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甘い果実ep.9

 
 
ん…ちゅ…ん……ん…ちゅっ
 
「ごめん…」

衝動的になってしまった。
 
「あ…うん…わかってる…これ以上はしないよ」

彼は悟ったようで軽く答えてくれた。
 
「うん…。ありがと」

彼が来てくれたことに安心したのか?はたまた彼からの返事に安心したのか?急にお腹が空いた。

「なんか…お腹空いてきたな。何か食べる?」
 
「なんか買って来ようか?」
 
「ううん。家にある物で良かったら作るよ」
 
「今日は寝てた方が良いんじゃねーの?」
 
「大丈夫…普通の生活がしたい。ソース混ぜるだけのパスタで良い?」
 
「うん。俺もそれなら作れる笑」
 
「今、バカにしたでしょ?笑」
 
「してないよ笑」
 
会話が嬉しい。笑顔が眩しい。2人でキッチンに立ちパスタを茹で、ソースを混ぜて小さなテーブルに向かい合って座り、即席たらこパスタを食べた。私は途中気持ち悪くなりトイレへ。
 
「大丈夫?はい水」

彼のあったかい手が背中を優しくさすってくれる。
 
「ありがと…。もうお腹には居ないのに身体は直ぐには変われないのかな?」
 
「明日も休みだし、ゆっくり寝てなよ」
 
「うん…」
 
早崎くんが後片づけをしてくれたので、私はソファで横になってテレビに流れる映像を眺めていた。
 
「終わったよ」
 
「ありがと」
 
ラグの上に座りソファにもたれかかってテレビを観ている彼の頭を撫でて、首に腕を絡ませ甘い香りのする首筋にキスをした。彼は何も言わずに自分に絡んだ私の腕にキスをし、顔をこちらへ向けて唇を重ねた。
 
「今日、泊まって良い?」
 
「…うん。何も出来ないよ?」
 
「わかってる。一人にさせたくないだけだから」
 
「ありがと…」
 
自分から好きになって追いかける恋が一番楽しいと思っていた私に…18歳の彼が愛される喜びを教えてくれた。彼の真っ直ぐな想いが重いと思っていたのに…こんなにも心地良いなんて…。
 
ブーンブーンブーン

画面には先生の名前が…
 
「出ないの?」
 
「うん…出たくない」
 
「別れたら?」
 
「うん…」
 
「そんで俺と付き合えば?」
 
「ふふっ笑」
 
「なんだよ?笑」
 
「めげないなと思って…笑」
 
「めげないよ笑。俺はスーパーポジティブなんだよ笑」
 
「ふふっ笑」
 
2人でベッドに入り、何度もキスを交わし彼の腕の中で意識を手放した。暖かくて心地よくて甘い果実に触れてしまった私は…その味がどんな味なのか知りたくなった。ただ見てるだけにしておけば良かったのに…
 
つづく

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