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不安も全部取っ払って!いいも悪いも頬張る少女【イワシとわたし 物語vol.8】

最近、何をやってもうまくいかない。
落ち込む彼女は、友達にもらった阿久根土産のビスケットを手に海に来た。
ため息を吐く中、彼女は海とビスケットの間を繋ぐあるウニの話に出会う。

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最近、何をやってもうまくいかない。

うっかり間違ってしまったもの、自分の納得のいく形にできなかったもの。

うまくいかないと思ったものは大きさも形もバラバラだけれど、
彼女にとっては考え込んでしまう種になることには変わりない。

自分が嫌になってしまいそうだ。

彼女は海に向かってため息を吐いた。

波に打たれる岩々には海藻の姿はない。
ウニが食っちまうんだとしかめっ面でこの海の常連さんが教えてくれた。

君も困ったさんだなあ。

彼女はどこかに隠れているであろうウニに投げかけた。

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彼女は小腹が空いたときにと持ってきた箱に視線を落とす。

――ウミカルビスケット。

阿久根のお土産にと友達がくれた。
「なんか似てる気がするから」と変な言葉も添えて渡された。

いったい何が似ているのか。

パッケージには〈ウニから生まれたカルシウム配合〉と書かれていた。

ウニ。
君も、ウニなのか。

困ったさんだったり、嬉しい栄養素になったり、憎めないやつめ。

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楽しいときには目がなくなるくらい笑って、
悲しいときは思いっきりわんわん泣いて。
どんなときでも素直で正直。
それってあんたのいいところでしょう?

友達に言われたことを思い出した。

自分のことを嫌だなって思うときももちろんあるけれど、
いいなって思うときもある。

それでいいのだろうか。

彼女は腰を下ろして海を眺める。
パッケージを破って、口の中にひょいとビスケットを放り込んだ。

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こいつと一緒だ。

不安になることもあるけど、そんなの全部取っ払ってしまえ。

うまくいかないときもあるけど、いいときだってちゃんとある。

それでいいのかもしれない。

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――私って結構いいんじゃない?

彼女は自分に言い聞かせる。
少し小恥ずかしくなって、海に向かって口許を緩めた。
でも、それでいい。

彼女はビスケットをもう一つ頬張った。


model:早水 奈緒

撮影:こじょうかえで Instagram(@maple_014_official)

衣装:LIZE Instagram(@0811lize)

撮影地:大川島海水浴場

文章:橋口毬花 (下園薩男商店)


イワシとわたしの物語

鹿児島の海沿いにある漁師町、阿久根。
そんな場所でイワシビルというお店を開いている下園薩男商店。
 「イワシとわたし」では、このお店に関わる人と、
そこでうまれてくる商品をかわいく、おかしく紹介します。

時として出会いを引き寄せるもの、ハンカチ。
彼が今日手にしていたのは、【阿久根】柄のハンカチ。
――いったい何が【阿久根】なのか。
それは彼もまだ知らない。
風に攫われたハンカチを拾ってくれた女の子。
「阿久根がいっぱいですね」
彼女は彼にそう言って差し出した――。

8月半ばの暑さを感じる公園で、彼女はあの人のことを思い出す。
涼を求めて入ったイワシビルで、今日というこの日に当てられたのかどうなのか、商品棚を見渡して一つの便箋に手を伸ばした。
折角なのだからとペンの先を滑らせて、彼女はある五文字を綴る――。

and more...

モデルインタビュー/オフショット

ウミカルビスケットの秘密

イワシとわたしの聴く物語


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作中登場商品


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