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ハンカチに引き寄せられた男【イワシとわたし 物語vol.7】

時として出会いを引き寄せるもの、ハンカチ。
彼が今日手にしていたのは、【阿久根】柄のハンカチ。
――いったい何が【阿久根】なのか。
それは彼もまだ知らない。
風に攫われたハンカチを拾ってくれた女の子。
「阿久根がいっぱいですね」
彼女は彼にそう言って差し出した――。

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何かの拍子に落ちるハンカチ。
気づかずに歩いていると、背後から「落としましたよ!」の声。
振り向いた先には、運命的な出会い――。

B級映画に出てくるであろうシチュエーション。
そしてどれだけの人がこのシチュエーションを実際に体験したかは定かではないが、なぜか「ベタだ」と言われる。

そして、そういうベタな出会いを誘う重要な役割を果たすのが、ハンカチだ。

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ロマンを運ぶこの正方形は、出会わせるばかりか機能的でファッション性にも優れているときた。

ズボンのポケットにもすっきり収まるし、コーディネートのワンポイントにもなる。
その日の気分でデザインを選ぶのも悪くない。

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今日は何柄とも呼べないハンカチ。
購入した店――イワシビルのオリジナルのハンカチで、柄名は【阿久根】と記されていたのを彼は思い出す。
こんな柄のハンカチ早々出会わないと思って手に取ったんだったか。

柄名【阿久根】。
いったい何が阿久根なのか。

空に掲げ、柄一つ一つを凝視する。
魚、野菜、果物、鹿……たい焼きまでいる。

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遮るものが何もないこの場所は風の戯れを直に受ける。
遊んでやるよと言わんばかりに彼が手に持っていたハンカチを港の風が攫った。
慌てて取り戻そうとするが届かない。

ハンカチは風に舞ってアスファルトの上に落ちた。
彼は胸を撫でおろす。

「これ、お兄さんのですか?」

先にハンカチを拾った女の子が彼にハンカチを差し出した。

「阿久根がいっぱいですね」

彼女の言葉に彼は首を傾げた。

キラキラ輝く瞳が特徴的な女の子はそのハンカチに描かれた一つ一つが阿久根の特産品であることを教えてくれた。

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解明できていなかった謎が紐解かれ、ストンと彼の胸に落ちる。
手元の正方形が宝探しの地図に見えた。

ハンカチが道しるべとなって彼をこの町へと繋いでいく。
ここにもそこにもあそこにも。

出会いを運ぶ正方形。
こういう出会いも悪くない。


model:脇中 悠貴 Instagram(@waki_pedia)

撮影:こじょうかえで Instagram(@maple_014_official)

撮影地:サンセットロード@阿久根新港

文章:橋口毬花 (下園薩男商店)


イワシとわたしの物語

彼女が伝えたかった5文字
8月半ばの暑さを感じる公園で、彼女はあの人のことを思い出す。
涼を求めて入ったイワシビルで、今日というこの日に当てられたのかどうなのか、商品棚を見渡して一つの便箋に手を伸ばした。
折角なのだからとペンの先を滑らせて、彼女はある五文字を綴る――。

青年が気づき始めた"普通"の裏側
普通。想像した大人と自分自身の普通さに違和感を覚える青年は、一種の焦燥感を拭えずにいた。頭にへばりつく感情を抱く中、彼は夏の風物詩を前に"普通"の裏側に気づき始める。

and more...

写真集

イワシビルオリジナルハンカチの秘密

イワシとわたしの聴く物語


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