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EP028. 負けるが勝ち、逃げるが勝ちだよ

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今、私が働いているこの会社、主に官公庁と取引しているからか旧態依然の職場風土がまだ残っているところがあって、一部の人たちには男尊女卑の思想が強く根付いている。
私が所属する部署は比較的若い層の社員が多いので、女性が虐げられるようなことはないけど、仕事上で関わらないといけない他部署には、接触したくないタイプの社員がいる。

今日も嬉しくないことが起こった。
良かれと思って他部署の同僚に提案したら「女のお前が提案なんて生意気な!茶でも淹れてろ!」と罵声を浴びせられた。私も対抗したが相手は聞く耳を持たない。ヒートアップして言い争っているところを他の同僚の仲裁で引き剥がされその場を去った。

こんなことは日常茶飯事。
多くの女子社員は泣き寝入りするんだけど、曲がったことが大っ嫌いな私はいつも衝突して戦ってしまう。

ここのところずっと戦闘が続いていた。
テラスで休憩していた時に、心が疲弊しきっていた私を心配して同期の彼女が話しかけてきてくれた。

「彼らの言いたいように言わせておけばいいじゃない。やりたいようにやらせておけばいいじゃない。」

「嫌だよ。そんなの負けじゃない。認めたくない。頑張ってるのに。あんな奴らの言いなりになんてなりたくない!」

悔しい。腹が立つ。涙が滲んで、口元が震え出す…。

「あのね、子供相手に勝ち負け気にするの?」

「どういうことよ。子供って、今の話と何の関係があるのよ。」

「ゲームでも遊びでも何でもいいんだけど、子供と何か勝負することになったとき、誰かがマジになって勝とうとしてたらどう思う?」

「負けてあげれば良いのにって思うよ。」

「そうよね。子供相手なら自ら負けてあげられるでしょ?」

「もちろんそうよ。当たり前じゃない。本気で相手してどうするの。」

「それよ、答えは。」

「何よ、それ。」

「あの人たちは子供だってこと。」

「何言ってるの?彼らは歴とした大人よ。」

「そうじゃなくて、見かけは大人でも中身は子供。あなたという『人』のことを尊重することすらできない。そんなのって子供だよね。」

「まぁ、言われてみれば分からないでもないけど。」

「でしょ。そんな子供相手に本気になってどうするの?負けたフリをしてあげればいいだけじゃない?」

「確かにそうだけど…。でも人を蔑視するなんて間違ってることは放っておけない。」

「そういう人たちと正面から向き合う必要はないの。」

「どういうこと?」

「あなたに彼らを教育する義務はないってこと。」

「教育?」

「そう。大切なことを分かっていない彼らのために『そんなことは間違ってる』と教えないといけないって義務はないってこと。だから放っておけばいいの。」

「そんなの彼らのためにならない。第一、私が嫌な気分になるよ。」

「あなたを受け入れようとしない嫌な彼らのためにあなたが嫌な思いをして生きたいの?それって大損じゃない?そんなことより、あなたが嫌な思いをしないで済むように、そんな人たちから離れて『あなたのために』生きる方が良くない?」

自分のために向き合ってると思っていたけど、それを望まない彼らのために向き合っていたなんて思ってもみなかった。
確かに頑張っていた自分が損した気分になってきた。

「負けるが勝ち、逃げるが勝ちだよ。勝たなくて良いし、離れれば良いの。戦うことも時には必要かも知れないけど、『かわす』ことも覚えないとね。」

「よく考えたらあなたの言うとおりかも。私って意地を張ってただけかも…。」

「もっと気楽に生きればいいんじゃない?嫌な思いしてイライラ・カリカリする時間が無駄だよ。」

「ほんとそうだね。何だか気分が軽くなってきたよ。ありがとう!」

「その調子でね。じゃ、そろそろ職場に戻ろっか。」

「そうね、戻ってやるか。フフッ。」

もう戦わなくていいんだ。
彼らを除けばお給料も仕事も悪くないんだしもう少し様子を見よう。
それから辞めても遅くはないはず。

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