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甘い果実ep.8

 
 
あの日から3週間…夏休み中ということもあって保健室は静かだ。早崎くんから夏休みの予定を聞かれたのが懐かしいな…
 
ガラガラ~
 
「せんせー」
 
「早崎くん」
 
「どうした?鳩が豆鉄砲くらったような顔して…」
 
「え?だって…」
 
「何?俺が来ないから寂しかった?」
 
そう言って、今までみたいに普通に接してくれる彼が私よりもずっと大人だと思った…
 
「子供どうした?」
 
「関係ないって言ったじゃん」
 
「関係ないなら…なんで俺に話したんだよ?」
 
「それは…酔った勢いで…」
 
「酔ってるからこそ…本音が出たんじゃねーの?
誰かに聞いて欲しかったんでしょ?一人で抱えてるのが辛かったんだろ?俺のこと男として見れないのはわかったから。ならさ…弟とかどう?そしたら何でも話せるんじゃねーの?」
 
「なんで…そんなに優しくするの?」
 
「言ったじゃん。何でもするって…。んで、子供はどうすんの?」
 
「今週末に病院行く」
 
「一緒に行こうか?」
 
「な…何言ってんの?
巻き込むわけにはいかないから…
これは私の問題だから」
 
「ならさ、家で待ってるから」
 
「家って?」
 
「ん?俺んち
終わったら来て」
 
「考えとく…」
 
「待ってるから…
これ…俺の携帯番号。
迎えに来て欲しい時は連絡して…」
 
病院当日。
全てが終わった。少し休んでから帰宅。
体がダルい…携帯番号の書いてある紙を広げた。

〈甘えて良いのかな…一人で居たくない…〉
 
トゥルルル
 
「…今どこ?」
 
「家…」
 
「住所教えて」
 
電話を切って10分もしないうちに呼び鈴が鳴った。重い体を起こし…体を引きずるように歩いて玄関のドアを開けた。
 
「大丈夫?…じゃなさそうだな…」
 
彼にもたれかかると…抱きかかえられベッドまで運ばれた。
 
「なんか飲む?」
 
「いらない…」
 
「なんか買ってこようか?」
 
「何もいらない…」
 
涙が溢れた。目尻から沢山の熱い涙がこぼれていく。彼も布団に入り私を抱きしめてくれた。

彼の腕の中で嗚咽。こんなにもダメージが強いなんて…想像以上だった。そして彼の温もりも想像以上に暖かかった。

何も言わず、ただ側にいてくれて抱きしめてくれる。彼の気持ちが重いと思ってたのに、今は嬉しい。
 
「もう…大丈夫」
 
「もう少し…このまま」
 
鼻をすする音…顔を上げると…
 
「どうして?
早崎くんが泣いてるの?」
 
「ん?辛いだろうなぁと思って…」
 
「泣かないで…」
 
頬に手を当て…彼の涙を拭い…唇を重ねた。
 
つづく
 

 
 

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