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電波戦隊スイハンジャー

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神も仏も小人も天使も異星人も暴れるヒーロー戦隊もの
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2022年10月の記事一覧

電波戦隊スイハンジャー#81

第4章・荒ぶる神、シルバー&ピンクの共闘メタモルフォーゼ1

メタモルフォーゼ、生物学用語で「変態」の意味。

変態とは、動物の正常な生育過程において形態を変えることを表す。

例、蛹から蝶への羽化。

時刻は8月10日0時15分。戦隊全員はだだっ広い畳の部屋へと呼び出しを喰らった。

もちろん、事前通告などせず強制的に普通に生活してるメンバーをテレポートさせたのである。

「えーっと隆文くん、さ

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電波戦隊スイハンジャー#82

第4章・荒ぶる神、シルバー&ピンクの共闘メタモルフォーゼ2

長い闇をさすらった後で銀色の光に導かれ、橙色の炎に包まれるというなんだかファンタジックな夢の後で榎本葉子は、京都の自宅のベッドで目覚めた。

ああやっぱり、夢ってのはほとんど忘れてしまうものなんやな…

すごくかっこいい人に助けられた。

菜緒ちゃんに自慢したい夢やったけど、ほとんど覚えてないから説明が出来んやないかい。

頭の奥が重だ

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電波戦隊スイハンジャー#83

第4章・荒ぶる神、シルバー&ピンクの共闘メタモルフォーゼ3

異形なのは、汝だ。

銀髪の男が葉子を指さして言い放った。

野上祥次郎?いいや、野上聡介?ちがう。

あんたは「誰」や?

うちの全力の攻撃。お母ちゃんから禁じられていた「絶対滅」の力が効かん。理解不能の肉体。

異形が何いうてんねん。

でも今、思い知らされた。鏡に映る自分の姿が圧倒的に異形だということを。

謎の男の怨霊に体に入ら

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電波戦隊スイハンジャー#84

第4章・荒ぶる神、シルバー&ピンクの共闘メタモルフォーゼ4

これがお母ちゃんの、本当の姿です…

そう言ってお母ちゃんは、すぐにうちから目線を外した。

恐さに耐えるように両のこぶしをきゅっと握っていた。

まだ園児だったうちは…大変や!お母ちゃんが消えて、何か訳の分からない動物みたいな人が出てきてもうた!

とパニック状態になって、お母ちゃんはどこ?嫌や、お母ちゃんを返してぇー!

と泣きまく

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電波戦隊スイハンジャー#85

第4章・荒ぶる神、シルバー&ピンクの共闘大文字不始末記1

8月12日、東京下町バー「グラン・クリュ」はこの日夜8時きっかりに閉店した。

「と、いう訳でお盆の三が日は休業します。皆さん、いい休暇をお楽しみください」

バーのマスター兼宿屋の社長、勝沼悟はなぜか斜に構えた姿勢でシャンパングラスを掲げて「乾杯」と気取った口調で言った。

古民家の一階を改装した昭和テイストな店内だが、勝沼一人だけヒル

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電波戦隊スイハンジャー#86

第4章・荒ぶる神、シルバー&ピンクの共闘大文字不始末記2

13日の早朝、阿蘇熊本空港の駐車場で琢磨を迎えに来たのは、弟の及磨であった。

髪は琢磨よりかなり短めで、クルーカットを中途半端に伸ばした感じ。

肌も浅黒く日焼けしていて琢磨を精悍にした印象。

というより琢磨と及磨は、わざと髪型でも変えないと母親でも見分けがつかない似すぎている一卵性双生児なのである。

小学校低学年の頃からお互いすり

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電波戦隊スイハンジャー#87

第4章・荒ぶる神、シルバー&ピンクの共闘大文字不始末記3

濃いピンクの百日紅の花びらが、風にはらはらと散って縁側に座る聡介の喪服の襟に落ちた。

祖父、鉄太郎と祖母フロレンツィア、父祥次郎が眠る墓があるこの寺の中庭は、春には桜と牡丹、梅雨には紫陽花、盆の頃には百日紅、秋には曼珠沙華…

冬以外は花がないのを見たことが無かったな、と聡介は思った。

「花が絶えないこの場所で眠りたい」

とドイツ語

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電波戦隊スイハンジャー#88

第4章・荒ぶる神、シルバー&ピンクの共闘、エピローグ大文字不始末記・終

タケヲ。先程、真田さん夫妻と光流くんが帰って行ったよ。

8月16日の夕方、泰安寺の副住職七城正嗣は墓所の一番奥の真新しい墓石に手を合わせながら墓の主である同級生に語りかけた。

7年前から盆になると毎年、真田さん夫妻はお前の墓参りに来てくれる。3年前から、養子の光流くんも連れて来るようになった。

まだ6才ながら、整った眉

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電波戦隊スイハンジャー#89

第五章・豊葦原瑞穂国、ヒーローだって慰安旅行プロローグ、流刑の星

美《うま》し国ぞ…

青く輝くあの国は、何と云うのだ?

ああ、貴方の故郷では惑星まるごとを国と呼ぶのでしたね。

名前などは有りません。
この宇宙の辺境の果ての果ての惑星は、資源は豊富なれど生き物は愚か。
何万年も進歩がない。奪い合い、殺し合うことしか能の無い者たちです。

「私ども」はこの惑星を|地球と呼び棄てております。

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