安旅行フレグランス2

芳香現象。

物理的な原因がその場に存在しないのに、香りがただよってくる、匂いが感じられる、という霊的現象。

「ねーなんだか青臭い匂いがするんですけど…」

聡介と緋沙子の会話から遡ること3時間前、見た目は豊乳ゆるふわガール。

だが中身は天然なのであまり同性に敵を作らない小岩井きらら、20才は泰安寺の正嗣の書斎にあるDVDを暇つぶし

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電波戦隊スイハンジャー#102

第6章・豊葦原瑞穂国、ヒーローだって慰安旅行阿蘇1

翌朝聡介が目覚めた時には熱は下がっていた。

36度6分。頭痛は無く却って頭がすっきりしている。枕元には一筆箋の書き置きがあった。

明後日の長崎公演が終わったら東京に帰ります。  緋沙子

一筆箋からはかすかにラベンダーとバニラを混ぜたような残り香がした。聡介は母の書き置きを机の引き出しの中に丁寧にしまった。

デジタル目覚まし時計は午前6時

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電波戦隊スイハンジャー#103

第六章・豊葦原瑞穂国、ヒーローだって慰安旅行阿蘇2

1940年1月の昼下がり。

スイスチューリヒ市内で路面電車がカーブを曲がり損ねて横転する事故が、未遂に終わった。

なぜなら一人の細身の紳士が旧約聖書に出てくるサムソンの如きの怪力で倒れそうな巨大な車体を支え、一人の淑女を身を挺して守ったからだ。

この時に事故が起こって通りがかりの女性バイオリニスト、フロレンツィア・バウムガルテンが下敷きに

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電波戦隊スイハンジャー#104

第六章・豊葦原瑞穂国、ヒーローだって慰安旅行阿蘇3

松五郎総統は斜に構えてふふっ、と笑った。

「ニヒルな自分」を演出したかったのだろうがサンリオキャラ顔なので全然様になっていない。

「君たちには、黒川温泉1泊2日。オトナの修学旅行をプレゼントしようではないか。

日程は明日の夕方4時に黒川温泉旅館『岩しみず』入り口前に集合。現地に引率がいるので心配することはない。詳しくは行けば分かる。以上」

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電波戦隊スイハンジャー#105

第六章・豊葦原瑞穂国、ヒーローだって慰安旅行阿蘇4

ぴちょん!

と露天風呂を覆う木屋根の天井からしずくが落ちて、ちょうど鉄太郎のいる辺りに波紋を広げた。

(おい、テツ)と小角はかつての武術の弟子に心の声で呼びかける。

(おまえの狂言の筋書きに、おれ様も少彦名も乗ってやってるんだぜ。お釈迦様は予想外だったが…多少のフライングには目をつぶれ!)

戦隊の男どもは湯けむりの中で赤くなった顔を見合

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電波戦隊スイハンジャー#107

第六章・豊葦原瑞穂の国、ヒーローだって慰安旅行阿蘇6

小角と男メンバー6人が泊る離れ、鷹の間は壁面と屋根を黒くした古民家風の2階建てであった。

夕食から帰ると1階に4組、2階に3組と分けて布団が敷かれてある。

窓を開けると、冷房も要らない程の夜気が部屋中を満たす。阿蘇だけ一足早く秋へと進んでいる…

その夜は「これが独身最後の旅だべなー、みんな、ありがとな」と3日後に結婚式を控えた隆文をきっ

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電波戦隊スイハンジャー#108

第六章・豊葦原瑞穂国、ヒーローだって慰安旅行野上の姓1

以降は、七城米グリーン七城正嗣が大学時代にまとめたレポート「野上鉄太郎の生涯」を参考にして話が進行する。

興梠葛生は、この赤ん坊を「阿蘇の神からの授かり物だ」と養子にして籍に入れ、大事に育てた。

が、4年後に突如、東京神田の柔術家である真鍋廣一《まなべこういち》に鉄太郎を託すことになる。

「何で?願掛けしてまで授かったと思って育てた子

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電波戦隊スイハンジャー#109


第六章・豊葦原瑞穂国、ヒーローだって慰安旅行野上の姓2

旅館から帰る途中、隆文は「夕飯はおらが作る!」と何やら張り切って食材を買い求めていたが…

隆文のエコバッグから出てきたのは鶏肉、人参、大根、ごぼう、小松菜、麦みそに小麦粉…だし用に干ししいたけと鰹節だった。

「どう見ても『だご汁』を作る気ですね」と正嗣が言われるでもなく野菜を洗い始めた。

父と二人の男所帯で当然のように料理している男

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電波戦隊スイハンジャー#110

第六章・豊葦原瑞穂国、ヒーローだって慰安旅行

野上の姓3

和歌山県伊都郡九度山町という所に、九度寺と呼ばれる慈尊院がある。

九度寺の謂れは、空海の母、玉依御前が「息子空海が開いた高野山を見たい」との一心で老いた身ながらはるばる讃岐から出てきたものの…

空海自身が高野山より七里四方は女人禁制の聖地、としてしまった為、御前はこの場所より先まで行けなくなった。

御前はこの寺に逗留し、ご本尊の弥

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電波戦隊スイハンジャー#111

第六章・豊葦原瑞穂国、ヒーローだって慰安旅行野上の姓4

それはなんとも、奇妙な光景であった。

ストーンヘンジを思わせる巨石群のふもとの地面で、7人の若者と阿蘇の地霊が円を作って座り込んでいる。

蘇りの始まりの地で、全てが明かされる。ブッダの予告通りになった、と悟は思った。

阿蘇山の神健磐龍命からいま、真実が明かされるのだ。

悟は緊張して隣の隆文にも聞こえるほどごくり、と音を立てて唾を呑み

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