季節を味わう、七十二候のしらべ。「蟄虫戸を坯す(すごもりのむしとをとざす)」
note投稿45回目である。
少し郊外に行ってみると、彼岸花の朱色が一面に広がって満開を迎えていた。
彼岸花を見ると、そのあまりに鮮烈な赤と大胆に反り返った花弁、突き出した雄しべ雌しべの独特のフォルムに心がザワザワとする。
しかし、何かすごく神聖でどこか近寄り難い雰囲気を持つ姿に毎回惹かれ、彼岸花を見るのは秋の大きな楽しみの一つだ。
今回は七十二候紹介、第8回目である。
「蟄虫戸を坯す(すごもりのむしとをとざす)」
新暦では9月28日〜10月2日 二十四節気「秋分」の次候
虫が隠れて戸をふさぐ頃。
「蟄」は、隠れる・冬ごもりをする、「坏」は、閉ざす・ふさぐ・埋める。
春から夏にかけて活動していた虫たちが、寒さを察知し冬眠のために穴を掘り、冬の準備を始める時期。
冬を越すと言うのは、私たちが想像する以上に虫たちには過酷なこと。
成虫のまま越冬できる虫は限られていて、卵や幼虫を残して死んでしまう虫も多いんだとか。
越冬できる成虫で個人的に個性的だなと思うのがテントウ虫だ。
テントウ虫の寿命は約2ヶ月から3ヶ月と短く、3週間ほどで成虫になり、その後1ヶ月ぐらいを産卵に当てると言われている。
そのため何世代にも渡り命のバトンが引き継がれていくので、冬にでも成虫が見られる貴重な虫だ。
テントウ虫の中でもよく見かけて馴染みの深い、ナナホシテントウやナミテントウの越冬の仕方は独特で、
草むらや石の下、はたまた家屋の隙間に集まって、数十匹から数百匹がおしくらまんじゅうをしながら体を寄せ合って集団で越冬する。
これは彼らの餌であるアブラムシが冬にいなくなるため、少しでも体力を温存するためにじっとしているんだとか。
特に家族でもないのに、てんとう虫同士が寄り添いあってじーっとしている姿はなんだか愛おしい。
また冬の越し方は同じ種族でも異なることがあって、例えばハチの例で見ると、
ミツバチはテントウ虫と同様冬眠はせず、円形に身を寄せ合い、
体力温存のためにじっとしつつも、羽を震わせてお互いを温め合っているのだそう。
一方スズメバチやアシナガバチなんかは、全員で越冬することはできず、女王蜂だけが生き残り、
彼女たちは近くの木々や地面に隠れて、孤独に冬を越す。
虫たちの冬の越し方はそれぞれだが、盛んだった虫たちの合唱も徐々に収まってきて、彼らが冬の準備を始めることを肌身に感じる時期だからこそ、虫のことが読まれているのだろう。
人間も10月に入ったら衣替えの時期で、心身ともに一気に秋の深まりを感じる。
虫の合唱が聞けるのもあと少し、彼らの精一杯の泣き声を心に刻みたい。
補足事項
・季節の言葉 中秋の名月
・季節の野菜 里芋 (旬は8月~10月)
・季節の魚介 さんま (旬は夏~秋)
・季節の草花 紫苑
・季節の行事 京都の北の天満宮 ずいき祭り(10月1~5日)
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